(1) 76年以降複数政党制を採用したアフリカの中では最も民主化の進んだ国の一つと言える。81年に就任したディウフ大統領のもとで内政は安定的に推移してきたが、2000年3月の大統領選挙では独立以来の社会党長期政権に対する飽きと変革を求める若年層に支持されたワッド候補が当選した。なお、大統領選挙とその後の政権交代は平穏に行われ、同国における民主主義の定着を示すものとして国際的に評価されている。
内政上の重要問題となっている南部カザマンス地方の分離独立問題を巡っては、99年12月、政府と民主勢力運動(MFDC)との間で暴力行為の停止が合意されたが、ゲリラ活動が散発するなど和平の実現には至っていない。
(2) 外交面では、旧宗主国フランスとの協調を基軸とし、先進諸国寄りの穏健な非同盟主義を基本とするほか、アラブ諸国及びイスラム諸国とも緊密な関係を有している。また、ルワンダ内戦等に際し、軍隊を派遣する等紛争解決や人道援助活動でも国際社会と歩調を合わせつつ積極的な貢献を行っている。
(3) 経済面では、落花生等伝統的農業が中心であるが、一次産品価格の低迷等により、財政赤字、国際収支赤字、対外債務問題が恒常化している。79年より世銀・IMFの支援を受けて構造調整政策に取組んでいるが、同政策に対する国内の不満や、農業生産性の低迷等の困難に直面している。94年1月の通貨(CFAフラン)切り下げ以降、政府は緊縮財政をとり、民営化等に努力した結果、観光業、漁業等を中心に経済は上向き、98年の経済成長率は5.7%、同年のインフレ率は2.0%となっている。政府は、民間主導による経済発展等を課題とする第9次経済社会開発計画(1996―2001年)を定め、民営化推進のための投資環境整備、貧困対策としての基礎教育及び医療・保健等の社会的側面への一層の配慮を目指している。
(4) 我が国との関係は従来から良好である。要人往来も活発で、我が国からは84年皇太子・同妃両殿下(当時)がセネガルを訪問し、セネガルからはディウフ大統領が88年6月(国賓)及び90年11月(即位の礼)に訪日した。貿易関係については、我が国はセネガルから水産物、燐製品等を輸入し(99年輸入額826万ドル)、同国に貨物・乗用自動車、合成繊維等を輸出している(同輸出額2,232万ドル)。
(1) 我が国は、セネガルが、

西アフリカの中心国の一つとして政治的に大きな発言力を有しており、仏語圏アフリカ諸国の中で中心的な役割を果たしていること、

76年以来複数政党制を採用し、アフリカ有数の民主主義国家として政情が比較的安定していること(2000年3月の大統領選挙でも平穏裡に政権交代が行われた)、

79年より世銀・IMFの支援の下、構造調整・経済再建に積極的に取り組んでいること、

人口増加率の高さ、砂漠化等多くの開発課題を抱えており、援助需要が大きいこと、

我が国との関係も緊密で我が国の対西アフリカ外交の中心国の一つであること、

具体的な開発目標を掲げ、経済社会開発のための主体性(オーナーシップ)をもって行っているセネガルの開発政策は、DAC新開発戦略の趣旨にも合致し、セネガルにおいて新開発戦略の実施を重点的に支援しうる状況にあること等から、我が国援助の重点国の一つとして位置付けている。
我が国は、セネガルにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び95年3月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議、2000年6月のプロジェクト確認調査におけるセネガル側との政策対話を踏まえ、次の分野を重点分野として援助を実施していく方針である。
(イ) 基礎的生活基盤の改善
(a) 生活用水
セネガルでは安全な水へのアクセスが不足しているので、衛生状況の改善、女性の水汲み労働の軽減のため、地下水開発等による生活用水の確保を支援する。特に村落給水分野でのプロジェクトの可能性を検討する。
(b) 教育
基礎教育の遅れが深刻なセネガルにおいて、ハード・ソフト両面から基礎教育の充実に向けて協力を実施する。
(c) 基礎的保健・医療
プライマリー・ヘルス・ケア、公衆衛生等の基礎的保健・医療体制の整備を支援するとともに、ポリオ、エイズ等の感染症対策の協力も検討する。
(ロ) 環境(砂漠化防止)
砂漠化の進行、土壌の劣化が深刻な問題となっていることから、地域住民が主体となって村落資源の利用・管理を行う村落林業・村落振興の普及モデル開発を目的とした「総合村落林業開発計画」を99年度から実施中である。
(ハ) 農水産業
国土の砂漠化、旱魃等の厳しい条件の下、輸出用換金作物のモノカルチャー型の農業生産を行っており、穀物の対外依存度が非常に高くなっている。従って、食糧作物の生産性向上のための食糧増産援助、灌漑施設整備等の協力を実施する。また、水産品が最大の輸出品目となっており、食料供給面においても重要であることから、零細漁業の振興等を支援する。
(2) 無償資金協力については、農業分野、水産分野、水供給分野、保健・医療分野、教育分野等の基礎生活分野を中心に幅広く協力を行っている。
研修員受入、青年海外協力隊派遣等の技術協力については、農林水産業、保健・医療等の分野を中心に、開発調査については、社会経済基盤等の分野を中心に実施している。また、同国の技能労働者育成に貢献するため、83年度から92年度に「職業訓練センタープロジェクト」が実施され、99年度からは第2期の「職業訓練センター拡充計画」として実施中である。
2000年3月には、西アフリカ地域内に於ける安全な水の確保をテーマとするセミナーを実施した。
有償資金協力については、セネガルが既に債務削減措置の適用を受けている上、重債務貧困国(HIPC)として、ケルン・サミットでの合意に基づいて成立した「拡大HIPCイニシアティブ」に基づく債務削減措置が適用されることとなっていることから、新規の円借款による協力は困難である。また、我が国は、同国の構造調整努力を支援するため、99年度までに合計121億円の円借款及び合計130億円のノン・プロジェクト無償資金協力を供与した。99年3月には、4億円の環境・社会開発セクター・プログラム無償資金協力を実施した。
(3) その他、緊急援助分野では、99年の洪水災害に対して、緊急援助物資(1,787万円相当)を供与した。
(4) 更に、同国政権は、「貧困削減戦略ペーパー(Poverty Reduction Strategy Paper)」(暫定版)を作成済みであるところ、今後は、完全版のPRSP作成に向けて、我が国としても積極的に貢献していく方針である。