(外務省の編成方針)
第19条 外務省は、次に掲げる機能及び政策の在り方を踏まえて編成するものとする。
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1.総合的な外交政策の策定に関する機能を充実強化すること。
2.情報の収集、分析及び報告に関する機能を充実強化すること。
3.国際社会に広く影響を及ぼす国際約束等の策定に主体的に参画すること。
4.政府開発援助について、次に掲げるところによること。
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イ 政府開発援助のより効果的かつ効率的な推進を図るとともに、その推進に当たって民間の人材を活用すること。
ロ 対象国に関する総合的な援助方針の策定その他の政府開発援助に関する全体的な企画及び有償資金協力に関する企画立案について、政府全体を通ずる調整の中核としての機能を担うこと。
ハ 海外経済協力基金と日本輸出入銀行の統合を踏まえ、海外経済協力基金に係る事務については外務省が中心となり関係省との関係を緊密化するとともに、日本輸出入銀行に係る事務については財務省が担当し外務省等との関係を緊密化すること。
ニ 技術協力に関する企画立案について、政府全体を通ずる一元的な調整の中核としての機能を担うこと。ただし、留学生に係るものについては、教育科学技術省の主導権を確保すること。
ホ 技術協力については、国際協力事業団を中心として実施するものとし、関係府省は、同事業団と緊密な連携を確保しつつ、協力すること。
ヘ 国際機関を通じた協力については、大蔵省等との間の分担の在り方を基本として財務省等との間でこれを分担することとするとともに、相互の連携を緊密化すること。
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5.対外経済政策について、通商政策機能等を担う関係省との間において、人事交流その他の協力体制の充実及び役割分担の明確化を図ること。
6.国際文化交流について、教育科学技術省との連携を更に緊密化すること。
7.安全保障について、外交政策と防衛政策を始めとした関係府省の政策との密接な連携を確保することにより、総合的な安全保障政策の構築を図ること。
8.地域に関するよりきめ細かな外交政策を推進するため、これを担当する局を適切な分担に再編すること。
(1) 対中ODAを巡る状況の変化
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○これまでの対中ODAは、中国の改革・開放政策支援に大きな役割を果たしてきた。
○しかし、近年対中ODAを巡る状況は次のとおり大きく変化している。
―我が国の厳しい経済・財政事情の下、ODAのあり方につき厳しい議論が存在。特に中国については、国力の増大を背景により厳しい批判。
―中国の経済発展を背景に、開発における民間資金の役割が拡大。それに伴いODAに対する期待・需要が変化。
―制度整備や人材育成等ソフト面での開発需要が増大。
(2) 今後の対中ODAを進めるに当たっての考え方
- ○今後の対中ODA実施に当たっては、次の点を基本とすべきである。
―我が国国民が納得し支持しうる援助をより効率的に実施。
―中国が自ら実施できることは自ら行う。
―ODAとその他公的資金や民間資金との連携強化。
―中国の国際経済社会との一体化を促進・支援するODAの実施。
―「ODA大綱」の「原則」への一層の注意。
○今後は、ODA全体について、従来の支援額を所与のものとすることなく、「案件積み上げ方式」を採ることが重要である。即ち、中国の新たな支援需要に適切に対応しつつ、下記3.の重点分野・課題を中心に、我が国の厳しい経済・財政事情を勘案の上、個別具体的に案件を審査し、実施していくことが適切である。
今後の対中ODAは、以下の重点課題・分野を中心に具体的案件の審査・採択を行うべきである。これにより、今後の沿海部中心のインフラ整備から、環境保全、内陸部の民生向上や社会開発、人材育成、制度作り、技術移転等を中心とする分野への支援をより重視し、また日中間の相互理解促進に一層の努力が払われることが期待される。
(1) 改革・開放支援
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○改革・開放政策への支援を通じ、中国がより開かれた社会へ発展するよう促すこと、特に市場経済化努力を支援し中国経済の国際経済との係わりを強化すること、が重要となる。また、市場経済化の担い手たる民間の活動を活発化すべく、法制度整備などガヴァナンス(良い統治)強化を支援すべきである。
(2) 環境問題など地球的規模の問題を解決するための協力
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○酸性雨、地球温暖化、生態系破壊などの環境問題や結核、HIV/AIDS等の感染症対策といった地球的規模の課題への対処については、従来の協力の成果を最大限活用しつつ、積極的に対応していくべきである。
(3) 相互理解の増進
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○ODAにより、専門家派遣や研修員受入、留学生支援、青年交流や文化交流に加え、日本研究・日中共同研究を含む学術交流・大学間交流を通じて、相互理解の増進に資する人材育成の強化等、人と人との交流を進めていくべきである。
(4) 貧困問題克服のための支援
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○中国における貧困格差の是正は、一義的に中国政府が主体的に取り組むべき課題ではあるが、今後とも貧困層を対象に、教育・保健分野を中心に草の根レベルで支援するとともに、貧困地域の民生向上に向け、貧困層に裨益する協力を中心に行うことは重要である。
(5) 民間活動への支援
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○中国のWTO加盟や、そのための投資受入環境整備努力への支援は、日本企業の円滑な活動確保にもつながる。
○また、円借款の供与において、日本企業の受注率を高める工夫も必要である。
(6) 多国間協力の推進
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○東アジア及び国際社会全体の課題解決に向けた新たなパートナーシップ確立のため、ODAを通じて具体的実績を積み上げることは有意義であり、人造り拠点の活動成果等を基に、アフリカなど第三国への支援を行うべきである。
○また、環境分野での協力等、東アジアの域内協力を積極的に推進すべきである。