[5]東ティモール

1.概   説

 東ティモールは、長年に亘る外国による支配・統治を経て、2002年5月20日に独立を達成した。99年のインドネシアによる拡大自治提案の受入可否を問う直接投票後に発生した騒乱により、大部分のインフラが破壊され、25万人以上の難民が発生するなど、様々かつ大きな課題を抱えていたが、国連東ティモール暫定行政機構(UNTAET)の下、独立に向けた国造りを進めた2001年8月30日の憲法制定議会選挙にはじまり、2002年3月に憲法が採択された他、4月14日には大統領選挙が実施され、グスマン前東ティモール民族抵抗評議会(CNRT)議長が選出された。そして、5月20日、東ティモールは、UNTAETから、立法・司法・行政に係る全ての権限を引き渡され独立した。独立式典にはアナン国連事務総長、メガワティ・インドネシア大統領等が出席し、我が国からは杉浦外務副大臣が出席した。独立は、国連を中心とし、我が国を始めとする国際社会の支援・関与が効果を発揮した一大成果といえる。
 独立後の東ティモールは、経済の自立、西ティモールにいる東ティモール人の帰還、国民和解などの多くの問題を抱えており、国連PKO(東ティモール支援ミッション(UNMISET))が同国に展開し、治安の維持と国造りを支援している。また、国民和解に向けて真実和解委員会が活動している。
 我が国との要人往来も活発に行われ、2002年4月には、小泉総理が独立直前の東ティモールを訪問し、大統領就任直前のグスマン氏、アルカティリ首席閣僚と会談を行い、祝意を伝えたほか、共同プレスステートメントを発出し、未来志向の関係を構築すべく互いに協力していく決意を確認した。また、8月にはグスマン大統領が訪日した他、12月には矢野外務副大臣が東ティモールを訪問した。

2.我が国の政府開発援助の実績とあり方
(1) 東ティモールに対する政府開発援助の基本的考え方
 我が国は、東ティモールの安定と発展はアジア太平洋地域の安定と平和のために極めて重要であるとの認識の下、これまで同国における平和の定着・国造りへの取り組みに対して積極的に協力し、同国の自立に向けた国造りのため国際社会とともに可能な限りの支援を実施してきている。
 我が国の東ティモールに対する支援は、99年8月の直接投票に対する人的、資金的協力に始まり、その後の騒乱からの治安回復及び避難民支援、緊急的な復旧支援、・復興開発支援等様々な面で協力を行ってきた。
 99年12月には、東京で30カ国及び20以上の国際機関の参加を得て、世銀とともに「第1回東ティモール支援国会合」を開催し、そこで我が国は以後3年間で1億3千万ドルを目途とする人道・復興開発支援を行うことを表明し、東ティモールの独立までにこれを上回る支援を実施した。
 我が国は、東ティモールに対して、特に、人材育成、インフラ復旧、農業、の3分野を重点分野として復興開発支援を実施するとともに、平和構築への支援として、東ティモールにおける和解努力や元兵士の社会復帰への取り組みに対して支援を実施してきている。
(イ) 人材育成・制度造り
 中長期的な観点から東ティモールに必要な人材育成を行うことを念頭におきつつも、短期的にも効果が上げられる分野への支援を集中させる。
(ロ) インフラ復旧・維持管理
 道路、水道、灌漑、電力、港湾の復旧等基礎的な経済・社会インフラ整備に対する支援を実施している。但し、東ティモール自身が運営、維持・管理可能な案件の実施と、それに対応した人材育成及び技術移転に留意している。
(ハ) 農業・農村開発
 食糧自給率の引き上げとともに、持続的な経済成長のため、基幹産業である農業振興についてNGOとの連携も視野に入れながら支援を行ってきている。
(2) 2001年度の援助実績
 2001年度の東ティモールに対する援助実績は29億円。内、無償資金協力は約23億円、技術協力は約6億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)であった。
 最近の支援実績としては、2000年度の国連開発計画(UNDP)及び国連児童基金(UNICEF)の行う復興プロジェクト(道路、水道、港湾、電力、灌漑及び小学校修復)に対する緊急無償資金協力(総額2,871万ドル)、及び草の根無償資金協力(6件、計約54万ドル)を実施したのに続き、2001年度もUNDPの行う復興プロジェクト(水道、港湾、灌漑)に対し緊急無償資金協力(総額1,389.4万ドル)、草の根無償資金協力(11件、計約92.3万ドル)を実施した。
 また、東ティモールの最重要課題である人材育成に対しては、2002年度の東ティモール大学工学部設立計画として、工学部建物修繕を行うUNDPのプロジェクトに対し467万ドルの緊急無償資金協力を実施したほか、同学部の教師の育成のために専門家の派遣や研修員の受入を行っている。さらに、我が国は周辺国と協力して、警察、法曹、水産分野の第三国研修や奨学金プログラムなどを実施してきている。今後は外交官・行政官の育成についても協力を行っていく予定である。
 このほか、2001年8月の憲法制定議会選挙の円滑な実施のため、UNDPを通じて緊急無償資金協力(119.1万ドル)を実施し、選挙広報用の教材作成支援のための専門家を派遣した。また、東ティモールにおける和解努力を支援するために、「真実和解委員会」に対して53万ドルの緊急無償資金協力などを実施した。
 2002年5月、独立を前にしてディリで開催された「第6回東ティモール支援国会合」においては、我が国は独立後3年間で約6,000万ドルを上限とする人道支援及び復興開発支援を行うことを表明しており、国際社会と協力しながら、東ティモールの自立に向けた国造りの努力を引き続き積極的に支援していく。

3.政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度実施開発調査案件
(参考2)2001年度実施草の根無償資金協力案件

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