[18]ザンビア
1.概 説
91年10月、初の複数政党制下での大統領選挙が行われ、チルバ複数政党民主主義運動(MMD)党首(当時)がカウンダ大統領に圧勝し、また、議会選挙でもMMDがカウンダ大統領率いるUNIP(統一国民独立党)に勝利した。政権交替は円滑に行われ、アフリカにおける民主化の成功例として評価された。
チルバ前政権は、構造調整による経済再建への積極的な取組みを見せたが、他方で、カウンダ元大統領の大統領選挙出馬阻止を狙った憲法改正(96年5月)、軍内部によるクーデター未遂事件(97年10月)があり、また、MMD内部、特に現職閣僚を含む麻薬・汚職問題も指摘された。2001年12月に行われた大統領選において、MMD(与党)が擁立したムワナワサ候補が当選し、2001年1月に大統領に就任した。ムワナワサ大統領は、自らの政策を「ニューディール政策」と称し、チルバ前政権時代の不正追求、汚職追放、産業構造改革に取り組んでいる。
外交面では、ムワナワサ前政権は、自国の経済建設を最優先とする前政権の実利的な外交路線を継承。また、アンゴラ和平プロセスにおける仲介役としての役割や、モザンビーク、ルワンダ等へのPKOの派遣、コンゴ民主共和国の和平合意へのイニシアティブを発揮する等紛争解決のために積極的に貢献する姿勢は国際社会から高い評価を得ている。
経済面では、財政赤字の削減・インフレ率の抑制等のマクロ経済指標については、一定の改善が見られる。また、銅に依存するモノカルチャー経済の反省から、政府は農業その他産業の多角化に努力し、これらの総輸出に占める割合が増加している。98年にマイナス(-0.2%)を記録した経済成長率も、99年は穀物生産・非伝統的産品の生産の伸びに支えられて、2%の成長を達成した。2000年4月に、長年の懸案であったザンビア銅公社(ZCCM)の主要資産の民営化が完了したが、2002年1月、主要オーナーであったアングロ・アメリカン社は不採算を理由に銅鉱山経営からの撤退を表明した。ムワナワサ現政権は銅依存の経済構造からの脱却を図るため、肥沃な未開拓可耕地の開拓を進めることによる農業生産性の向上を目指すとともに、豊富な観光資源を活かした観光収入の向上を中心とする産業構造改革に取り組んでいる。
但し、GNI(約32億ドル・98年)の2倍以上にも及ぶ対外債務(99年末65億ドル以上)の削減を始めとする経済発展のための課題が存在しており、行政の非効率、予算不足と相まって進展が遅いのが現状である。
我が国は、ザンビアから銅・コバルト等を輸入し(2001年輸入額6,070万ドル)、同国に自動車等を輸出している(同輸出額1,835万ドル)。また、要人往来面では、2000年12月にはチルバ大統領(当時)が訪日し、2001年7月には杉浦外務副大臣(当時)が同国を訪問した。
(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標
2.我が国の政府開発援助の実績とあり方
(1) ザンビアに対する政府開発援助の基本的考え方
我が国は、ザンビアが、アフリカ連合(AU)等の有力メンバー国の一つであり、南部アフリカ地域において指導的立場にある国であること、世銀・IMFの支援の下、金融関連規制の自由化、公営企業の民営化、各種価格統制の廃止等の構造調整を積極的に推進していること、銅、コバルト等鉱物資源の供給国として我が国にとって重要であり、また、我が国と良好な関係にあること等から、援助を実施している。今後の援助の実施についても、ムワナワサ政権の行政能力のほか、野党に対する対応ぶり、同国の良い統治に対する取り組みを注視しつつ、検討していく。
2000年3月に実施された経済協力総合調査団におけるザンビア側との政策対話を踏まえ、今後は、農村開発を中心とする貧困対策への支援、費用対効果の高い保健医療サービスの充実、均衡のとれた経済構造改革努力への支援、自立発展に向けた人材育成、域内相互協力の促進の5分野を重点分野として支援を行う方針である。
但し、ザンビアは、重債務貧困国(HIPC)の一つとして、「拡大HIPCイニシアティブ」による債務削減措置の対象国であることから、新規の円借款による協力は困難であり、今後は無償資金協力、技術協力を中心とした協力を検討していくこととする。
ザンビアは、政府のオーナーシップのもと保健、農業、道路、教育、技術訓練の各分野においてドナー会合が定期的に実施されるなど、援助協調が進展している。
(2) 2001年度の援助実績
2001年度までの我が国の援助累計実績では、有償資金協力は1,093.95億円、無償資金協力は856.21億円(以上交換公文ベース)、技術協力は343.05億円(JICA経費実績ベース)と積極的に協力を実施している。2001年度は、無償資金協力42.16億円(交換公文ベース)、技術協力14.89億円(JICA経費実績ベース)を行った。
無償資金協力については、水供給分野、運輸等の分野に対して協力を実施している。特に道路分野では、国内の道路整備のみならず、広域協力としてジンバブエとの国境を流れるザンベジ川にかかるチルンド橋の建設に対する協力を実施した。
技術協力については、保健・医療等の分野で技術協力プロジェクト、保健医療、農業、教育等の分野において、専門家派遣、研修員受入れ、青年海外協力隊派遣等による協力を実施した。
3.政府開発援助実績
(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)2001年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)2001年度実施開発調査案件
(参考3)2001年度実施草の根無償資金協力案件
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