21世紀に入り、我が国の政府開発援助(ODA)を巡る情勢は、内外ともに大きな変化の中にあります。
国内においては、厳しい経済・財政事情の中、ODAにも厳しい目が向けられています。国民の税金を原資とするODAは、国民の理解と支持の上にあって、はじめて成り立つ事業です。こうした観点から、政府としては、ODAの適正かつ効果的・効率的な実施に取り組むとともに、情報公開の推進をはじめ、その透明性の向上に一層の努力を払っていく考えです。
また、国際社会に目を向ければ、グローバル化が急速に進展し、世界的規模で発展の機会を提供する一方、未だに多くの開発途上国がその恩恵を享受しえず、様々な格差が生じていることも事実です。加えて、今なお世界各地で続く紛争は、途上国の人々の生命に直接的な影響を与えるばかりでなく経済・社会基盤を損なうものであり、人類全体が取り組むべき大きな課題となっています。相互依存関係がますます深まる今、日本を含む国際社会全体の繁栄と安定はこうした途上国の人々の状況を切り離して考えることはできません。
こうした中、ODAを通じた日本の役割には、途上国をはじめ国際社会から高い期待が寄せられています。我が国がこうした期待に積極的に応えていくことは、国際社会における日本の信頼を培い、存在感を高め、国益確保に繋がるものと考えます。
そして、途上国の国造りを支援するODA事業においては、相手国の人々の文化や価値観を尊重しつつ、同じ目線に立ちながら、彼らとともに汗を流し、知恵を絞っていくことが重要と考えます。ODAを通じたこうした地道な努力の積み重ねが、長期的視野に立った人と人、国と国との間の信頼関係の構築に必要であり、ひいては世界の平和や安定にも寄与するものと思われます。
我が国が議長国を務めた昨年の九州・沖縄サミットでは、開発の問題を積極的に取りあげるとともに、感染症、情報格差、紛争と開発といった途上国が直面する現下の課題について、日本独自の貢献策や考え方を打ち出しました。こうした努力を積み重ねていく上で、民間部門やNGO等の市民社会との連携・協力を深めながら開発協力を進めていくことが、国民の皆様から幅広い理解と支持を得ていく上でこれまで以上に必要とされています。
本書では、特にこうしたODAを取り巻く内外の環境変化を総覧しつつ、それらに対する日本の考え方、ODA改革に向けた取り組みを詳しく説明しています。また、主要な被援助国・地域、あるいは九州・沖縄サミットでも取り上げられた最近の課題などについて、日本としての取り組み方針を具体的に記述しました。
今後とも国内各方面のご意見に耳を傾けながら、ODAの改善に向けて努力を続けていく考えです。本書を通じ、読者の皆様のご理解が更に深まり、一層のご支援を賜れば幸いであります。
2001年3月