6.中央省庁等改革基本法(外務省関係部分抜粋)

(1998年6月制定)

(外務省の編成方針)
第19条 外務省は、次に掲げる機能及び政策の在り方を踏まえて編成するものとする。
1.総合的な外交政策の策定に関する機能を充実強化すること。
2.情報の収集、分析及び報告に関する機能を充実強化すること。
3.国際社会に広く影響を及ぼす国際約束等の策定に主体的に参画すること。
4.政府開発援助について、次に掲げるところによること。
イ 政府開発援助のより効果的かつ効率的な推進を図るとともに、その推進に当たって民間の人材を活用すること。
ロ 対象国に関する総合的な援助方針の策定その他の政府開発援助に関する全体的な企画及び有償資金協力に関する企画立案について、政府全体を通ずる調整の中核としての機能を担うこと。
ハ 海外経済協力基金と日本輸出入銀行の統合を踏まえ、海外経済協力基金に係る事務については外務省が中心となり関係省との関係を緊密化するとともに、日本輸出入銀行に係る事務については財務省が担当し外務省等との関係を緊密化すること。
ニ 技術協力に関する企画立案について、政府全体を通ずる一元的な調整の中核としての機能を担うこと。ただし、留学生に係るものについては、教育科学技術省の主導権を確保すること。
ホ 技術協力については、国際協力事業団を中心として実施するものとし、関係府省は、同事業団と緊密な連携を確保しつつ、協力すること。
ヘ 国際機関を通じた協力については、大蔵省等との間の分担の在り方を基本として財務省等との間でこれを分担することとするとともに、相互の連携を緊密化すること。
5.対外経済政策について、通商政策機能等を担う関係省との間において、人事交流その他の協力体制の充実及び役割分担の明確化を図ること。
6.国際文化交流について、教育科学技術省との連携を更に緊密化すること。
7.安全保障について、外交政策と防衛政策を始めとした関係府省の政策との密接な連携を確保することにより、総合的な安全保障政策の構築を図ること。
8.地域に関するよりきめ細かな外交政策を推進するため、これを担当する局を適切な分担に再編すること。

7.外務省設置法(平成13年1月より施行、経済協力関係部分抜粋)

外務省設置法における政府開発援助関係部分

第4条(所掌事務)
1号:次のイからニまでに掲げる事項その他の事項に係る外交政策に関すること。
イ:日本国の安全保障
ロ:対外経済関係
:経済協力
ニ:文化その他の分野における国際交流
24号:政府開発援助全体に共通する方針に関する関係行政機関の行う企画の調整に関すること
25号:政府開発援助のうち有償の資金供与による協力に関する関係行政機関の行う企画及び立案の調整に関すること
26号:政府開発援助のうち技術協力に関する関係行政機関の行う企画及び立案の調整に関すること

8.「21世紀に向けた対中経済協力のあり方に関する懇談会」提言(要約)

1.日中関係の現状と展望

(1) 日中関係の現状
(イ) 中国の発展と変化
○79年に我が国が対中ODAを開始して以来、中国は目覚しい経済発展を遂げ、経済・社会の国際化や開放が急速に進みつつある。また、地域協力・対話への参画など国際社会の責任ある一員としての役割を果たそうとしている。
○その反面、低い一人当たりGNPや大きい地域間格差など、貧困層への対応は、大きな問題となっている。
(ロ) 日中関係の質的転換
○改革・開放路線の進展や市場経済のグローバル化を背景に、日中関係は以下のとおり緊密化し、質的転換も遂げつつある。
―経済関係の緊密化、人的交流の拡大に伴う相互依存の深化。
―国際経済社会のグローバル化に伴い、両国とも各々が抱える経済・社会上の課題を国際社会のグローバルな努力の中で解決する必要性の高まり。
アジア通貨・経済危機を契機に、地域全体の安定と繁栄のために、両国が協力していく必要があるとの雰囲気の醸成。
―政府間では関係強化の必要性が共通に認識されている中で、両国国内には懸念や警戒心も存在。
○こうした中、我が国としても日中間の相互理解を一層深める必要がある一方で、中国も国際社会の責任ある一員となるよう努力を強化することが求められる。
(2) 日中関係の展望と対応
○我が国の対外関係の基本は、我が国の安全と繁栄の維持・強化である。そのためには、平和な国際環境の保持、特に東アジア地域の平和と発展が不可欠である。そのためには、中国もまたより開かれた社会となり、国際社会の一員としての責任を果たしていくことが強く望まれる。
○そのためには、中国が国際社会への関与と参加を深めるよう働きかけるとともに、中国のそうした方向への努力を支援する必要がある。
○また、APEC、ASEAN+3、ARFなど地域協力、対話の枠組みへの中国の関与が強まるよう我が国も支援すべきである。
○さらに、上記努力の前提として、確固たる安全保障の枠組みが不可欠であり、日米安保体制の堅持及びその補完たる地域協力・対話が重要である。

