アジア開発銀行(ADB:Asian Development Bank)及び
アジア開発基金(ADF:Asian Development Fund)の概要と実績
- 設立経緯及び我が国の協力開始の時期・経緯・目的
(1) 開始時期
1963年に開催された第1回アジア経済協力閣僚会議において、ADBの設立が決議され、1966年に正式に発足。我が国は設立準備段階より参画しており、設立時より加盟している。(2) 経緯・目的
ADBは、ESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会、旧称ECAFE)の発案により、アジア・太平洋地域における経済成長及び経済協力を助長し、開発途上国の経済開発に貢献することを目的として設立された(本部マニラ)。99年末現在で58の国及び地域が加盟しており、日本を含む域内加盟国は42か国、域外加盟国数(アメリカ、ヨーロッパ)は16か国となっている。歴代総裁は全て日本人であり、現在の総裁(第7代目)は千野忠男氏である。なお、近年、中央アジア諸国等からの新規加盟が相次いでおり、体制移行国への支援も強化している。
- 事業の仕組み
(1) 概要
ADBの主な機能は、(1)開発途上加盟国に対する資金の貸付・株式投資、(2)開発プロジェクト・開発プログラムの準備・執行のための技術支援及び助言業務、(3)開発目的のための公的・民間支援の促進、(4)開発途上加盟国の開発政策調整支援等、である。
ADBの財源には、比較的所得の高い開発途上加盟国への融資業務に使用される「通常資本財源(OCR)」と、低所得国向けに緩和された条件で貸付を行うのに使われる「アジア開発基金(ADF)」がある。また、加盟国からの拠出金とOCR及びADFからの配分金からなる「技術援助特別基金」があり、技術援助に用いられている。99年末現在、OCR(授権資本ベース)は483億ドル、ADFは172億ドルとなっている。(2) 審査・決定プロセス
ADBが融資借入国との協議の上、プロジェクト・プログラムを策定し、理事会において審査、決定がなされる。(3) 決定後の案件実施の仕組み
ADBが事業を実施している。
- 最近の活動内容
(1) 概要
ADBの業務活動は域内諸国の持続可能な開発に貢献するという役割の中で、中期業務戦略(92年~)に定められた戦略的開発目的である、経済成長、貧困の緩和、人的開発の支援、女性の地位向上及び環境保全の5項目を主眼としていた。しかし、貧困層重視の持続的経済成長、社会開発、グッドガバナンスを三本柱とし、貧困削減をADBの最重要目標とする貧困削減戦略を99年11月に発表している。
98年の融資総額は、OCRが50億ドル、ADFが10億ドル、99年はOCRが39億ドル、ADFが11億ドルであり、アジア通貨危機への対応等により一時増加した融資量は、同危機以前の水準に戻りつつある。これは、通貨危機対応で97年・98年に最も多かった金融部門(各総額比50%・28%)が、99年には最も少なくなっている(1%)ことにも現れている。
98年、99年の部門別実績 (OCR+ADF)
部 門 98年 99年 金額(百万ドル) シェア(%) 金額(百万ドル) シェア(%) 農業 421 7 430 9 エネルギー 440 7 719 14 鉱工業 4 0.1 407 8 金融 1,676 28 69 1 運輸・通信 1,497 25 993 20 社会インフラ 705 12 1,387 28 多目的・その他 1,240 21 973 20 合 計 5,983 100 4,979 100 (2) 地域別実績
地域別実績は、下表に示すとおりである。
借入国別に99年の実績をみても、通貨危機の影響を受けた国のウェートは低いものとなっている
98年の国別実績 (OCR+ADFの上位10か国)
国 名 金額
(百万ドル)シェア(%) インドネシア 1,836 30.7 中国 1,202 20.1 フィリピン 855 14.3 タイ 630 10.5 インド 250 4.2 バングラデシュ 200 3.3 スリランカ 190 3.2 ヴェトナム 184 3.1 ウズペキスタン 120 2.0 ネパール 105 1.8 その他 410 6.8 合 計 5,983 100
99年の国別実績 (OCR+ADFの上位10か国)
国 名 金額
(百万ドル)シェア(%) 中国 1,259 25.3 インドネシア 1,020 20.5 インド 625 12.6 パキスタン 403 8.1 タイ 364 7.3 バングラデシュ 332 6.7 ヴェトナム 195 3.9 スリランカ 184 3.7 パプアニューギニア 109 2.2 カンボジア 88 1.8 その他 373 7.9 合 計 4,979 100 (3) 主要な事業
国 名 何 件 名 承認額
(百万ドル)インドネシア 電力セクター改革プログラム 400 中国 北東地域洪水災害復興 330 インドネシア 共同体・地方政府支援セクター改善プログラム 320 中国 蘇州江復興 300 インドネシア 保健・栄養セクター開発プログラム 300 パキスタン 貿易・輸出促進、産業プログラム 300 タイ 農業セクタープログラム 300 中国 雲南南部地域道路開発 250 中国 山西道路開発 250 インド マディアプラデシュ公的資金管理プログラム 250
