(1) 91年12月、ソ連の解体とともに独立国家となった。独立以来、一貫して民主化路線を進んできており、97年以降は中道社会主義を掲げるルチンスキー大統領の下で穏健な改革が進められている。しかし、経済情勢の悪化を背景に、99年2月にチュブク首相が辞任、その後を受けた中道右派のストゥルザ内閣も経済不振を理由に12月に総辞職に追い込まれ、紛糾の末に改革派のブラギシ経済改革省次官が首相に就任した。なお、2000年7月に憲法が改正され、大統領はこれまでの公選制ではなく、議会により選出されることになった。モルドヴァにおける内政上の最大の懸案は、ドニエストル川東岸に住むロシア系住民の独立問題を巡る紛争の解決である。この問題は、ロシア軍の介入を招いたが、92年7月、停戦合意が成立し、97年5月には当事者間で関係正常化の覚書が署名されるなど、紛争の包括的解決に踏み出した。しかし、ロシア軍の撤退問題など解決の具体的目途は立っていない。
(2) 外交面では、憲法に中立外交路線が明記されている。中・長期的にはEU加盟を目標に掲げつつ、西側諸国、旧ソ連諸国等、近隣諸国との関係も重視した現実的な外交を進めている。中でも隣国であるウクライナ及びルーマニア、そしてロシアとの関係が重要となっている。ルーマニアとは共通の言語体系を持ち、歴史的、文化的につながりが深い。しかし、国民の大半が独立を支持しており、ルーマニアとの統合問題は、現状では実現の見込みは低い。ロシアとの関係は、沿ドニエストル問題を巡り微妙であり、深刻なエネルギー債務の問題もある。
(3) 経済面では、モルドヴァはGNPの約6割を農業が占める農業国であり、葡萄を主要作物としている。旧ソ連の産業構造に組み込まれており、独立後の貿易の相手国もロシアをはじめとする旧ソ連諸国が約半分を占めているため、ソ連崩壊後、同国の経済は混乱し、貿易量も縮小している。また、エネルギー面でも大きくロシアに依存している。沿ドニエストル紛争や度重なる洪水、干魃などの自然災害による被害もあり経済状態は悪化した。一人あたりGNPについては、96年の590ドルから97年460ドル、98年380ドルにまで低下している。98年のロシアの金融危機の影響により悪化した経済は依然として回復しておらず、失業問題、インフレ等の問題に加え、輸出低迷、主にエネルギー債務の増加等による財政赤字の問題も深刻化している。こうした苦しい経済情勢の中で、同国政府は市場経済化に向けての改革を積極的に推進しており、IMF等の国際金融機関と協調しつつ、輸出入規制の緩和、価格自由化、金融財政改革、民営化等の構造調整に努めている。
(4) 我が国との関係では、92年10月にツユ外相、97年12月にグツ副首相、99年1月にタバカル外相が訪日している。