[1]ウズベキスタン

1.ウズベキスタンの概要と開発課題

(1) 概要
 1991年12月、ソ連の解体とともに独立国家となった。初代大統領に選出されたカリモフ大統領は2000年1月に再選を果たし、その後、2002年1月の国民投票による憲法改正で大統領任期が7年間に延長された。同大統領は「漸進主義」(市場経済への段階的移行)による改革を行い、政治的安定を重視する路線を採っており、2004年12月に二院制移行選挙を実施した。同会議では伝統的に「人民民主党」と改称した旧共産党が勢力を占め、大統領を支持しているが、二院制移行後は、親大統領派の新党「自由民主党」が第一党となった。イスラム急進派の活動は禁止されており、キルギス、タジキスタンとの国境付近におけるイスラム武装勢力の動きを警戒している。
 外交面・貿易面ではロシア依存からの脱却を志向したものの、依然として政治・経済関係は強い。一方、欧米や我が国との関係も重視し、特に、アフガニスタンの周辺国である同国は、米国における同時多発テロ事件後、国内空軍基地に米軍駐留を認めている。また、イスラム諸国とも連携強化を図っている。欧州安保協力機構(OSCE:Organization for Security and Co-operation in Europe)をはじめ、国連、国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)、世界銀行、アジア開発銀行(ADB:Asian Development Bank)、欧州復興開発銀行(EBRD:European Bank for Reconstruction and Development)に加盟、国際機関や先進諸国による経済支援に期待しているが、企業の民営化、金融市場や、農業の近代化は立ち遅れている。
 ウズベキスタンは天然資源が豊富であり、綿花生産量が年間約3.5~3.7百万トンと世界第5位、金の生産も世界有数である。また、天然ガスが豊富であり、石油、石炭、非鉄金属産業も発達している。「漸進主義」による改革による混乱の少なさもあって、独立国家共同体(CIS:Commonwealth of Independent States)諸国の中ではソ連崩壊の影響による生産低下が最も少なく、1996年に国民総生産(GNP:Gross National Product)成長がプラスに転じた。
 ウズベキスタンは1994年6月に独自通貨「スム」を導入、1996年の国際収支悪化に伴い、外貨制限、外貨割当や輸入制限の強化等の措置をとったため、為替市場に混乱をもたらし、外国からの投資の大幅な減少を招いた。その後、IMFとの交渉を通じて為替レートの一本化に向けた取り組みを行い、2003年10月にIMF8条国に移行し、外貨規制の撤廃を実現した。
 産業政策に関しては、エネルギーの自給自足、現地生産化プログラムの推進による国内産業の育成に努める一方で、消費財の輸入に関しては関税面等で厳しい制限を実施している。
 二国間の貿易関係は十分に活発とは言えないが、我が国からの主要輸出品目はゴム、タイヤ、機械、機器、主要輸入品目は金、繊維製品、繊維原料等となっている。
(2) 開発課題
 ウズベキスタン政府は現在、いわゆる包括的な国家開発計画は策定しておらず、開発重点分野の明確な優先順位付けはなされていないが、以下の様な分野、課題別のイニシアティブが存在する。
(イ) 農業改革
 旧ソ連型の大規模集団農場から民営農場への転換を促進し、農地の一部を個人栽培地に指定している。
(ロ) 経済構造改革
 国家による経済管理を緩和し、省庁の数及び公務員の人数を削減するなど、様々な分野で民営化が進められている。
 -金融・銀行システム
 -為替制度(2003年10月に外貨規制を撤廃し、IMF8条国入りを実現)
 -貿易管理部門(商工会議所の設立、世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)加盟に向けて国内法の整備、人材の育成に注力。)
 -中小企業振興(ビジネスファンドによる低利融資の実施、外貨強制交換制度の適用免除、輸入品物品税の適用拡大・引き上げ等)
 -中期経済開発計画策定(検討中)
(ハ) 保健医療改革(1998年に保健改革国家プログラムを策定、各地に緊急病院を設立するなどハード面での整備促進)
(ニ) 教育改革(国家人材育成プログラムを策定し、職業高校の整備拡充を推進、各種研修機関の設置、小中学校教育環境の改善を開始(大統領令「学校教育改革2004-2009」))
(ホ) IT振興(通信インフラを整備中。パソコンの輸入関税優遇。)
(ヘ) 司法改革(各種法律について見直しを目的として整備委員会を組織)
(ト) 環境への配慮(国家環境行動計画、持続的開発のための国家戦略を策定済み)

