東チモール
1.概 説
(1) 東チモールは長年インドネシアからの分離・独立を求めていたが、99年8月インドネシアからの拡大自治提案の受け入れ是非を問う住民投票の結果、東チモール住民は提案受け入れを拒否する意向を表明した。投票結果が公表された後、独立反対派による放火、略奪、生活インフラの破壊等が頻発し、治安が悪化したため、国連安全保障理事会決議に基づき、同年9月、豪州主導の多国籍軍が治安回復のために現地に派遣されるに至った。
(2) 他方、同年10月、インドネシア国民協議会は投票結果を受け入れ、東チモールの独立を認める決議を採択し、独立までの統治権は国連安全保障理事会決議により設立された国連東チモール暫定行政機構(UNTAET)が担うこととなった。UNTAETは東チモールの国造りの主体として、従来のPKO業務に加え、独立に向けた復興・開発に取り組んでいる。しかし、東チモールの人々は基礎的インフラの破壊等により、厳しい生活環境におかれており、雇用、人材育成、インフラ復旧、産業育成など国造りに向けての課題は山積している。
(3) また、我が国との要人訪往来では、東チモール独立派指導者のシャナナ・グスマン氏やデ・メロUNTAET国連事務総長特別代表(99年12月、2000年4月)らが訪日し、我が国の支援を要請している。我が国からも99年8月に町村外務政務次官(当時)が現地を訪問して直接投票実施前の状況を視察したほか、2000年1月には東外務総括政務次官(当時)、同年4月には河野外務大臣が、それぞれ現地を訪問している。
2.我が国政府開発援助のあり方
(1) 我が国は、東チモール問題の平和的な解決はアジア太平洋地域の安定と平和のために極めて重要であるとの認識の下、同問題解決のためできる限りの支援を行う旨表明してきている。直接投票の実施に際して人的、資金的協力を行ったのに加え、その後の争乱からの治安回復及び避難民支援、復興開発支援についても様々な面で協力を行ってきている。
(2) 具体的には、まず、現地に展開した多国籍軍への途上国からの参加を支援するため、財政支援として1億ドルを拠出したほか、自衛隊機による国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の援助物資輸送やテント・毛布等の物資協力活動への支援を行った。また、紛争発生後、避難を余儀なくされた人々に対して総額約3,000万ドルの人道支援を行った。更に99年12月には、東京で30カ国及び20以上の国際機関の参加を得て、世銀とともに「第1回東チモール支援国会合」を開催するとともに、今後3年間で1億ドルを目途とする復興、開発支援を行うことを表明した。このうち総計2,800万ドル相当を世銀、UNTAET及び国連の各信託基金に拠出している。また、2000年1月に派遣された経済協力調査団の結果を踏まえて、緊急復興計画の策定や道路・水供給施設等の緊急復旧を行う開発調査を同年2月に開始したほか、医薬品や耕耘機の供与、機動性に富むNGOを通じた支援として総額280万ドルの開発福祉支援事業(5団体が実施する農業、保健・衛生、市場復興の各分野での事業を対象)、総額約4,400万円の緊急無償援助によるNGOへの直接支援(我が国NGOの緊急人道支援事業に対する支援措置)、また、UNHCRに対する320万ドルの追加拠出を実施している。更に7月には、国連開発計画(UNDP)及び国連児童基金(UNICEF)の行う復興プロジェクト(道路、水道、港湾、電力、灌漑及び小学校修復)に対する緊急無償援助(総額2,871万ドル)の実施を決定した。
(3) 加えて、我が国はUNTAETに対する人的協力も積極的に行っている。現地には人道支援・緊急復興担当国連事務総長副特別代表として任命された高橋国際協力事業団(JICA)参与をはじめとする11人の邦人がUNTAET職員として活躍しているほか(2000年8月現在)、JICAやNGOなどから派遣された職員も多く滞在(2000年8月現在の在留邦人件数:約60名程度)している。また、援助関係の日本企業関係者も長・短期を含め多数出入りしている。
(4) 東チモールの人材育成は最重要の課題である。我が国は周辺国と協力して、法曹、水産分野の第三国研修を実施しており、港湾・空港管理運営、外交官・行政官の育成についても協力を行っていく予定である。
(5) このように我が国は、様々な分野で東チモールの復興・開発に向けた取り組みを包括的に支援しており、規模的にも最大の支援国となっている。
3.政府開発援助実績
(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
DAC諸国、ODA NET
国際機関、ODA NET
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)99年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)99年度実施開発調査案件
(参考3)99年度実施草の根無償資金協力案件
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