4.21世紀に向けてのODA改革懇談会(最終報告要旨)

(1998年1月発表)

21世紀に向けてのODA改革懇談会メンバー
(座長) 河 合 三 良 国際開発センター会長
五百旗頭 真 神戸大学教授
伊 藤 道 雄 NGO活動推進センター常務理事・事務局長
國 廣 道 彦 元駐中国大使
古 賀 憲 介 日新製鋼会長
小 島 明 日本経済新聞論説主幹
谷 川 平 夫 読売新聞論説副委員長
千 野 忠 男 野村総合研究所理事長
藤 井 義 弘 日立造船会長
渡 辺 利 夫 東京工業大学教授

01.総論
  1. 初めに~ODAの基本精神/なぜ今改革か~
    (1) ODAの基本精神は憲法前文にある。世界の平和と安定、そして発展なくしては、日本の安全と繁栄も確保しえないのであって、ODAへの真摯な取り組みは、国際社会で信頼される国としての存在を確保し、自らの将来の安寧を保障する道につながる。
    (2) ODAをめぐる内外の状況には、大きな変化が生じている。国際社会においては、冷戦終結、地球規模問題の発生、旧社会主義諸国の民主化・市場経済化、新たに援助国の誕生、「開発」に関する基本的考え方の変化、そして最近ではアジアにおける通貨危機といった様々な問題や変化が生じている。一方、国内においては財政が危機的状況にある中、ODA予算の削減といった新たな局面を迎えている。
    (3) このような状況の中、ODAを抜本的に改革する必要性が高まっており、ODAの一層の効率的・効果的実施に全力を挙げて取り組み、自国の国際的責務を遂行すべきである。それが日本国民全体の利益として結実することを強調したい。日本にとってODAは国際貢献のシンボルであり、2000年まで各年度のODA予算削減方針が決定されているが、削減は最小限にとどめられるべきである。

  2. ODAが実現すべき目的
    基本認識:
     ODAの諸目的を実現することは、広い意味での国益の実現である。国際社会全体の利益のために行動することが、日本の長期的な開かれた国益につながる。
    (1) 人道的支援
     日本のODAは、従来も人道支援に積極的に取り組んできたが、その姿勢をさらに強めたい。
    (2) 地球的課題の克服
     地球環境の悪化、人口爆発、食糧・エネルギー危機、エイズなどの感染症、麻薬、テロ、国際犯罪、更には金融秩序不安といった諸問題に対しては、「地球全体の安全保障」あるいは「人類の安全保障」といった観点から、日本のODAは大きな役割を果たすべきである。
    (3) 好ましい安全保障環境の実現
     国際社会の調和ある発展、及び日本を取り巻くアジア諸国の発展は、日本にとっての高度の安全保障につながる。諸外国との友好関係増進と好ましい国際環境の構築に不断の努力が必要であり、ODAはそのための重要な外交手段である。

  3. 日本の援助の特徴~過去のODAの特色と評価~
     日本のODAは、開発における自助努力の重要性を強調し、成果を上げてきた。かつてアジア重視、経済インフラ中心であった日本のODAは地域的にも分野にも広がりを見せている。
     ODA大綱は日本のODAの基本理念と指針を示すうえで、大きな役割を果たしてきた。大綱は内外の情勢の変化に応じて検討を加えていくことも必要である。
     また、日本は中期目標を通じてODA拡充の意思を表明し、着実に実施してきた。これは高い評価を受けてきたが、今後は、日本のODA政策は何かを内外に明らかにするために、ODA中期政策を政府として示す必要がある。

