[17]ルーマニア
1.概 説
89年12月のチャウシェスク独裁政権崩壊後、完全なる民主化、市場経済導入を推進している。大統領選挙・議会選挙も着実に実施され、政治面での民主化は定着している。
89年12月以降、内閣は左派政権(旧共産党系:89年12月~96年11月)から中道右派政権(連立:96年12月~2000年11月)に交代していたが、2000年11月に行われた大統領・議会選挙では、イリエスク大統領及び旧共産党系の社会民主主義党が返り咲いた。同結果を受けて、2000年12月よりナスターセ首相率いる新政府が発足した。新政権は、議会内では過半数に満たない少数政権ながら、ハンガリー人民主同盟からの閣外協力をとりつけ、これまでのところ安定した政権運営を行っている。
経済面では、90年以降市場経済導入を推進しているものの、諸困難に直面している。90~96年までの旧共産党政権は経済改革を先送りしたため、貿易赤字及び財政赤字の拡大等を招いた。96年~2000年までの中道右派政権は、マイナス成長を続け、93年以降は、農業生産の回復に加え、工業部門でも民間企業の設立により生産が増大し、経済は回復傾向を示したが、民営化の遅れた非効率な国営企業による生産が継続したことから、生産が輸出に結びつかず、貿易赤字が拡大し、これら国営企業の赤字補填のために財政赤字が拡大した。
96年~2000年までの中道右派政権は、IMF等との合意に基き、97年2月より価格自由化、為替の大幅規制緩和、企業民営化の加速化等の改革プログラムを実施し、一応マクロ経済の安定を見たが、経済は縮小し、97~99年と3年連続でマイナス成長となった(2000年は1.6%のプラス成長)。
2000年12月に成立した新政権は、透明で首尾一貫した経済改革の促進と社会保障の重視を政府政策として公約。IMFとの新たなスタンドバイ協定に向け交渉を再開した。また、2001年6月には直接投資法を採択するなど、外国投資の誘致にも積極的な姿勢を見せている。他方、新政権は、中小企業支援や農業への補助金供与、年金引き上げ等を決定しており、国費ばらまき政策も見られる。
外交面では、欧州への統合が引き続き最大の目標であり、特にNATO及びEU加盟を重視している。EU加盟については、99年12月のヘルシンキ欧州理事会における決定を受けて、2000年2月よりEU加盟交渉が正式に開始されている。また、NATO加盟については、2002年11月のプラハにおけるNATO首脳会議での加盟招請された。なお、2001年は1年間OSCE議長国を務めている。
我が国との関係では、97年7月、コンスタンティネスク大統領、98年11月にバセスク運輸相、99年1月にベルチェアーヌ産業通商相、2000年7月にロシュカ公共機能相、2001年11月にヴァカロイウ上院議長が訪日し、特に交流100周年の2002年には1月にジョアーナ外相、2月にイリエスク大統領が訪日を果たした。我が国からは、97年6月に高村外務政務次官、99年9月に菅野参議院副議長、2000年9月に浅野外務政務次官がルーマニアを訪問した。
(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標
2.我が国の政府開発援助の実績とあり方
(1) ルーマニアに対する政府開発援助の基本的考え方
91年1月にG24会合において支援対象国に加えられたこと等を踏まえ、G24の枠組の中で援助国、国際機関と協調しつつ、ルーマニアが民主化及び市場経済への移行支援を行っている。97年10月には経済協力政策協議を実施し、今後の協力の方向性について意見交換を行った。近年では、市場経済の導入、環境対策、経済インフラ整備等を重点分野としている。
無償資金協力では、89年度に赤十字国際委員会を通じた内戦被災民のための緊急無償援助、90年度にWFPを通じた食糧支援、91年8月及び98年7月には洪水災害に対する緊急無償援助を実施している。98年度には、ブカレスト市内2病院の医療機材整備計画に対し初の一般無償資金協力を行った。また、2000年1月、コソヴォ危機の影響で経済困難に直面する中で経済構造改革努力を続けているルーマニアに対し、5億円のノンプロジェクト無償資金協力を実施した。91年度からは文化無償協力を行っている。
技術協力では、91年度より研修員受入れ、専門家派遣、開発調査等の技術協力を本格的に開始し、経営管理、生産管理、マクロ経済等の分野を中心に研修員を受け入れ、環境、生産性向上等の分野での専門家派遣、2002年度より地震災害軽減計画として技術協力プロジェクト等を行っている。開発調査については、環境、運輸等の分野で調査を実施している。97年度より青年海外協力隊の派遣を開始した。有償資金協力については、97年7月、同国最大の貿易港である「コンスタンツァ南港整備計画」及び「道路整備計画」の2件に対し初の円借款を供与した他、2001年には「ブカレスト・コンスタンツァ間鉄道近代化計画」にも供与している。
(2) 2001年度の援助実績
(イ) 総論
2001年度のルーマニアに対する援助実績は7.60億円。うち、無償資金協力は0.60億円(交換公文ベース)、技術協力は7.00億円(JICA経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、有償資金協力は476.24億円、無償資金協力は23.43億円(以上、交換公文ベース)、技術協力59.81億円(JICA経費実績ベース)である。
(ロ) 有償資金協力
2001年3月、ブカレスト・コンスタンツァの2都市間の鉄道近代化のための「ブカレスト・コンスタンツァ間鉄道近代化計画」に対し、256.35億円の円借款供与についてE/N署名を行っている。本円借款対象区間は全体の約1/3(225km)で、軌道の改修、信号の電子連動化、鉄道保守整備機器の購入等を行い、残りについてはEUのISPA(EU加盟候補国無償支援)プログラムによって賄われている。
(ハ) 無償資金協力
2001年には草の根無償資金協力を情報関係、民生環境(市民の大気汚染問題意識向上計画)2件実施している。
(ニ) 技術協力
2007年のEU加盟を目指すルーマニア対しては、EU加盟基準達成に沿う形での支援を重視しており、市場経済化支援、環境保全等を重点分野としている。2001年には産業政策、生産管理、産業環境対策、環境行政、経営管理、生産システム改善技術等の分野について38名の研修員を受け入れたほか、生産性向上や環境保全のための専門家を8名派遣している。また、国内には工業地帯、鉱山地帯などの産業廃棄物管理・処理を徹底する必要のある地域があるにも関わらず、有害廃棄物に関する処理マスタープランは存在せず、また、EUへの加盟に向けて、EUの有害廃棄物管理制度に調和した有害廃棄物管理システムの構築が必要なため、開発調査として、「全国有害廃棄物管理計画」を実施している。更に、ルーマニア最大のコンスタンツァ港は、同国のみならず黒海沿岸国にとっても重要な貿易拠点であるが、コンテナ機能が限定されているため、コンテナ機能の拡充計画及び在来貨物を扱う旧港地区の再開発等を含めた、総合的な開発計画のため「コンスタンツァ港開発計画調査」を実施した。
3.政府開発援助実績
(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)2001年度実施開発調査案件
(参考3)2001年度実施草の根無償資金協力案件
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