(1) 人口、国土ともに小規模な国家であるが、教育水準は高く、社会保障制度も整備されている。また、1948年以来大統領の民選が行われており、中南米で最も安定した民主主義国の一つである。伝統的に社会民主主義路線を採っていたが、累積債務問題を契機に、82年発足したモンヘ政権よりフィゲーレス政権までの四つの政権で一貫して経済構造調整に取り組んできた。98年5月にロドリゲス新大統領が就任した。
コスタ・リカは常設の軍隊を保有せず、外交面では伝統的に平和善隣外交・国連中心外交を基本方針としており、中米における安定的で平和的な民主国家としての地歩を固めてきた。伝統的に親米路線をとっているが、冷戦後の中米情勢の変化に伴い、対米関係を含めた国際環境の変化への対応に迫られている。
(2) 経済面では、従来よりバナナ、コーヒー、牛肉等の農業を中心とする経済構造であったが、近年は製造業及び非伝統的農産品の生産が伸びており、観光は93年以降バナナ輸出による外貨獲得高を上回る最大の外貨収入源となっている。また、98年3月より、米系インテル社がハイテク製品の製造・輸出を開始し、同社の輸出は同国総輸出の約40%弱を占めるに至っている。
政府は世銀・IMF等の協力を得て、最大の課題である財政赤字削減をはじめとする構造調整努力を行っている。95年9月にはIMFとのスタンド・バイ協定、同年10月にはIDBとの融資プログラムに合意している。国内経済は、金融緩和政策への変更により、景気停滞が底を打ち、緩やかながら回復に向かってきた。実質GDP成長率も、96年の-0.6%から97年は3.2%、98年は6.2%、99年は8.3%と大幅な伸びを示している。しかしながら、財政の健全化を目的に電力・通信分野の民営化のための法案が国会の審議で事実上廃案となるなど、ロドリゲス政権は手詰まりの状況となっている。
(3) 我が国とは伝統的に良好な関係を有しており、カルデロン大統領(90年11月の即位の礼参列)、フィゲーレス大統領(95年5月、97年12月)の訪日等要人の往来も盛んである。96年8月には橋本総理(当時)が中南米5カ国訪問の一環として同国を訪問し、フィゲーレス大統領の他、グァテマラ、ホンデュラス、ベリーズなど中米7カ国の首脳等と会談し、21世紀に向けての「新時代のパートナーシップの構築」を目指し関係を強化することを確認した。97年12月、フィゲーレス大統領は第3回気候変動枠組み条約京都会合に出席したほか、橋本総理と首脳会談を行い、民間企業関係者との会合にも出席した。なお、97年8月には、長年停止状態にあった対コスタ・リカ貿易保険が再開された。
中米5カ国の中では本邦進出企業数が最も多く、日本企業のホテル・観光分野等への投資も行われている。