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係

表-3 主要開発指数

2.ウズベキスタンに対するODAの考え方

(1) ウズベキスタンに対するODAの意義
 ウズベキスタンは、地域最大の人口(約2,600万人)を擁し、旧ソ連時代よりあらゆる分野において中央アジア地域における中心的役割を果たしてきた地域の要の国であり、ロシア、中国に近接し、また、アフガニスタンなど紛争地域に隣接するなど、地域の安定にとってウズベキスタンの政治経済の安定は重要である。
 加えて、2004年8月に川口外務大臣(当時)の中央アジア諸国訪問の際に「中央アジア+日本」対話が立ち上げられたが(於カザフスタン)、今後同対話を通じ、同国を含めた中央アジア諸国の地域内協力の促進が期待されている。
(2) ウズベキスタンに対するODAの基本方針
 旧ソ連時代の経済インフラ(電力網、ガス・パイプライン、灌漑施設、鉄道等)は中央アジア諸国にまたがって建設されており、エネルギー、水等の資源及び既存インフラを有効活用するためには中央アジア各国間の協力が不可欠であるが、ソ連解体後、中央アジア諸国は自国の国造りを重視する傾向にあり、地域内協力への関心の高まりは見られるものの、具体的行動に向けた歩みは遅い。
 こういった事情を踏まえ、我が国はウズベキスタン固有の援助ニーズに応じた支援を継続するとともに、中央アジア地域の地域内協力の進展に資するとの観点も加味しつつ、経済協力を実施していく考えであり、今後現地ODAタスクフォースも交え、国別援助計画を策定予定である。
(3) 重点分野
 2004年7月に行われた現地ODAタスクフォースの政策協議により、以下を重点分野としている。
(イ) 経済・産業振興のための人材育成及び制度構築への支援(金融・銀行システム改善、貿易、中小企業振興、司法(民商法)改革)。
(ロ) 地方振興(農業・農村開発、教育、保健医療)
(ハ) 経済インフラの更新・整備(運輸、エネルギー)

3.ウズベキスタンに対する2003年度ODA実績

(1) 総論
 2003年度のウズベキスタンに対する無償資金協力は15.52億円(交換公文ベース)、技術協力は12.28億円(JICA経費実績ベース)であった。2003年度までの援助実績は、円借款811.93億円、無償資金協力151.38億円(以上、交換公文ベース)、技術協力65.24億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 円借款
 1995年度には通信分野に初の円借款を供与し、続いて鉄道、空港案件等に対し供与した1999年度に継続的な性格の案件2件を供与し、また2000年度には「職業高等学校拡充計画」、2002年度には「タシケント火力発電所近代化計画」へ円借款の供与を行った。
(3) 無償資金協力
 1994年度から開始し、医療分野、食糧増産援助を中心に毎年供与を行っている。一般無償プロジェクトをはじめ、ノンプロジェクト無償資金協力及び食糧増産援助、文化無償等も実施しており、また1999年度より開始した留学生支援無償を実施している。
 2003年度は「中等教育機材整備計画」を実施した他、食糧増産援助、人材育成奨学計画を行った。
(4) 技術協力
 JICA事務所が1999年3月に開設され、青年海外協力隊派遣も1999年より開始された。1997~2000年、同国の「市場経済化促進のための人材育成」への協力として、国家社会建設アカデミーに対する協力(「重要政策中枢支援」)を実施した。2000年には「日本・ウズベキスタン人材協力センター(日本センター)プロジェクト」を開始し、ビジネスコース等を実施中。開発調査は、環境案件であるアラル海沿岸の給水計画調査を行ったのをはじめ、資源開発、運輸分野等を対象に実施してきている。

表-4 我が国の年度別・援助形態別実績

表-5 我が国の対ウズベキスタン経済協力実績

表-6 諸外国の対ウズベキスタン経済協力実績

表-7 国際機関の対ウズベキスタン経済協力実績

表-8 我が国の年度別・形態別実績詳細

表-9 2003年度までに実施済及び実施中の技術協力プロジェクト案件

表-10 2003年度実施済及び実施中の開発調査案件

表-11 2003年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件


プロジェクト所在図


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