フォローアップ事業の概要と実績


  1. 事業の開始時期・経緯・目的

    (1) 開始時期
     平成10年度に開始。

    (2) 経緯及び目的
     技術協力及び無償資金協力の終了案件のハード面に対する支援(供与済施設・機材の応急対策工事・修理・スペアパーツ供与等)は、従来技術協力機材供与事業、プロジェクト方式技術協力事業、無償資金協力事業各々において、個別に実施されてきた。しかしながら平成7年4月の「経済協力(政府開発援助)に関する行政監察結果報告書」の中でフォローアップ協力の強化が勧告され、また平成9年6月にとりまとめられた「21世紀に向けてのODA改革懇談会」中間報告においてもフォローアップの強化の重要性が提言され、特に案件実施後の事業の自立的発展のために援助形態の枠にとらわれない効果的な方法をとるべき、との指摘がなされた。
     このため、平成10年度にフォローアップ事業を新設し、技術協力及び無償資金協力(一般プロジェクト無償、水産無償)により供与された施設及び機材等のハード面に対するフォローアップを統一的に実施することとした。さらに、従来技術協力機材供与事業により実施されていた帰国研修員に対する機材供与も、本事業に引き継がれ実施されることになった(技術協力機材供与事業は平成9年度を最後に廃止され、個別専門家に対する機材供与は技術専門家派遣事業に、WID(WomenInDevelopment:女性の社会参加)関連特別機材は青年海外協力隊派遣事業に引き継がれた)。

  2. 事業の仕組み

    (1) 概要
     本事業では、終了案件で供与された施設及び機材の中で、相手国側が自助努力により維持管理しつつも、それのみでは経費負担を含む迅速な対応が困難であり、かつ我が国からの追加的な支援により当初目標としていた援助効果の持続的な発現と相手国実施機関の自立発展が十分見込まれる案件に対し、現状回復を目的として以下の業務を実施する。

    (イ) フォローアップ調査
     施設や機材の破損・故障等の対策を検討するため、本邦から派遣した調査団ないしJICA在外事務所が契約した現地コンサルタントが実施する調査。
    (ロ) 施設等応急対策
     施設の台風・洪水・地震等の自然災害による破損等に対する、本邦技術者ないし現地業者による現状回復のための工事。
    (ハ) 資機材購送
     破損した機材の修理部品ないしスペアパーツの供与。
    (ニ) 修理班派遣
     破損した機材の修理(据え付けを含む)のための技術者の派遣。
    (ホ) 帰国研修ップ機材
     帰国研修員への協力効果を維持発展させるために必要な資機材の供与。
    (ヘ) 技術情報等の供与
     協力終了案件に対する技術文献、視聴覚情報等の提供。

  3. 最近の活動内容

    (1) 概要
     平成11年度は、28か国36件についての調査、15か国20件の施設等応急対策、35か国74件の資機材供与、18か国26件の修理班派遣を実施した。

    (2) 地域別実績(平成11年度)
     地域別実績は次表の通り。

    平成11年度フォローアップ事業地域別実績

     調査件数施設等応急対策件数資機材供与件数修理班派遣件数
    アジア1772416
    大洋州3263
    中南米56153
    中近東2262
    アフリカ83182
    ヨーロッパ1050
    36207426

    (3) 主要な具体的事業・案件名及び内容
     中国の上海第六人民病院は無償資金協力(平成元年度)により全国的にも最新鋭の医療機材を整備し、地域の中核病院として医療サービスの近代化と向上に大いに貢献し、発展した。同病院は中国の基幹病院の一つとして医療機材の維持管理についても毎年相応額の維持管理費を予算立てして機材の保守や消耗品の調達など自助努力をしてきた。然しながら経年と過剰使用による機器の故障に対し、全ての高額医療機械の修理は不可能であることが判明し、我が方のフォローアップ協力を要請した。
     これに対し我が国政府は、本邦からフォローアップ調査団を派遣し、機器の活用状況及び不具合の状況を調査し、維持管理体制のレビューを行い、今後も継続して機材が稼動する為に必要なスペアーパーツの特定を行った。今後これらの部品の供与と修理技術者の派遣により、故障機器の修理と改めて維持管理の為の指導を行う。
     ぺルーでは国立工科大学内に設置した地震防災センターに対し、我が国は86年より5年間に渡り、耐震工学、土質工学等分野の技術開発及び研究、普及の為、プロジェクト方式技術協力を実施した。この期間中、万能試験機、圧縮試験機、コントローラー等の機材を供与し、有効活用されてきたが、機材供与後10年以上が経過し、部分的不具合や故障が発生しており、センターの機能活性化について障害となった。
     故障機材の殆どは現地では対応不可能な高度の技術を要する機材であり、本邦の専門家による調査が不可欠であることが確認された。
     したがって我が国政府は先ずペルーに対し第一次修理調査団を派遣し、修理部品の特定及び修理方法の検討を行った。
     右調査を受け、保守部品の購入供与、更に修理技術者の現地派遣を行い、修理と維持管理に係る指導を行い、元の供与機材の機能回復をすることとなった。


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