02.各論
  1. 援助供与重点分野についての考え方
    基本認識:
     日本のODAは、様々な分野をバランスよく実施してきたが、援助予算の制約の中で、今後は重点分野をより明確にするべきである。
    (1) 貧困対策と社会開発分野の重視
     今後は、貧困撲滅に役立つタイプの援助を重視するべきである。開発の究極の目的を人間が豊かになることに置いた「人間中心の開発」を実現する。社会開発分野への比重を高め、基礎教育分野、及び保健・医療分野の援助を重視する。その際、ハードのみならずソフト面を含めた総合的アプローチ、資金の効率的使用、参加型開発の促進、内外NGO、青年海外協力隊等との連携・協力強化を行う。
    (2) 経済インフラ整備の新たな展開
     インフラ整備は引き続き重要であり、今後はODA以外の資金が対応しにくい部分をODAは重点的に手当てする。また、その際、資金協力に技術協力を組み込む形で実施し、国際機関との連携を図る。
    (3) 環境
     環境問題は、日本がODAを通じて積極的に取り組む分野であり、案件形成に際しては、日本からも積極的に働きかけ「共同形成」に努める一方、開発途上国が環境案件を形成するようインセンティブを与える。さらに、開発途上国における地球温暖化防止、温暖化への適応の分野での協力を重視する。ODAの計画及び実施の際の環境配慮を強化する。
    (4) 開発途上国の女性支援
     女性の自立を支援する分野の援助の拡充に努め、援助の各段階におけるジェンダー平等(性の間の社会的・文化的格差の是正)の視点を取り入れる。
    (5) 開発途上国の人造り(人材育成)
     「人造り」は「国造り」の基礎であり、今後なお一層強化すべき協力分野である。国別人材育成情報の集積・分析・研究、開発途上国から日本への留学生政策の充実、各援助形態の効率的活用、国際機関との連携を図るべきである。また、長期的観点から日本の良き理解者の育成のため、将来の各国の各層のリーダー群を日本に長期間招待する。
    (6) 知的支援
     知的支援を拡充していくためには日本側の人材確保の観点から、「人材バンク」の整備が重要である。また、昨今のアジア諸国の通貨不安に対しては、各国の金融・通貨制度の改革への協力が重要である。
    (7) グローバル・パートナーシップの形成
     先進国、中進国、及び開発途上国の三者全体が世界的なパートナーシップを形成する必要がある。そのために、アジア地域を中心に日本が支援して「パートナーシップ推進フォーラム」を設置する。また、「ODA」の範囲、その他の国際的基準を見直すとともに「援助卒業国制度」については弾力的かつ柔軟な運用を行う。
    (8) 国境を越えた地域協力
     国境を越えた地域の地域全体の開発への協力、開発プログラムの作成に積極的に取り組む。
    (9) 紛争予防と開発、紛争後の復興・開発支援
     紛争解決後の平和構築及び紛争予防においてもODAの役割が大変大きく、日本はこの面でのより迅速かつ積極的な対応を確保する。また、地雷対策支援及び地雷の犠牲者に対する支援へ積極的に取り組む。
    (10) 民間セクターの役割の重視
     ODA資金を有効に使う上で、貿易を促進し投資を増大させる呼び水となるようなODAの役割に配慮し、民間の活力、知見、人材を活用する。

  2. 国民参加・情報公開・開発教育
    基本認識:
     ODAは民間企業、地方自治体、NGO更には職場や家庭をも含むできるだけ幅広い層との協力、参加そして理解を得て、実施されるべきである。
     そのためには、情報公開と開発教育の促進が不可欠である。
    (1) 国民参加
     NGOを通じる援助を、抜本的に拡充する。NGO、大学、シンクタンク等へのプロジェクトの一括委託、NGOとの協力・連携重視、NGOの組織・活動能力強化への協力、「NGO外務省定期協議会」の更なる推進・拡充といった方策をとる。  ODAの実施に当たって、日本の民間企業は有力なパートナーであり、ODAの効果的・効率的実施のために、民間企業の経験、知見、人材を活用する制度を整備する。  地方自治体による国際協力を支援するため、政府や実施機関は情報の一層の提供、地 方自治体が実施する協力案件に対するODA資金の提供を行う。さらに、青年海外協力隊及びシニア海外ボランティアの制度の一層の拡充を図る。
    (2) 情報公開
     ODAに対する国民の理解・支持を得ていくために情報公開は不可欠であり、援助案件内容や開発途上国の関連情報のデータ・ベース化推進とその公開、外務省、実施機関における情報公開担当官の設置、各省庁が実施するODAの内容についての情報の公開促進といった方策を検討する。また、地方自治体、地域国際化協会との連携した「地方版国際協力プラザ」の展開を検討する。
    (3) 開発教育
     学校教育、社会教育、及び生涯学習のあらゆる段階における開発教育の推進を拡充する。その際、例えば、「開発教育を考える会」のような会合の開催を検討する。