- 我が国との関係
(1) 意志決定機構における我が国の位置づけ
最高意志決定機関は、各加盟国の総務により構成される総務会であり、我が国は大蔵大臣が総務に任命されている。また、融資の承認等日常業務の意志決定は12人の理事(域内国8人、域外国4人)からなる理事会で行われており、我が国からは単独で理事が選出されている。(2) 邦人職員
職員総数1,962名のうち日本人職員は79名(補助職員2名を含む:99年末現在)。
歴代総裁は全て日本人であり、現在の総裁(第7代目)は千野忠男氏である。(3) 我が国の財政負担
99年末現在、通常資本財源(授権資本ベース)483億ドルのうち、我が国の出資額は76億ドル(シェア15.9%)であり、米国とともに加盟国中第1位。また、アジア開発基金172億ドルのうち我が国の拠出額は64億ドル(シェア37.5%)であり、加盟国中第1位である。(4) 主な使途を明示した信託基金への拠出、活用状況
(イ) 日本特別基金(Japan Special Fund) 下記の使途に供するために、1988年に創設されたものである。
(使途)(1) プロジェクトの案件発掘や事業化のための事前調査などプロジェクトの案件形成に対する支援。 (2) 開発途上国政府の制度の企画・立案等に対する政策助言の支援。 (3) 我が国研究者との交流の促進や日本を含むアジアの経済発展の経験に関する調査・研究活動の支援。 (4) 開発途上国政府職員等を対象とした研修プログラムの実施など人材育成活動の支援、我が国の人的貢献を支援。 (5) その他ADBでは、地域的なプロジェクトへの技術援助も実施しており例えばメコン河流域開発の関係国間の調整及びインフラ整備や環境面に携わる各国機関の能力強化等にも技術援助を行っている。
- (近年の拠出額)
- 98年度拠出 約72億円
- 99年度拠出 約41億円
なお、99年度において日本特別基金による支援案件は91件(実績)であり、主なものを列記すれば以下のとおりである。
国 名 案 件 名 承認額
(千ドル)セクター スリランカ 港湾開発 1,460 運輸・通信 カザフスタン 鉄道セクター開発 850 運輸・通信 パプアニューギニア 道路管理システム開発 581 運輸・通信 ベトナム 農業セクタープログラム 1,000 農業 インドネシア 樹木果実管理システム開発 950 農業 タジキスタン 電力セクター開発 850 エネルギー ラオス 電力セクター戦略調査 800 エネルギー モンゴル エネルギー計画能力強化 700 エネルギー カンボジア 地方金融サービス能力強化 1,450 金融 ウズペキスタン 地方預金信用組合開発 600 金融 中国 環境庁能力強化 810 環境 ネパール 都市環境改善 750 環境 (ロ) アジア通貨危機支援資金(ACCSF:Asian Currency Crisis Support Facility)
アジア通貨危機支援資金は、98年秋、我が国が表明した「アジア通貨危機支援に関する新構想新宮澤構想」の一環として、通貨危機に見舞われたアジア諸国の円滑な資金調達(借入・債券発行)等を支援することを目的として、我が国からの資金拠出(利子補給・技術援助分として75億円、保証分として3,600億円。なお、保証分は国債による拠出)により、ADBに創設されたものである。更に、平成11年度予算にて、利子補給・技術援助分として200億円を追加拠出している。同資金はADBにより運営・管理される。
国 名 案 件 名 承認額
(千ドル)インドネシア - 天然資源及び環境管理部門
380 - 保健・栄養セクター開発プログラムの評価とモニタリング
1,000 - 地方の保健サービスマネージメントのための能力開発
1,000 - 行政システム分権化のための能力開発
500 - 地方レベルでの財政金融システムの確率のための能力開発
460 - 参加型企画立案、モニタリング、評価のための能力開発
1,540 - 公的サービスのリストラのための戦略
488 - 環境影響評価プロセスの分権化のための能力開発
420 フィリピン - コミュニティベースでの森林資源管理
840 - 都市部貧困地域の開発
850 タイ - 特定金融機関のリストラ
3,000 (5) 我が国のODAとの協調実績
我が国は、ADBにとって最大の二国間の協調融資相手国。98年中の国際協力銀行(旧海外経済協力基金)等との協調融資総額は約5.4億ドルなるも、99年は倍増し、約13億ドルとなっている。
- より詳細な情報
(1) 書籍等 年次報告; 1年間の途上国援助活動をテーマ別・国別に取りまとめているほか、種々のデータが掲載されている。例年4月に発行。ADB駐日事務所に請求することにより、無料にて入手可能(本、若しくはCD)。又、一部ではあるがホームページにおいて掲載されている。 (2) ホームページ
http://www.adb.org
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