国連開発計画(UNDP:United Nations Development Programme)の概要と実績


  1. 設立及び我が国の協力開始の時期・経緯・目的

    (1) 開始時期
     1966年1月1日発足。我が国の同機関への資金協力は1966年以来行われている。

    (2) 経緯・目的
     UNDPは、国連システムにおける技術協力活動を推進する中核的資金供与機関として、65年の第20回国連総会決議2029に基づき、それまでの「国連特別基金」及び「拡大技術援助計画」が統合されて設立された。
     その任務は、国連憲章第55条の理念に基づき10年毎に国連総会で採択される「国連開発の10年」(現在は1991-2000年の第4次)の開発戦略を指針にして、開発途上国及び市場経済移行国における持続可能な開発の実現を多角的に援助することにある。
     また、UNDPは技術協力活動のほかに、国連総会が設立した「国連資本開発基金 (UNCDF)」「国連女性開発基金(UNIFEM)」等の技術協力基金や「国連ボランティア計画(UNV)」の管理も行っている。

  2. 事業の仕組み

    (1) 概要
     UNDPは、開発途上国、市場経済移行国または地域を対象として技術協力の国別計画、地域計画、及びグローバルな計画を策定し、同計画に基づき受益国等からの要請に応じて専門家派遣、技術者の研修、機材供与のための資金を供給している。
     その活動資金は、各国からの任意拠出によって賄われている。99年の拠出金総合計(コア・ファンド、トラスト・ファンド等)は、1,976.5百万ドルであり、そのうちコア・ファンドは681.4百万ドルである。

    (2) 審査・決定プロセス
     UNDPでは、各国からの拠出金見込み額を基に、3年毎に向こう3年間の国別援助割当額を定め、これをもとに各国にあるUNDP常駐事務所が中心になって、援助の重点分野や主要プロジェクトの概要を示した国別協力フレームワークを策定する。その上で、被援助国政府および他のドナー国等との協議を踏まえて具体的なプロジェクトを確定している。

    (3) 決定後の案件実施の仕組み
     UNDP自身は、技術協力のための資金供与機関であるので、実際に事業を実施するのは、国連の各専門機関等が当たっている。近年途上国自身の自助努力を促すとの観点から、これら専門機関に代わって途上国自らがUNDPの指導を得て事業を実施する割合が増えてきている。

  3. 最近の活動内容

    (1) 概要
     1994年以降、「持続可能な人間開発」(Sustainable Human Development) を基本原則に掲げ、この原則の下、貧困撲滅、女性の地位向上、グッドガバナンスの確立、環境保全及び紛争後等特別な状況下での開発の5分野に重点を置いて援助活動を行っており、その中でも特に貧困撲滅を最重要課題としている。
     また、国連環境開発会議のフォローアップとして、途上国の環境問題への対応能力を涵養するために、「キャパシティ21計画信託基金」を通じ、この分野での活動強化を図っているほか、国連開発グループの中核として、近年は地雷除去活動等、紛争後の開発問題にも積極的に取り組んでいる。

    (2) 地域別実績
     UNDPは、上記の通り貧困撲滅を最重要課題としており、援助総額の88%を一人当たり国民所得が900ドル以下の途上国、特にアフリカ諸国支援に割り当てている。
     98年には日本と共催で第2回アフリカ開発会議(TICADII)を開催した。

    (金額単位:百万ドル)
     97年98年
    件数金額件数金額
    アジア・太平洋 1,525241.1 1,6221,031.9
    アラブ 58797.5 62174.6
    アフリカ 2,178307.8 1,806281.7
    中南米 1,973777.9 1,854209.5
    欧州・旧ソ連 76957.4 890113.3
    その他 44241.4 43548.5
    7,4741,523.1 7,2281,759.5

    (3) 主要な事業
     UNDPの分野別の予算は、97年から2000年までの予算合計額で以下の通り。

    分野別予算  (単位:百万ドル)
    分 野1997-2000
    環境資源と食料保障1,473(17.1%)
    貧困撲滅2,130(24.7%)
    持続可能な公共資源管理3,629(42.2%)
    女性と開発111(1.3%)
    その他1,266(14.7%)
    合 計8,609(100.0%)

  4. 我が国との関係

    (1) 意思決定機構における我が国の位置づけ
     我が国はUNDPの広範なネットワークとその専門的知識・経験に基づく中立的援助を評価するとの立場から、積極的な協力を行うとともに、UNDPの設立以来執行理事会のメンバーとして政策立案に参画してきた。我が国の拠出額(コア・ファンド)は常に上位にあり、最高意思決定機関である執行理事会においても、主要ドナー国である我が国の発言は理事会決議に大きく反映されている。

    (2) 邦人職員
     UNDPの専門職以上の邦人職員は、44名(特別基金や計画を含め、全体の7.3%。2000年1月現在)である。幹部職員では渡辺英美開発政策局長が活躍している。