  3. 人材の育成・確保・活用
    基本認識:
     開発援助人材の育成・確保・活用を効果的に実現するためには、開発援助に携わろうとする者の働く場(特に現場)を確保し、教育機関、援助実施機関と援助の現場の間の相互のインターフェイス(接触と交流の機会)を拡充することが重要である。
     開発援助専門家の育成のため、「インターンシップ」の活用、公募型専門家の増加、開発途上国の現場へのプログラムオフィサーの設置を検討する。また、さまざまな機関の相互交流の強化という観点から、大使館、実施機関現地事務所及びNGOにおけるインターン制度の活用、国際開発高等教育機構(FASID)を「ハブ」としたシンクタンク、教育・研究機関とのネットワーク化を図る。JICAの国際協力総合研修所を中心に「人材データバンク」を構築・拡充する。

  4. ODA実施体制のあり方
    基本認識:
     国別援助計画策定に最適な体制を構築するため、政策機関及び実施機関は国別アプローチを強めるよう機構を見直し、政策機関から実施機関、及び本部から現地へ、機能と権限を委譲するべきである。また、政府部内の連携、国際機関、民間との連携といった幅広い連携が確保されるべきである。
    (1) 国別援助計画策定のための体制
     関係各省庁・援助実施機関を構成員とし、外務省をとりまとめの責任者とする。
    「ODA総合政策協議会」(仮称)を設置する。
    現地のニーズを的確に反映した成果重視型の国別援助計画の策定を目指す。その原案は、現地大使館が中心となり実施機関とともに作成する。その際、ODA以外の資金との連携、民間との連携、マクロ経済的な視点の導入を図る。
    ODAの政策立案能力強化のため、開発途上国の開発プログラムに対し多年度にわたる支援額の目途ないし支援プログラムの意図表明が行えるようにする。
    関係省庁と外務省間の間の情報の相互の流通と情報の集約化を図る。
    外務省経済協力局のあり方を見直し、地域局との連携を強化する。政策部門と実施部門の役割を明確化し、援助の実施に関する業務・権限を実施機関へ積極的に移譲する。
    OECFとJICAの連携を強化する。実施機関の業務運営、事務手続きの合理化・簡素化を図る。
    現地においては、大使館及び実施機関事務所の機能を強化し、現地で活動するNGOや民間企業との協議を緊密化する。
    評価については、現行の評価の客観性を一層高めるため、第三者による評価を拡充し、評価手法の開発に努める。また、外務省とJICA、OECFの間の評価に関する業務の分担を明確化する。さらに評価視点の多様化・総合化、評価結果のフィードバック強化、評価に関する広報の一層の強化といった措置をとる。案件実施後のフォローアップが一層迅速・機動的に行えるような体制を整備する。
    (2) 民間及び国際機関との連携
     ODAが果たす一つの役割は開発途上国の開発に資するよう民間企業を活用することであり、民間企業が開発途上国において活動が行いやすくなるような環境整備を行うことである。民活インフラを一層支援するための種々の方策を推進する。
     国際機関を通じる援助については、日本の政策意図が反映されるように、国際機関との連携を深め、現地における対話の強化、国際機関本部との政策対話や人事交流強化を図る。

03.終わりに~日本が目指すべき将来の援助像~
◎ODAは、国際社会で日本という国と国民を映し出す鏡である。ODAの将来像を考える作業は、自ずから、これからの国際社会で日本がどのような国家・国民として生きていくべきかを考えることに結びつく。
◎日本のODAを囲む内外の与件に大きな変化があった。懇談会に与えられた基本課題は、「効果的なODA」を実現するための具体策の提言であり、ODA改革の方向を報告書に示した。
◎日本の立場、ODAが果たしてきた過去の実績を考えれば、ODAの「質の向上」に併せて「量の確保」においても可能な限りの努力を行うことを政府に切望する。
◎国際社会では、「人間中心の開発」が中心的な考えとなっている。経済インフラに加え社会セクターへの展開を従来より積極的に考慮する必要がある。
◎「効果的なODA」実現のための主要な柱として、国別援助計画の策定、ODA総合政策協議会の設置と現地体制及び実施機関の機能強化を掲げている。
◎「ODAの将来像」を描くためのキーワードは「連携」である。「開発途上国との連携」、「国民との連携」、「民間セクターとの連携」に加え「国際機関との連携」が不可欠の要素として加わる。
◎国際社会で、実際の援助供与に際して重視されるのは、ソフト面の能力である。ODA分野での優れた人材の育成に努め、政策立案能力も強化していかなければならない。
◎以上のODA改革を実現することにより、日本は資金力に加えて、「人格」「知力」「こころ」を兼ね備えたODAを推進することが可能となる。

(了)

5.「人間を重視した経済協力」の推進について(要約)

