[10]コスタリカ
1.概 説
コスタリカは人口・面積ともに小規模な国家であるが、教育水準が高く、社会保障制度も整備されている。また、48年以来大統領が民主的に選出されており、中南米で最も安定した民主主義国家の一つである。伝統的に社会民主主義的路線を採っていたが、80年代の累積債務問題を契機に、歴代政権は一貫して経済構造調整に取り組んできた。2002年5月に発足したパチェコ政権は、貧困撲滅及び国民の生活水準の向上を最優先課題として掲げ、実質賃金引き上げ、雇用創出等を図ることを目的として、「経済活性化4カ年計画」、「緊急財政対策案」、「貧困撲滅4カ年計画」等を発表した。「経済活性化4カ年計画」は、財政再建、金融・為替政策の慎重な運営、生産性と競争力の向上、国際経済との連携強化、競争促進・消費者保護の強化を主な内容としている。
コスタリカは、常設の軍隊を保有せず、外交面では伝統的に平和善隣外交、国連中心外交及び対米関係重視を基本方針としており、中米において最も安定した平和民主主義国家としての地歩を固めてきた。また、80年代の中米紛争においては、中米和平合意の成立に積極的な役割を果たした。
経済面では、伝統的にバナナ、コーヒー等の農業を中心とする経済構造であったが、近年は製造業及び非伝統的農産品の生産が伸びており、観光は93年以降バナナ輸出による外貨獲得高を上回る最大の外貨収入源となっている。また、98年3月より、米系のインテル社が同国を拠点にハイテク製品の製造・輸出を開始し、その後、コンピューター部品を中心に輸出は堅調であったが、近年、同部品の国際市場における競争過多及びバナナ、コーヒー等の一次産品の国際市場での価格低迷により、輸出は減少し、貿易収支は急速に悪化している。2001年の米国での同時多発テロの影響により観光客数はほぼ横ばいとなり、好調であった観光産業も影響を受けている。
(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標
これらの影響を受け、実質GDP成長率は、2000年は1.4%、2001年は0.25%と停滞したが、2002年は医療機器及び製薬部門の輸出が伸びた上、下半期に建設業が回復したため、同成長率は2.8%となった。
我が国とは伝統的に良好な関係を有しており、近年ではフィチェル第一副大統領(2000年WHOシンポジウム出席)、ロドリゲス大統領(2001年非公式招聘)が訪日している。96年8月には橋本総理(当時)が中南米5カ国訪問の一環として同国を訪問し、フィゲーレス大統領(当時)と会談した。99年には真鍋環境庁長官(当時)、渡部衆議院副議長、2000年には衆議院公式派遣議員団(自見庄三郎団長)が同国を訪問する等、要人往来は盛んである。中米5カ国の中では本邦進出企業数が最も多く、日本企業のホテル・観光分野等への投資も行われている。なお、97年8月には、長年停止状態にあった対コスタリカ貿易保険が再開された。
2.我が国の政府開発援助の実績とあり方
(1) 基本方針
我が国は、コスタリカが中米地域において最も安定した民主国家であり、域内でも相対的に開発レベルが高く、中米地域全体の民主化推進、経済開発の拠点となり得ることや、我が国と伝統的に友好関係にあること等を考慮し、今後も同国への援助を実施していく。
技術協力については、交通、通信・放送、農業、水産業などの分野で研修員受入れを始めとした各種形態により協力を行っている。86年度以降、農林業、麻薬犯罪防止、生産性・品質向上等の分野について、主に中米・カリブ諸国からの研修員を対象とした第三国研修を実施している。技術協力プロジェクトについては、中米域内産業技術育成、胃ガン早期診断等のプロジェクトを実施した。また、交通、鉱工業、農業・観光等の分野で開発調査を実施している。
有償資金協力については、73年度に港湾建設計画に対し初の円借款供与を行い、85年度には地熱発電所、89年度には資金環流措置の一環として「構造調整計画」に対し世銀との協調融資で円借款を供与した。その後も92年度に上水道整備、2001年度には水力発電所に対して供与を行っている。
無償資金協力については、83年度から文化無償、90年度からは草の根無償を実施している。
同国への援助協調にかかる動きとしては、2001年より「プエブラ・パナマ計画(PPP)」に関する情報交換会がコスタリカ外務省主催で開催されている。
(2) 2001年度の実績
(イ) 総論
2001年度のコスタリカに対する援助実績は175.84億円。うち、有償資金協力は166.83億円、無償資金協力は0.97億円(以上、交換公文ベース)、技術協力は8.04億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、有償資金協力は610.92億円、無償資金協力は24.35億円(以上、交換公文ベース)、技術協力は147.63億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。
(ロ) 無償資金協力:医療保健、教育分野で実施。
(ハ) 技術協力:農業一般及び経営生産性向上分野を中心に実施。
(ニ) 有償資金協力:水力発電関連施設を建設し、安定的に電力供給をはかるために「ピリス水力発電所建設計画」に対し、166.83億円を限度とする円借款の供与を行った。
3.政府開発援助実績
(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)2001年度実施開発調査案件
(参考3)2001年度実施草の根無償資金協力案件
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