[4]中  国

1.概   説

(1) 中国は、世界一の人口、アジア第一の国土面積を擁し、56の民族(うち漢民族は総人口の92%)を有する多民族国家である。
(2) 中国は、78年の中国共産党第11期中央委員会第3回全体会議(11期三中全会)以降、近代国家建設を最優先課題として位置付け、改革・開放政策を進めている。92年1~2月のとう小平氏の南方視察における重要講話を契機として改革・開放政策が加速化された。同年10月の第14回党大会では、「社会主義市場経済」という新たな概念が提起され、93年3月の全国人民代表大会ではこれが憲法に盛り込まれるなど、中国経済の「市場経済化」の方向が確定した。97年に発生したアジア通貨危機の中国経済への直接的な影響は限られたものであり、98年及び99年にはデフレ傾向が顕在化したものの、その後、積極的な財政支出、投資・消費の回復、輸出の拡大、内需振興等により高い成長率を維持し、2002年は8%の成長率を記録、93年から2002年までの10年間の平均成長率は9.3%となっている。また、2001年12月にWTO加盟を実現したことを契機に、対外経済も順調に推移し、2002年は、輸出入総額が6,207億ドル(前年比21.8%)と大幅に増加し、対内直接投資も米国を抜いて実質的に世界第一位の投資受け入れ国となった。
 一方、国民一人当たりのGNIは840ドル(2000年)(2002年世界銀行統計より)とまだ低いレベルにあり、農村部を中心とした貧困層、貧困地域への対策や、都市と農村、沿岸部と中西部、都市内部の経済格差の拡大、産業構造(特に、農業、国有企業、金融の各分野)の転換、失業者の増加、環境保全と経済成長の両立等、中国は依然として多くの課題も抱えている。
 現在の中国は、経済建設を最優先課題として取り組んでおり、着実な政策運営が行われている。第16回党大会においては、胡錦濤氏が江沢民氏に替わり党総書記に選出されるとともに、新たに9名の政治局常務委員が選出され、共産党の新体制が発足した。同大会では、経済建設と安定・団結を最重点・最優先とした国家運営を引き続き推進するとの同党の基本方針に変更がないことを明らかにした他、2020年のGDPを2000年の4倍増とするとの新たな目標が提示された。また、私営企業主等が中国共産党へ入党する道も正式に開かれ、同企業主等が中国経済の牽引役としての地位を向上させつつある。
(3) 日中両国は歴史的にも文化的にも関わりの深い隣国であり、72年の国交正常化以来、両国関係は着実に発展してきた。中国は、順調な経済発展などを背景に、国際的な影響力を拡大しており、今後とも、政治、経済、安全保障、文化など様々な分野において、一層重要な役割を担っていくものと思われる。こうした中国との間で安定した友好協力関係を築いていくことは、我が国の安全と繁栄の確保にとって極めて重要である。国際社会の中で大きな影響力を有している日中両国は単に二国間の利益を図るのみならず、アジア太平洋地域、ひいては国際社会の平和・安定と繁栄を実現するため、互いに協力していくことが求められている。こうした点を踏まえ、我が国は、日中関係を最も重要な二国間関係の一つとして重視しており、様々な分野における協力を一層推進していくこととしている。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

 2002年は、国交正常化30周年にあたり、「日本年」「中国年」を記念する一連の行事や交流活動をはじめ、幅広い分野の交流が活発に行われた。両国ハイレベルの交流については、様々な国際会議の機会をとらえて、首脳・外相会談が行われ、同年4月に、小泉総理は、ボアオ・アジア・フォーラム(於中国海南省)に際し、朱鎔基総理と日中首相会談を行い、日中国交正常化30周年を契機として、各分野における協力関係の強化を確認した。また、同年9月のASEM首脳会議(於デンマーク)及び同10月のAPEC首脳会合(於メキシコ)の際に、小泉総理は、それぞれ朱鎔基総理(当時)、江沢民主席(当時)と会談し、中国側より、小泉総理の北朝鮮訪問につき支持と歓迎の意が表明された。川口大臣は、同9月に訪中し、唐家外交部長のほか、江沢民国家主席(当時)、銭其副総理(当時)等と有意義な会談を行った。こうした会談等を通じ、両国間に存在する個々の問題につき、解決の糸口が見いだされてきたほか、両国間の問題に加え、地域・国際情勢の問題について積極的な意見交換が行われた。
 また、2002年は、「日本年」、「中国年」を記念し、中国から5,000人の訪日、我が国から1万3,000人の訪中が実現した他、日中合作オペラの公演、我が国の著名ミュージシャンによるコンサート等、300件こえる数多くの交流事業・記念事業が行われた。
 2002年の日中経済関係は、中国の順調な経済発展及び2001年12月の中国のWTO加盟等を背景に大きな進展が見られた。2002年の貿易総額は、好調な対中輸出の増加を背景に、対前年比15%増加し、1,016億米ドルを記録した。中国は米国を抜き、最大の対日輸出国となり(輸出入総計では第2位の貿易相手国)、我が国は引き続き中国にとって第1位の貿易相手国である。対中投資は、中国のWTO加盟前後より我が国企業の本格的な対中投資が相次ぎ、2002年度は、2,152億円(前年度比19.1%増)を記録した。
 こうした中国の経済発展について、小泉総理は、2002年4月のボアオ・アジアフォーラムにおいて講演し、中国の経済発展は我が国にとって「脅威」ではなく、「挑戦」、「好機」であり、日中経済関係は、「対立」ではなく、「相互補完関係」にあるとの考えを表明した。一方、中国の急速な経済発展及び日中経済関係の緊密化に伴い、一部摩擦も生じているが、この点については、同フォーラムの機会に行われた朱鎔基総理(当時)との日中首脳会談では、両国間の経済問題の早期発見及び紛争の未然防止を図るとともに、両国経済の相互補完関係を一層強化していくことを目的として、日中経済パートナーシップ協議の設立につき合意した。これを受け、第一回会合が、10月、北京において開催され、模倣品被害等の知的財産権問題、対中投資に関連したビジネス上のトラブル、中国により鉄鋼セーフガード措置発動、中国産農産物の残留農薬問題などの懸案につき率直な意見交換が行われた。

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