国民参加型援助の典型として、第2節で述べたNGOによる活動に加え、JICAが実施する
青年海外協力隊とシニア海外ボランティアの派遣事業が挙げられる。
「青年海外協力隊」の99年度の派遣実績を見ると、農林水産、保健衛生、教育文化等の7分野、60ヶ国に2,498人の青年海外協力隊員が派遣されている。1965年の事業開始以来の累計は20,141人に上る。青年海外協力隊は20~39歳の日本の青年男女を開発途上地域に派遣し、地域住民と一体となってその地域の経済・社会の発展に協力することを目的とする事業であり、途上国への技術移転、友好親善の増進、更には日本青年の広い国際的視野の涵養に寄与しており、日本の「
顔の見える援助」の一つとして、内外の高い評価を得ている。
また、90年度からは、40~69歳の日本の中高年齢層を対象に「シニア海外ボランティア」制度が導入された(導入時の名称はシニア協力専門家)。これは、青年海外協力隊と同様に、途上国の開発に自発的に参加し協力する意志を有する人材を広く公募し派遣するものであり、99年度末の時点では、科学、工学、農林水産等の8分野にわたり、14ヶ国に146人が派遣されている。事業開始以来の累計では325人に上る。2000年度予算においては、新規派遣人数が、前年度の100人から400人に大幅に拡大された。対象となる年齢層は幅広い技術と豊富な実務経験、社会経験を有しており、多様化・複雑化する途上国側のニーズに対応するために、本事業の一層の活用が期待される。
なお、途上国に派遣される専門家の募集に当たっては、主として、政府部内の関係機関や地方自治体の協力も得つつ人選が行われているが、97年度より一般からの公募が開始された。専門家の公募は、国際協力に関心を有し、途上国の発展に役立つ意志と能力を持った一般国民がODAに参加する道を広げるとともに、政府による人選が困難な途上国の要請分野に対応する可能性を広げるものであり、99年度には公募に基づき42名を派遣した。
地方自治体が行う国際協力活動は、姉妹都市等を通ずる海外との友好・提携関係や海外移住者などを接点として、研修員の受け入れや専門家派遣、青年交流など人的交流を伴う技術協力を中心として推進されることが多い。これらの活動とODAが結びつくことは、きめ細かな援助を行っていく上で有益であるとともに、国民がODAを身近なものとして経験する優れた機会ともなっている。
JICAにおいては、全国にある国内支部・国際センター等の国内機関(20機関)を活動の拠点として、地方自治体、大学、民間等との連携を積極的に進めている。例えば、99年度には、地方自治体を受入機関として、790名を超える技術研修員を受け入れたほか、200名以上の地方自治体職員を専門家として派遣している。
また、99年度には、例えば、阪神・淡路大震災の体験を有する兵庫県において、自然災害に見舞われる中米諸国からの研修員が、日本の地方自治体における災害・防災体制について学び自国の防災体制造り、強化に役立てることを目的とした研修員受入プログラムが実施された。
更に、外務省は、「
地方公共団体補助金制度」に基づき、自治体が行う技術研修員受け入れと専門家派遣事業等への財政支援を行っており、99年度には、47都道府県と5政令指定都市の行うこれらの事業に対し約9.3億円の補助金交付を行った。
その他、JICA国際センター、地方支部等と地方自治体との共催により、地方自治体職員を対象に短期間のセミナー等を開催し、青年海外協力隊事業を含むJICA事業全般についての説明を行い、参加の地方自治体職員が国際協力への理解を深め、更にはこれら事業へ参加する契機となることを目的として、「地方自治体職員等国際協力実務研修」が実施されており、99年度は約700名(地方実施分を含む)の自治体関係者が参加している。更に、青年海外協力隊事業においては、多くの自治体職員が現職参加しているほか、各自治体の協力により隊員募集を行うなど、地方自治体は協力隊事業の促進に大きな役割を果たしている。なお、最近は地方自治体の職員が協力隊事業のコーディネーター役である「調整員」として参加する機会も増えているほか、国際緊急援助隊の救助チームに自治体職員が参加するなどの実績がある。