[9]グァテマラ
1.概 説
(1) 長年に亘り軍事政権が続いていたが、1986年に民主的選挙によりセレソ大統領が選出され、16年ぶりに民政移管が行われた。グァテマラでは反政府ゲリラURNG(グァテマラ国民革命連合)の活動が36年も続いていたが、91年に開始された和平交渉は、94年以降国連の仲介のもと大幅に前進し、96年1月に就任したアルスー大統領の和平交渉プロセスへの積極的対応により、同年12月最終和平合意が成立し中米最後の内戦が終了した。
97年5月には、国連軍事監視団の監視の下、ゲリラの武装解除が予定通り完了したが、これは国連PKOの歴史の中でも成功例として高い評価を得た。アルスー政権は、最終和平合意に基づく和平プロセスの一環として、先住マヤ民族の人権保障強化を含む行政・司法制度の改革など国家の近代化・民主化に取り組むとともに、貧富格差是正のための社会投資の充実も図られている。99年1月に就任したポルティージョ大統領は、和平プロセスの遵守を約束し、この一環で軍の改革や税制改革に取り組んでいる。
(2) 経済面では、農業が主要産業であるが、輸出用作物は大規模プランテーションで栽培され、先住民を主体とする一般農民は自給自足的な農耕を行っている。コーヒー、綿花、バナナ、カルダモン(香料)、チクレゴムなどが主要輸出品であるが、外貨収入は国際市場価格に依存しており、このことが同国経済を大きく左右している。
96年末の内戦終結後は、マクロ経済も安定的に推移しており、98年10月末から11月はじめに中米をハリケーン「ミッチ」が襲ったものの、グァテマラへの経済的影響は比較的小さかった。経済成長率は、97年4.1%、98年4.7%、インフレ率も、97年7.1%、98年7.4%と比較的安定している。
但し、96年末の和平合意以降、社会開発部門への歳出が増大して財政が悪化しており、ポルティージョ政権は税制改革を通じて財政の健全化を図っている。なお、96年の和平協定では2000年までに対GDP税収率12%を達成することを定めていたが、同目標の達成時期は2002年に延期された。
(3) 我が国とは、1935年に外交関係を開設した。我が国との貿易は中米5カ国の中では最大規模であり、我が国の主な輸入品は綿花、コーヒー、葉たばこである。96年7月には、「第2回日・中米フォーラム」出席のためステイン外相が来日している。また、97年9月には常陸宮同妃両殿下が御訪問し、これは中米初の皇族御訪問となった。
(参考1)主要経済指標等
(参考2)主要社会開発指標
2.我が国の政府開発援助の実績とあり方
(1) 93年5月のセラーノ大統領による憲法停止の際、我が国は、これが民主化プロセスに逆行するものであると判断し、ODA大綱の原則に則り、米国及びEC等とともに援助政策の見直しを行った。
このセラーノ大統領の措置に対する内外からの強い批判と援助見直し措置がグァテマラ経済に与える影響の大きさからセラーノ大統領は失脚し、デ・レオン人権擁護官が憲法の規定に従い民主的な手続きにより新大統領に就任した。この立憲体制と法の支配の再確立は国際社会から歓迎され、各国の援助は再開されることとなった。我が国としては今後とも、ODA大綱の原則に則り、同国の民主化、経済開発のための努力を支援していく方針である。また、96年12月の和平合意を受けて、我が国としてもグァテマラの和平プロセスを強化するとの観点から、和平支援を積極的に行っている。
(2) 我が国のグァテマラに対する援助は、民主政権が誕生した86年以降、資金協力を含め徐々に拡充してきている。96年12月末の内戦終結を受けて、97年6月政策協議調査団を派遣し、教育、保健・衛生、インフラ整備、治安、行政・司法の整備が援助の重点分野であること、及び、分野横断的な視点として、地方と都市の格差是正の問題があることについても確認された。また、99年2月、プロジェクト確認調査団を派遣し、政策対話を行うとともに、同11月には防災分野のプロジェクト形成調査団を派遣した。
技術協力については、農業、運輸・交通、保健・医療、教育などの分野で研修員受入れ、専門家派遣、開発調査等を実施している。特に保健・医療分野ではプロジェクト方式技術協力「熱帯病研究」を実施し、同協力の成果として2000年度よりシャーガス病の撲滅を目指した協力を開始した。また、87年に青年海外協力隊の派遣を開始した。
無償資金協力については、従来は文化無償及び緊急災害援助に限られていたが、89年度以降は援助を拡充してきており、医療・保健あるいは飲料水供給など、基礎生活分野の改善に資する案件を中心とする援助を実施している。95年11月及び96年1月の大統領選挙に際しては、民主化支援として米州機構(OAS)に対し10万ドルを拠出したほか、3名の選挙監視員を派遣した。更に、96年12月末の和平達成を踏まえ、ノンプロジェクト無償資金協力を初めて供与している。また、近年は一般プロジェクト無償として、飲料水供給、学校建設、医療分野への協力を行っている。更に、和平支援の一環として、97年3月、UNDPの「グァテマラ帰還民等の再定住支援計画」に対し245万ドルを拠出するとともに、98年8月にはグァテマラの「人権侵害真相究明委員会」の活動に対し75万ドルを拠出し、同国の民主化に貢献してきている。
有償資金協力については、87年度に首都圏の電話網の拡充、90年度に地下水開発、95年度には地方経済社会インフラ整備、98年度には地方道路のリハビリに関する案件に対し円借款を供与した。
グァテマラは識字率、初等教育就学率等が中米において最低水準であり、なかでも女子の教育状況は極めて低いレベルにあるため、95年に途上国の女性支援(WID)が日米コモン・アジェンダの新たな協力分野となったことを受け、同5月の日米コモン・アジェンダ第1回作業部会において、同国の女子初等教育振興を日米で協力して取り組んでいくこととした。97年には一般プロジェクト無償で「小学校建設計画」を実施したほか、女子教育分野の専門家及び青年海外協力隊を派遣、UNDPのWID基金による教育セミナーの開催、草の根無償による図書供与や教材開発等、包括的な協力を展開している。
3.政府開発援助実績
(1) 我が国のODA実績
(2) DAC諸国・国際機関のODA実績
DAC諸国、ODA NET
国際機関、ODA NET
(3) 年度別・形態別実績
(参考1)99年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力案件
(参考2)99年度実施開発調査案件
(参考3)99年度実施草の根無償資金協力案件
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