[14]パレスチナ

1. 概   説

(1) 94年5月のガザ・ジェリコ合意に基づき、同地区でパレスチナ暫定自治が開始された。同年8月には、西岸地域においても5分野(直接課税、教育・文化、社会福祉、観光、保健)の自治が開始され、95年9月には、自治の第二段階として、西岸地域に暫定自治を拡大し、立法府にあたるパレスチナ評議会の選挙を実施するとの暫定自治拡大合意が成立し、96年1月には同評議会選挙が実施され、パレスチナ暫定自治政府が成立した。
 96年5月に発足したイスラエルのネタニヤフ政権下では、和平プロセスは停滞し、97年1月には漸くイスラエル軍のヘブロンからの撤退と今後の交渉スケジュールについての合意が達成されたものの、同年3月の東エルサレムにおけるイスラエルの住宅地建設問題や同年7月のエルサレムでの自爆テロの発生等により和平プロセスは中断した。しかし、98年10月のイスラエル軍の更なる撤退、治安措置の強化、パレスチナ憲章の改正等を内容とするワイ・リバー合意を契機に和平交渉が新たな局面に移行し、99年5月の労働党のバラク党首への政権交代を経て、99年9月のシャルム・エル・シェルク合意で、最終的地位交渉の終了期限が2000年9月に定められ、2000年7月のキャンプ・デイビッド首脳会談では核心に迫る交渉が行われたものの、成果なく終わった。その後9月末にイスラエル・パレスチナ間の衝突が発生し、2001年3月には右派リクードを中心とするシャロン政権が発足。暴力の悪循環を断ち切るために、2002年3月のアラブ和平提案、国連安保理決議1397等の採択、4月のパウエル米国務長官の現地訪問等国際社会による取り組みが行われたが、停戦は実現しなかった。そのような状況下で、6月にブッシュ米大統領はイスラエル、パレスチナの2国家の平和共存に基づく中東和平構想を表明、同構想を具体化した中東和平「ロードマップ」の策定が米国、EU、ロシア、国連により進められている。
 また、パレスチナ内部から改革の動きが強まり、国際社会としてこの動きを支援するため7月にパレスチナ改革タスクフォース(日本、米国、ロシア、EU、ノルウェー、国連、世銀・IMFにより構成)が形成され、改革の進捗状況と支援のあり方が協議されている。
(2) 西岸・ガザ地域の経済は、イスラエルの経済に大きく依存している。94年5月に自治が開始され、インフラ整備、人造り、社会・人的資源開発及び生産セクターの開発を重点分野としたパレスチナ開発計画(98~2000)を定めた。しかし、93年以降断続的に続いたイスラエル政府のパレスチナ自治区封鎖政策のため、イスラエル国内でのパレスチナ労働者の雇用機会、輸出入、民間投資の減少が著しく、92年から96年までの間に実質GNPは18.4%減少、また、一人当たりGNPは域内人口の3割増加のため36.1%もの急激な減少となった。2001年の実質GNPは約58億ドル、1人当たりGNPは約1,450ドルである(UNSCO資料等より作成)。更に、2000年9月末以降のイスラエル・パレスチナ間の衝突を受け、パレスチナ経済は困窮を極めている。失業率は約42%まで上昇し、所得機会の喪失、インフラ等の毀損のために約83億ドルに及ぶ損失が発生している(2002年4月現在のパレスチナ中央統計局等報告)。

(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標

(3) 我が国との関係については、最近では、2002年6月、川口外務大臣がパレスチナ自治区を訪問したほか、有馬中東和平担当特使が同月パレスチナ自治区を訪問した。パレスチナ側からは、2002年12月、シャアス計画・国際協力庁長官及びマスリ経済・産業・貿易長官が訪日し、川口大臣を始めとする政府関係者と和平に向けた取り組み、我が国の役割につき協議した。

2. 我が国の政府開発援助の実績とあり方

(1) パレスチナに対する政府開発援助の基本的考え方
 我が国は、パレスチナ暫定自治政府に対し、中東和平プロセスの促進、中期的国造り、人道的配慮の観点から積極的に支援を行っている。我が国は、93年度以降、これまでに総額6億4,000万ドル以上の協力を実施しており、対パレスチナ支援総額は、米国に続き第2位となっている。
 パレスチナに対しては、95年からの直接支援の他、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)、UNDPの日・パレスチナ基金、世銀等の国際機関を通じた支援を中心に行っており、国際機関を通じた支援が援助総額の約3分の2を占める。
 パレスチナへの直接支援は、01教育、医療・保健、上水道整備等の基礎生活分野、02インフラ整備を中心に行ってきたが、2000年9月のイスラエルとの衝突発生以降は、治安の問題から人の派遣を伴う協力が実施出来ないため、施設建設等の案件は中断している。現在は、人の派遣を伴わない食糧援助、食糧増産援助、ワクチン等の医療品供与、研修員受入れ等に限定して協力を実施している。なお、パレスチナに対する専門家派遣は実施していないが、ヨルダン及びシリアにあるパレスチナ人対象のUNRWA職業訓練センター向けに専門家を派遣している。
 2002年6月川口外相のイスラエル・パレスチナ自治区訪問時、パレスチナ暫定自治政府(PA)の改革支持と支援を表明すると共に、パレスチナ側に和平へのインセンティブを与えるため、和平プロセス進捗に応じた「我が国の対パレスチナ支援ロードマップ」を提示した。我が国は同ロードマップに基づき、パレスチナ人による国造り努力を後押しするとともに、和平プロセスの進展を促進するための支援を積極的に実施していく方針である。
(2) 2001年度の援助実績
(イ) 総論
 2001年度のパレスチナに対する援助実績は無償資金協力17.36億円(交換公文ベース)、技術協力の1.93億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、無償資金協力は369.69億円(交換公文ベース)、技術協力19.6億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。

3. 政府開発援助実績

(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考)2001年度実施草の根無償資金協力案件

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