    (3) 我が国の財政負担(暦年ベース)
     我が国からは積極的に資金援助を行っている。UNDPのコア・ファンドへの拠出は98年度は7,990万ドル、99年度は8,000万ドル、全コア・ファンドに占める98年の我が国の拠出の割合は10.7%、99年は同11.7%である(98年は米国、デンマーク、オランダに次ぎ第4位、99年は米国に次ぎ第2位)。

    (4) 主な使途を明示した特定信託基金への拠出、活用状況
     1986年、我が国は途上国の人的資源開発を目的として、UNDPに「人造り基金」(Human Resources Development Fund) をもうけ、平成11年度までに累計4,619万ドルを拠出しているほか、平成8年度からは、南南協力を推進するために、使途を特に南南協力に限る基金を追加拠出している。11年度においては、人造り基金に総額1,019万ドル(内550万ドルが南南協力)を拠出し、我が国及び MIGA と協力してマレイシアにて、アジアとアフリカの民間企業の交流を深めるためのアフリカ・アジア・ビジネス・フォーラムを開催したり、IMFと共同してナイジェリアの金融部門に対する人材育成と組織強化を図る事業を開始した。カンボディアでは、近隣ASEAN専門家と我が国専門家及びJOCVの連携により、いわゆる三角協力として、帰還難民の再定住と総合農村開発事業を実施している。(人造り基金」の使途のうち、主なものを次頁に示す。)
     また、中東和平プロセスを支援するために、西岸・ガザ地区の民政の安定と開発に資することを目的に設立された日本・パレスチナ開発基金に平成5年以降累計で1億ドル以上(平成11年は約785万ドル)を拠出してきている。

    (5) 我が国ODAとの協調実績
     限られた援助資金を効果的かつ効率的に執行するとの観点から我が国はUNDPとの援助協調にも積極的に取り組んでおり、人造り基金については、UNDPという国際機関を通じた援助であっても、我が国の二国間援助とうまく組み合わせることにより、相互の補完性及び援助の効率を高め、併せて日本あるいは日本人の顔がよく見えるような形で援助が行われるよう努めている。
     大洋州のキリバス共和国に我が国は二国間援助で太陽光発電システムを供与したが、その管理運営の技術訓練はUNDPが人造り基金を使って実施したほか、パキスタンでは、ラワルピンディ市のゴミ処理改善計画に対し、我が国が無償資金協力援助でゴミ処理車やゴミ収集用ダンプを供与し、UNDP側が同地域の衛生環境改善に向けて組織・制度作りを支援した。フィリピンでは現在、固形廃棄物処理事業や女性の職業訓練の分野でJICAの技術協力とUNDPとの連携事業が進みつつある。

    11-12年度実施の主な人造り基金事業
    プロジェクト名拠出額
    (米ドル)
    プロジェクトの概要
    カンボディア三角協力1,000,000帰還難民の再定住支援を目的とした総合農村開発。JICA専門家、JOCV、ASEAN専門家の連携事業。
    西アフリカ稲作支援257,000WARDAとIRRIの共同研究。アジア稲とアフリカ稲の後輩による新陸稲種の開発。
    アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム1,680,000アジア・アフリカ間の直接投資促進と貿易の拡大を図ることを目的として、両地域の企業関係者を一堂に集め、存在的ビジネスチャンス発掘のための情報交換の場。TICADII事業として99年秋にマレイシアにて開催。
    新興民主主義フォーラム250,000イエメン政府と米NGOのNDIとの共催による新興民主主義国家のための民主化移行に伴う諸問題の解決策を学ぶための会議。
    フィリピン精密器具金型センター300,000金属加工業の育成を図るため、中小の精密器具及び金型製造業者の技術労働者の技術訓練。NDEPがカリキュラムを策定。JICAが機材供与。
    ナイジェリア技術支援500,000ナイジェリア金融部門に対する人材育成と組織強化。IMFとの共同事業。
    TICAD・スペシャルユニット550,000UNDP内にTICADIIフォローアップのためのユニットを設置し、我が国を含む共催者と緊密に連携しつつ、種々の事業を実施する。
    アフリカ開発金融研修330,000マレイシア開発銀行において、アフリカ諸国の開発金融従事者を招き、信用審査とプロジェクト評価の手法を研修させる。フェーズ2。
    水産養殖技術移転299,000ICAKMの協力を得て、水産養殖技術をエジプト、ガーナ、象牙海岸、マラウィへ移転。

  5. より詳細な情報

    (1) 書籍等
  6. 人間開発報告書(国際協力出版会発行)
    UNDPが毎年発表する「HumanDevelopmentReport」の日本語版。大手書店等で販売(3,800円)。
  7. (2) ホームページ
     http://www.undp.org

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