東アジア地域には、急速な工業化を進めてきた結果、産業公害や都市への人口集中による都市生活環境の悪化、更には自然資源の減少、劣化が進行している国が見られる。これらの問題は、開発途上国の人々に多大な悪影響を及ぼすだけでなく、地球全体に少なからぬ影響を及ぼしうる。我が国は、開発途上国の環境保全に資する援助を積極的に推進しており、居住環境改善(上下水道等)、森林保全、公害対策(大気汚染対策、水質汚染防止)、省エネルギー等の分野を対象に協力を行ってきている。具体的には、中国に「環境保全センター」を設置し、環境モニタリング手法の確立、環境行政分野の人材育成、公害防止技術の研究及び技術普及等を通じ、相手国の環境問題対処能力の向上に貢献しているほか、インドネシアに生物の多様性保全に資する「生物多様性センター」への協力を行っている。
また、95年6月には官民合同のハイレベルの環境ミッションを中国に派遣した他、日中環境協力に関係する中央政府諸機関、援助実施機関、地方自治体、民間団体が参加する包括的な対話の場として、「日中環境協力総合フォーラム」の設置が合意され、96年5月にその第1回会合が北京で、97年11月に第2回会合が東京で、99年11月に第3回会合が北京で、それぞれ開催された。
97年9月に行われた日中首脳会談においては、


97年来のインドネシア及び近隣諸国での森林火災による煙害は周辺諸国に影響を及ぼしており、右への対応はASEAN地域全体の問題となっている。我が国は「森林火災予防計画」(プロジェクト方式技術協力、以下プロ技)を実施しており、98年9月には、プロジェクト形成調査団を派遣した。また、インドネシアの森林火災跡地の復旧のため、植林無償による植林計画を実施した。更に、ASEAN各国やドナー国・関連国際機関と連携を図りつつ、専門家による国際セミナーを開催した。
(8) 人口・エイズ
人口・エイズ分野について我が国は、「地球規模問題イニシアティブ(人口・エイズ)」として94年度から2000年度までの7年間に30億ドルを目途として、ODAによる積極的な協力を行っていくこととしている。東アジア地域においては、タイをエイズ協力、フィリピン、インドネシアを人口・エイズ協力の重点国としており、これ以外の国も含め今後積極的に協力を推進することとしている。99年10月現在、「母と子の健康手帳プロジェクト」(インドネシア)等を実施中である。
(9) 子供の健康(ポリオ根絶への支援)
我が国は、日米コモンアジェンダの一環として「子供の健康」のための支援を行っており、特にポリオ根絶につき、東アジアを中心とする西太平洋地域において最大の援助国として、積極的に支援してきている。その結果、西太平洋地域におけるポリオ根絶は成功し、2000年10月29日にWHOによるこの地域のポリオ根絶宣言が出された。一方、ポリオは他地域からのウィルス伝播による感染の危険が依然としてあることから、ワクチン投与を継続する必要があり、99年度は、中国、カンボディア、ラオス、ミャンマーに対し、感染危険地域に的を絞った予防活動のため、UNICEFとの協力によりポリオワクチン供与を実施している。
(10) 途上国の女性支援(WID/ジェンダー)
98年度については、家族計画、母子保健、公衆衛生分野のプロジェクト方式技術協力がフィリピン、カンボディア、ラオス、ヴィエトナムで実施されたのをはじめ、インドシナ諸国を対象とした母子保健看護の特設研修、マレイシアを対象とした職業訓練のための20名研修受入れのほか、「女性の地位向上」(フィリピン)、「山村地域開発」(タイ)等、多くの研修プログラムによる受入れが実施され、第三国研修において「女性の小規模起業家育成研修」(マレイシア、17名)、「起業家育成を通じた女性の経済危機対策」(フィリピン、40名)、「農村生活向上における女性の役割」(タイ、20名)などが行われている。また、長短期の個別専門家、青年海外協力隊のWID関連プロジェクトへの派遣も積極的に行われている。
(11) 地域間格差是正に資する援助
東アジア地域では、都市部における優先的な工業化・都市化政策により都市への機能及び人口集中が極端に進んでおり、そのため都市と地方農村との所得・生活水準の格差、人口流入による都市のスラム化等が問題となっている。地方における農林水産業をはじめとする地場産業振興、生活基盤の整備、雇用機会の創出等が、人口の都市流出を食い止め、地方経済・生活基盤の確保・強化につながることから、従来より我が国は地方のプロジェクトへの協力や地域総合開発に対する調査協力等一国内の地域的配分にも留意して援助の実施に努めてきている。今後とも各国における地方開発計画等も踏まえ、地域格差是正に資する援助に一層留意する必要がある。
(12) 民活インフラ支援
世銀試算によれば1995~2004年の東アジア大洋州地域における経済インフラ整備に対する投資必要額は1兆3~5千億ドルと見積もられているが、この資金に対しては開発途上国自身の公的資金や先進諸国の援助のみでは対応が困難である。このような状況の下で、途上国は先進諸国の民間の資金・ノウハウを導入することにより、多くの経済インフラを効率よく整備する、いわゆる民活インフラ整備への取り組みを活発化している。その一方、インフラ整備事業には民間だけでは負うことのできない種々のリスクが存在している。そこで、我が国としては、持続的な経済成長を支援する観点から、民活インフラ整備が円滑に実施されるよう必要な支援策を講じていくため、事業環境の整備も念頭においた政策協議の実施、事業の成立を支援するためのODAの活用などの施策を積極的に推進することとしている。
なお、既に、インドネシア、フィリピン等へは本件に関する政策対話を行うミッションを派遣しており、また、「バンコク地下鉄建設計画」(タイ)などの具体的な案件も実施されるなど、この分野においても協力が進んでいる。
(13) 各種援助形態の有機的連携
援助を実施する際に、相手国の経済発展段階や開発需要に即して、これら援助形態を有機的に組み合わせて実施していくことが全体としての効果を高めることとなる。環境研究研修センターや職業訓練センター等に見られるような無償資金協力によるセンター建設とプロジェクト方式技術協力による人造り協力が相乗効果を発揮する等の特定プロジェクトの場合に加え、インドネシアにおいて行われてきたアンブレラ協力のように、特定セクターの目標達成のために、種々の援助形態の組み合わせにより、同セクター内で複数のプロジェクトを計画的、総合的に実施している場合もある。また、新たな連携として、パッケージ協力がある。これは、我が国の技術協力の各スキームを連携し、相手国の提供しうる手段を含め、総合的・有機的に活用しようとする考え方であり、93年4月フィリピンの初等・中等教育(理数科)分野への協力より実施してきている。