V.平成12年度政府開発援助(ODA)予算のポイント
平成12年度ODA予算は、我が国がサミット議長国であり、また、経済危機を脱しつつあるアジア諸国に前向きのメッセージを出す必要等がある一方で、引き続き厳しい経済財政事情の下、円高の進展を適切に織り込みつつ、ODAの一層の効率化・重点化を進めていく中で真に必要な額を計上した結果、一般会計予算は対前年度比0.2%減の10,466億円となっている。
平成12年度ODA予算の主なポイントは以下の通りである。1.評価拡充等の実施体制強化
- (1)評価制度の拡充
より一層効果的・効率的な援助を実現し、ODA事業の透明性向上と国民への説明責任の遂行を図るため、事前から事後までの一貫した評価プロセスの導入と評価結果の積極的かつ迅速な公開を推進する。また、評価の客観性を一層高めるため、第三者評価の拡充、定量的手法の積極的活用を図っていく。
(2)情報公開の促進等
ODA関連情報の国民への提供を拡充するとの観点から、民間モニターの大幅増員(47名→104名)等、情報公開関係費の拡充に努める(3.6億円→4.3億円)。併せて、ODA関連情報の一元的管理により情報の総合及び分析等を図り、一層効果的な援助の実施を推進していくため、経済協力情報管理システム開発の拡充を行う(0.6億円→1.4億円)。
2.顔の見える援助の拡充
我が国の顔が見える援助を推進すべく、人材派遣、留学生対策、NGO支援、人材育成等の拡充に努めることとする。
- (1)シニア海外ボランティア新規派遣の大幅拡充
幅広い技術と経験、知識を有する中高年層に対し、国際協力の分野で新たに活躍の場を提供し、我が国の顔の見える援助を推進するとの観点から、「シニア海外ボランティア」の新規派遣数を昨年度の100名から400名まで大幅に増員する(6.3億円→27.5億円)。
(2)留学生対策の強化
留学生支援は途上国の国造りの基盤である人材育成の柱であることから、国費留学生受入れの推進、私費留学生学習奨励費の拡充を図る(285億円→307億円)。
(3)NGO支援の強化
国民参加型援助を推進するとの観点から、NGOによる活動、及びその活動基盤整備を支援するため、下記を重視して取り組む。
(a) 紛争などによる難民・避難民や自然災害が発生した際に活動する本邦NGOの緊急人道支援活動の迅速な立ち上げを支援すべく「NGO緊急活動支援無償(5億円)」を新設する。 (b) JICA実施事業の本邦NGO等に対する委託事業を拡充する(1.9億円→6.8億円)。 (c) NGOの活動基盤整備のためNGO相談員の大幅増員等、NGO支援強化費を拡充する(1.1.億円→2.5億円)。 (d) 草の根無償を拡充する(70億円→85億円)とともにソフト支援無償を新設する(80億円)。
(4) 開発援助人材の育成強化を図るため、国際開発高等教育機構(FASID)が国立政策研究大学院大学と協力して大学院レベルの共同講座を創設する(2.1億円)。 (5) 我が国と被援助国との相互理解の増進にも資する日本語教育支援の強化のため、青年海外協力隊の日本語隊員を拡充する(70名→100名)。 3.貧困・環境・対人地雷等地球規模問題等への対応
サミット議長国として、地球規模問題等に対応するためにODAを有効に活用して行くとの観点から以下の取り組みを実施している。
(1) アジア等の貧困対策・社会開発のためADB、世銀に対し新たに100億円ずつを拠出する。 (2) 環境・社会開発セクター・プログラム無償を拡充する(90億円→120億円)とともに、地球温暖化対策に資するクリーン・エネルギー無償を新設する(18億円)。また、植林無償についてもこれを拡充する(20億円→24億円)。 (3) 人間の安全保障の観点から脅威である対人地雷の犠牲者支援、除去活動への取り組みを強化すべく対人地雷無償を拡充(22億円→27億円)する。また、従来よりの子どもの健康無償を初等教育や母親の役割までも視野に入れ、子どもの福祉無償として拡充(52億円→60億円)する。 (注)【括弧内は11年度予算額→12年度予算額。「→」なしは新規予算】
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