2.対中ODAを巡る状況の変化と新たな検討の必要性

(1) 対中ODAを巡る状況の変化
○これまでの対中ODAは、中国の改革・開放政策支援に大きな役割を果たしてきた。
○しかし、近年対中ODAを巡る状況は次のとおり大きく変化している。
―我が国の厳しい経済・財政事情の下、ODAのあり方につき厳しい議論が存在。特に中国については、国力の増大を背景により厳しい批判。
―中国の経済発展を背景に、開発における民間資金の役割が拡大。それに伴いODAに対する期待・需要が変化。
―制度整備や人材育成等ソフト面での開発需要が増大。
(2) 今後の対中ODAを進めるに当たっての考え方
○今後の対中ODA実施に当たっては、次の点を基本とすべきである。
―我が国国民が納得し支持しうる援助をより効率的に実施。
―中国が自ら実施できることは自ら行う。
―ODAとその他公的資金や民間資金との連携強化。
―中国の国際経済社会との一体化を促進・支援するODAの実施。
―「ODA大綱」の「原則」への一層の注意。
○今後は、ODA全体について、従来の支援額を所与のものとすることなく、「案件積み上げ方式」を採ることが重要である。即ち、中国の新たな支援需要に適切に対応しつつ、下記3.の重点分野・課題を中心に、我が国の厳しい経済・財政事情を勘案の上、個別具体的に案件を審査し、実施していくことが適切である。

3.21世紀の対中経済協力の重点課題・分野

 今後の対中ODAは、以下の重点課題・分野を中心に具体的案件の審査・採択を行うべきである。これにより、今後の沿海部中心のインフラ整備から、環境保全、内陸部の民生向上や社会開発、人材育成、制度作り、技術移転等を中心とする分野への支援をより重視し、また日中間の相互理解促進に一層の努力が払われることが期待される。

(1) 改革・開放支援
○改革・開放政策への支援を通じ、中国がより開かれた社会へ発展するよう促すこと、特に市場経済化努力を支援し中国経済の国際経済との係わりを強化すること、が重要となる。また、市場経済化の担い手たる民間の活動を活発化すべく、法制度整備などガヴァナンス(良い統治)強化を支援すべきである。
(2) 環境問題など地球的規模の問題を解決するための協力
○酸性雨、地球温暖化、生態系破壊などの環境問題や結核、HIV/AIDS等の感染症対策といった地球的規模の課題への対処については、従来の協力の成果を最大限活用しつつ、積極的に対応していくべきである。
(3) 相互理解の増進
○ODAにより、専門家派遣や研修員受入、留学生支援、青年交流や文化交流に加え、日本研究・日中共同研究を含む学術交流・大学間交流を通じて、相互理解の増進に資する人材育成の強化等、人と人との交流を進めていくべきである。
(4) 貧困問題克服のための支援
○中国における貧困格差の是正は、一義的に中国政府が主体的に取り組むべき課題ではあるが、今後とも貧困層を対象に、教育・保健分野を中心に草の根レベルで支援するとともに、貧困地域の民生向上に向け、貧困層に裨益する協力を中心に行うことは重要である。
(5) 民間活動への支援
○中国のWTO加盟や、そのための投資受入環境整備努力への支援は、日本企業の円滑な活動確保にもつながる。
○また、円借款の供与において、日本企業の受注率を高める工夫も必要である。
(6) 多国間協力の推進
○東アジア及び国際社会全体の課題解決に向けた新たなパートナーシップ確立のため、ODAを通じて具体的実績を積み上げることは有意義であり、人造り拠点の活動成果等を基に、アフリカなど第三国への支援を行うべきである。
○また、環境分野での協力等、東アジアの域内協力を積極的に推進すべきである。

