(1) 91年4月のクーデターにより、ラマエマ新軍事評議会議長が政権に就いた。同議長は就任当初から民政移管を表明し、93年3月には23年ぶりの総選挙が実施されたが、その結果、バソト会議党(BCP)が与党バソト国民党(BNP)に圧勝し、BCP党首モケシュレが首相に就任した。97年6月にはBCP内部の権力闘争により、モケシュレ派が脱退してレソト国民会議(LCD)を結成し、与党の座を維持した。98年5月の国民議会選挙ではLCDが圧倒的勝利を収め、モシシリ新首相が選出された。同年8月、総選挙の結果を巡って与野党の対立が生じ、9月には南ア軍及びボツワナ軍から成るSADC(南部アフリカ開発共同体)軍の介入を招いたが、その後与野党の対話により、2000年に新たに選挙を行うことで決着した(その後99年5月には南ア・ボツワナ軍は同国より撤退している。)。
(2) 外交面では、非同盟中立、アフリカ統一機構(OAU)、英連邦との連携を基軸としつつ、同国が経済的に大きく依存している南アフリカとの関係を今後いかに調整するかが重要な課題である。
(3) 経済面では、労働人口の4人に1人が鉱山労働者として南アへ出稼ぎに出ており、この送金がGNPの約3分の1を占めている。しかし、近年の南ア鉱業の不振から出稼ぎ労働者のUターンが目立ち始め、貴重な外貨収入源の喪失と国内失業率の上昇という深刻な問題を引き起こしている。また、南ア、ボツワナ、スワジランド及びナミビアとともに南部アフリカ関税同盟(SACU)を構成し、SACUからの関税収入が財政収入の約50%を占めている。農業については、可耕地は国土の約13%にすぎず、農地に対する需要が逼迫し、縮小傾向にあるが、その一方、IMFの構造調整政策が功を奏して建設業・製造業は急激に成長している。
(4) 我が国は、レソトから衣類等を輸入し(99年輸入額0.2万ドル)、同国にビデオ機器、ミシン等を輸出している(同輸出額106万ドル)。