1.「人間を重視した経済協力」への経緯
 
○「人間中心の開発」への動き
初期の経済協力
 開発途上国の生産性の向上のために必要な資本・技術を移転(経済成長がなされれば必然的に民衆の生活も改善され、貧困も解消されるとの考え)
 1970年代
 経済成長だけでは貧困が解消されず、貧富の格差が拡大することもあるとの指摘がなされたことからベーシック・ヒューマン・ニーズ(BHN)・アプローチの強調
 1980年代
 開発途上国の債務危機の緩和のために市場原理の強化を図る「構造調整」アプローチ→市場化の矛盾が社会的弱者にしわ寄せされることを緩和するための社会的セーフティネットの構築等を内容とする「人間の顔をした調整」
 1990年代
―90年に国連開発計画(UNDP)が「人間開発報告書」を公表
―「人間開発」(「人々の選択の幅の拡大過程」として定義)を経済協力の究極の目的として重視
―95年3月の「国連世界社会開発サミット」において「人間中心の開発」を目指すとの考えが表明
2.「人間を重視した経済協力」の意義・理念
 
(1) 基本的考え方
21世紀に向けて、我が国は次のことを内容とする「人間を重視した経済協力」を積極的に推進していくべき
一、経済協力の究極の目的が人間開発にあるという「人間中心の開発」の考え方を基本とすること
一、経済成長が人間開発にとっても重要な役割を果たすものであることに鑑み、経済インフラ整備等による経済開発と人間・社会開発分野とのバランスのとれた経済協力を推進すること
一、「人間中心の開発」においても、人材育成、民間経済活動との連携、対話による課題解決の手法等、我が国ODAのこれまでの経験、知識、ノウハウ等を十分に活かしていくこと
一、人間開発にとって、法治や協議(少数意見の尊重)をはじめとした民主主義諸制度の整備と確保が重要な意味を有することから、開発途上国の「良い統治」に十分留意すること
一、開発途上国の実情に即して、人間開発を基礎とした経済社会の発展を効果的に推進するため、当該国の自助努力を基本とするとともに、多様な経済的社会的事情を十分に踏まえたきめの細かい経済協力を実施すること
(2) ODA大綱との関係
―ODA大綱の基本理念は現在においても妥当性を有しており、今後も尊重すべき
―「人間を重視した経済協力」は我が国がODA大綱に即して経済協力を実施するに当たっての基本的視点を提供するもの
(3) 社会開発との関係
―人間開発は社会開発の必要条件であり、一方で民主的な社会開発は住民の社会的活動範囲や能力発揮の場を広め、持続的な人間開発を保証。このため、住民の参加を重視
―人間開発と社会開発は相互に影響を及ぼしつつ進展していくものであるが、それを保証するものは民主的な政治的・社会的環境。このため、人権の保護と民主主義の保証に十分留意
(4) 経済開発との関係
―人間開発は、産業化に必要な技術・知識の集積を可能とするなど、ハード、ソフト両面での経済開発の基礎
―人間開発と経済開発は相互に影響を及ぼしつつ進展していくものであるが、それを保証するものは自由で自主的な経済主体を前提とした市場経済
(5) 開発途上国の自立に向けた支援
―開発途上国の自立に向けた効果的な支援のためには、開発途上国の実情に応じ、人間開発、社会開発、経済開発のバランスに配慮して、人間を重視したきめの細かい協力を実施することが適切
(6) 我が国の国益の増進
―ODAの実施が我が国の国益の増進に資し、国民の理解と支持を得ることができるものでなければならないことは当然
―「人間を重視した経済協力」は、民主主義と市場経済を基礎として開発途上国の自立を促し、平和で豊かな国際社会の実現に積極的に貢献することが我が国の国際社会における地位を揺るぎないものとし、我が国自身の安全と繁栄の確保に資することとなるとの基本的考え方に立つもの