4.実施上の留意点

(1) 政策協議の強化
○中国側の「ODA大綱」に関する認識を深めるため、援助政策協議やハイレベルの協議等において、大綱につき議論・問題提起していく必要がある。
○また、中国の第三国援助につき、その透明性向上を働きかけることも重要である。
(2) 日本国民に対する対中援助の透明性の向上
○日本国民の対中援助に対する理解促進のため、インターネットの活用等を通じ、対中ODAに関する分かり易い情報の提供、公開を進めるべきである。
(3) 顔の見える援助の推進
○我が国援助が中国国民に広く知られることは、対中援助への支持基盤の再構築に不可欠である。中国側の広報努力を促すとともに、地方政府の意向を反映した案件形成、自治体・NGOとの連携強化、ODA広報の強化といった工夫を進める必要がある。
(4) 対中技術協力の一層の活用とあり方の見直し
○中国における援助需要の変化に柔軟に対応し、効率的な援助を行うためには、シニア海外ボランティア等の一層の活用や既存の制度の見直し等を図るべきである。また、ODA案件の共同形成との観点から、中国側の要請窓口を再検討する必要がある。
○さらに、技術協力と資金協力との連携をより一層強めていくべきである。
(5) プロジェクトの共同形成
○円借款のロング・リストに基づく案件採択の透明性向上を含め、案件形成に我が国も積極的に関わり、中国側と共同で案件形成を行う体制をとるべきである。
○また、無償資金協力の案件選定や技術協力における研修員等の選択の透明性を向上させるべく、そのあり方を検討する必要がある。
(6) その他
(イ) モデル・アプローチ(特定モデル地域開発のための重点的援助及びモデル・プロジェクトの実施と普及)
○効果的かつ目に見える援助実施のためには、特定地域や特定分野に着目したモデル・アプローチが有効である。

(ロ) 旧輸銀資金及び民間資金との関係整理(役割分担の明確化と連携強化)
○JBICの国際金融等業務(旧輸銀業務)とODAは、重点分野や対象地域を異にしているが、特にアンタイド・ローンは運用面での円借款との区別が明確ではないとの批判がある。
○公的資金の効果的・効率的な活用には、ODA・OOF各々の特性を踏まえつつ、その専門性・ノウハウを活かし、相乗効果を得るべく実施する必要があり、各々の目的・趣旨に応じて使い分け、全体として我が国の国益の増進に資するよう、OOFについての適切な取り進め方を検討すべきである。

(ハ) 国際機関(世界銀行、アジア開発銀行)など主要援助機関との連携強化
○我が国が内陸部の民生向上や社会開発、人材育成、環境保全等の事業を行うに当たっては、世界銀行及びADBの人的資源・各種情報の活用や、これら機関との連携強化が望まれる。
○結核対策など、広範囲で同時並行的に推進すべきプロジェクトについては、国際機関との地域・機能分担により協調実施することが望まれる。
○ マイクロクレジット・プロジェクト等多くの人的資源が必要な援助については、国連開発計画(UNDP)などとの共同実施の可能性を検討すべきである。

(ニ) 二国間及び域内協力を念頭に置いたIT協力の検討並びに推進
○中国は、開発におけるITの積極的活用を表明したほか、IT関連のベンチャービジネスも活発である。ITの開発・利用における民間の取組を補完すべく、IT関連の基準・制度等ソフト面への支援を検討し、IT関連人材の育成に貢献すべきである。
○また、アジア太平洋地域におけるITの普及は、我が国のITの一層の発展及び活力ある成長にも資することから、IT分野の協力を通じてそうした「好循環」を形成すべきである。

(ホ) 国内における留学生受入れ体制の強化
○留学生支援等人的交流の大規模な推進に当たって隘路となり得る国内の受け入れ体制改善のために、ODA活用の可能性を検討する。

(ヘ) 「対中援助評価委員会」の設置
○対中援助の評価は、政策・プログラムレベルでの評価を積極的に実施すべきである。
○また、民間有識者による「対中援助評価委員会」を設置し、定期的に本提言及び対中国国別援助計画の実施状況を点検するとともに、5年後を目途に計画全体の評価を行い、政府に助言することが望ましい。
○なお、中国との共同評価や、第三国、国際機関による評価の活用も重要である。
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