3.「人間を重視した経済協力」の推進
 
(1) 全般的方向
―人間開発に当たっては、まずBHNの充足が必要。95年の「国連世界社会開発サミット」の「20/20協定」を踏まえた社会開発分野での取組を今後とも重視
―人間開発のためには、自らの意思での社会的活動への参加が必要。このため、社会開発分野での経済協力の実施に当たっては、地域社会又は住民、特に女性の自主的な参加等を重視
―民主主義諸原則に基づいた政治・社会環境と市場を基礎とした経済システムの保証等の「良い統治」は、人間開発を基礎とした経済協力を効果 的に実施する上で望まれるべき要素。「良い統治」を実現していない国に対してその実現を働きかけることは、我が国の国際的な責務
―良好な環境は人間開発にとっての基本的な条件となることから、環境を保全し、望ましい環境を確保するための積極的な取組が必要。環境と開発の両立に十分留意し、環境や資源の観点から将来世代にわたって持続可能であるような社会・経済の形成が目指されるべき
―最近の「IT革命」に伴い、開発途上国においても情報技術を経済社会発展に結びつけることは緊要の課題。このため、情報技術政策の早急な立案、情報技術に関する組織・制度の構築、情報技術インフラの整備等に関する経済協力を大幅に拡充させることが不可欠
―効果的かつ効率的な援助を実施するために、被援助国の実情やニーズの的確な把握のために基礎的調査等の充実が必要

(2) 具体的施策
ア 貧困問題への新しいアプローチ
―貧困の撲滅は経済協力において最重要の課題の一つ
―貧困の撲滅のためには、経済インフラの整備等による持続的な経済成長とともに、貧困層の人々の資質の向上、労働の機会の確保等を内容とする開発的性格を持った事業を実施する必要
―多くの貧困地域で、社会的弱者である女性に貧困のしわ寄せがなされる「貧困の女性化」の問題が存在。女性の地位 向上を図り、収入、教育、保健、人権等の面での男女間格差及び差別を除去することが貧困の撲滅のために重要な要素となるため、女性への配慮に十分留意
―貧困の原因は社会的・政治的要因に起因する複雑なものであることが多いため、開発途上国の貧困撲滅に向けた強い政治的意思と有効かつ持続的な取組が必要。我が国の協力は、開発途上国の自らの取組を基本としつつ、その主導的役割を支援するもの

イ 「人造り」に関する協力
―「人造り」協力は、開発途上国の経済・社会の発展に必要。同時に、我が国への理解者を増やし我が国との相互理解の促進にも寄与。今後とも積極的な取組が必要
―「人造り」協力が開発途上国において有効に機能するためには、その国の発展に必要な制度、組織、技術を受け入れ、支える社会的基盤の醸成が不可欠。今後の「人造り」協力にあっては、このような社会的基盤の醸成に関する視点も必要
―留学生の受入れは、開発途上国における人間開発、経済・社会開発に資するものであり、国際交流の向上等の面 でも重要な効果

ウ 「人間の安全保障」と経済協力
―我が国は、早くから「人間の安全保障」を重視し、国際社会の中で「人間の安全保障」を積極的に推進。「人間の安全保障」は世界の平和的発展を念願する我が国の国益に即するものであり、今後とも経済協力を通 じて積極的に寄与
―「人間の安全保障」の推進のためには、国の枠を超えたNGO等との連携も重要
―民族、宗教的対立等の様々な原因による地域紛争は、人間の生存に対する直接の脅威であり、長期にわたる開発努力の成果 を破壊。我が国は、今後とも紛争の予防、紛争発生時の人道支援、紛争後の復旧・復興支援等に努力

エ 国民参加型経済協力
―NGOとの連携やその活動の支援は、我が国がきめの細かい経済協力を実施する上で有用
―NGOの活動等を通じた国民各層、国民個々人による国際協力への参加は、我が国の草の根レベルでの「顔の見える援助」としての役割。経済協力の将来の担い手を育成する観点からも大きな意義
―NGOの財政基盤の強化、組織運営能力の向上、活動内容に関する説明責任の明確化や透明性の向上についてはNGOの自らの努力にも期待
―国民参加型経済協力の推進に当たっては地方自治体との連携強化や民間企業の活力の活用を図ることも重要

オ 援助人材の育成等
―開発途上国が直面する様々な課題について的確な対応ができるような我が国の援助人材の有効なリクルートの方法や積極的な育成、援助実施体制の充実が重要 ―開発に関する調査研究・分析等の推進や援助政策の立案に関して大学、コンサルタント等の活用を図ることも重要


(3) 評価のあり方
―「人間を重視した経済協力」の効果的な推進のためには、適切な指標の作成とともに、対象となっている地域や国の貧困・生活状況の改善状況等を含めた総合的な評価が必要
―今後とも、「人間を重視した経済協力」を適切に評価するための評価視点や評価手法の確立に努めることが必要

(注)「「人間を重視した経済協力」の推進について」の全文は総理府ホームページ http://www8.cao.go.jp/council/gaisei/ningen.htmlに掲載。

前ページへ 次ページへ