中国(国別援助方針)


  1. 基本方針

    (1)我が国の援助対象国としての位置付け

    (イ)中国は、我が国と地理的に隣接し、政治的、経済的、歴史的、文化的に密接な関係にあること、
    (ロ)我が国と中国との間の安定した友好関係の維持・発展が、アジア太平洋地域ひいては世界の平和と繁栄につながること、
    (ハ)経済関係において、二国間政府ベースの経済協力、民間の投資・貿易、資源開発協力等を含む幅広い分野にわたってその深さと広がりを増して発展してきていること、
    (ニ)中国は、経済の近代化を最優先課題として位置付け、対外開放政策及び経済改革を進めていること、
    (ホ)広大な国土面積と多数の人口を有し、一人当たりGNPが750ドル(98年)と依然低く、援助需要が高いこと、

    等を踏まえ、中国の改革・開放政策に基づく近代化努力に対し、できる限りの協力を行うとの方針の下、中国の自主的な経済開発、民生向上に向けた努力に対し支援を行っている。なお、中国は我が国の二国間援助実績(99年までの支出純額累計)で第2位の受け取り国である。

    (2)我が国の援助の重点分野

     我が国は、中国における開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究並びに92年3月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等による中国側との政策対話を踏まえ、以下を援助の重点項目としている。

    (イ)重点地域

     有償資金協力を中心に、経済インフラ整備に資する協力を行うとともに、中国のバランスのとれた発展を支援するとの観点から、相対的に開発余地の大きい内陸地域にこれまで以上に配慮し、人材の育成、生態系の保護、農業・農村開発、及び豊富な資源を活用した開発への協力を進める。また、無償資金協力及び技術協力については内陸部を重視することとし、主として貧困地域に対する基礎生活分野の充足のための協力を実施する。

    (ロ)重点分野

    (a)環境

     我が国の経験と技術を活かして、省エネルギー、廃棄物リサイクル、煤煙処理、排煙脱硫等の大気汚染防止、下水道等の水質汚濁防止対策について、中国側のニーズを踏まえつつ援助を進める。また、無償資金協力を通じ96年に設立された日中友好環境保全センターを核に中国側の環境対処能力向上に資する協力を展開するとともに、97年の日中首脳会談において発表された「21世紀に向けた日中環境協力」構想の具体化を図る。

    (b)農業

     農業生産、特に食糧の安定的供給の確保へ向けた一層の農業生産性の向上を図ることが必要である。灌漑・排水施設の建設、機材の供与等農業基盤整備への援助、肥料、農業用資材供与、試験研究機関の充実を通じた農業技術のレベルアップ及び農村への技術の普及への援助等を実施する。

    (c)経済インフラ

     中国の経済発展のボトルネックとなっている運輸、通信、電力等の経済インフラの整備の遅れの解消に向け援助を行う。

    (1)運輸・交通:施設建設による輸送能力の増大、輸送の効率化のための維持・管理技術の向上に資する援助を行う。
    (2)エネルギー:供給不足に対応するための発電所建設に対する援助を行う。その際に、十分な大気汚染防止対策を図る。また、沿海部と内陸部の間の需給バランス是正のための送電網整備についても援助を行う。
    (3)通信:通信基盤の整備に資する協力、維持・管理面を考慮した人材養成への援助を行う。

    (d)保健・医療

     農村地域等では、依然として保健・医療水準の底上げが必要である。地域格差是正の観点から、農村地域等におけるプライマリー・ヘルス・ケアや予防保健事業への波及を念頭に置いた地域保健・医療水準の向上に資する協力を行う。

    (e)人造り

     教育用機材の供与や学校施設の建設への協力等による基礎教育の普及・充実を図る。機材供与、研修員受入、専門家派遣等による中堅技術者・管理者の養成等に資する人造りへの協力を行う。

    (3)留意点

    • 98年11月の江沢民国家主席訪日時に発表された「21世紀に向けた環境協力に関する共同発表」に基づく協力を着実に実施する。
    • 99年7月には、小渕総理(当時)は民間団体等による日中間の民間植林緑化協力を促進するための基金設置を提案し、これを受けて同年11月、「日中民間緑化協力委員会」が設置された。
    • 農業分野に関しては、98年11月の江沢民主席訪日時に発表された「21世紀に向けた協力強化に関する共同プレス発表」に掲げられた内容を踏まえ、今後、特に持続可能な農業技術分野に関する協力を強化していく。
    • 96年度からの第4次円借款のうち、「後2年(99、2000年度)」について、98年11月の江沢民国家主席訪日時に、28案件、総額3,900億円を目途として供与することで中国側と合意されており、「前3年24(96、98年度)の重点事項を継承し、環境分野、農業分野、内陸部の案件を重視していく。また、第4次円借款終了後は円借款供与方式を従来のラウンド方式(複数年度総枠方式)からローリング方式のロングリスト(複数年度に渡る円借款の採択候補案件の一覧)に基づく年次供与方式に移行することとしている。
    • 2000年5月の日中外相会談において、我が国として今後の対中経済協力のあり方を検討していく方針であることを伝達した。

    (4)ODA大綱の運用状況

     経済の改革・開放路線を積極的に進め、「社会主義市場経済」を確立するとの方針が憲法に明記され、99年3月の憲法改正では、個人経済、私有経済等の公有制以外の所有形態も社会主義市場経済の重要な一部分とする規定が加えられる等、市場指向型経済の導入との観点からは好ましい動きが継続している。人権分野では、国際人権A規約及び同B規約の署名、「人権白書」の発表等前向きな動きが見られるが、民主活動への取り締まり強化の動きもあり、日中人権対話などの場において我が方より前向きな動きを慫慂している。我が国は、95年8月、中国の核実験停止が明らかにならない限り対中無償資金協力を原則凍結するとの措置をとったが、96年7月より中国が核実験のモラトリアムを実施し、CTBT(包括的核実験禁止条約)に署名したこと等を踏まえ、97年3月より無償資金協力を再開している。なお、軍事費については、2000年5月の日中外相会談、同年6月の日中安保対話等において、国防費の増加に対し我が国内に懸念の声が強く存在することを伝達している。

  2. 中国経済の現状と課題

    (1)主要経済指標

    一人当たりGNP (98年)とGDP成長率
    (90-98年平均)
    実質GDP成長率
    750ドル、11.1%
    (世銀資料)
    94年12.6%、95年10.5%、96年9.6%、97年8.8%、98年7.8%、99年7.1%
    (IMF資料)

    (2)現状

     社会主義市場経済」体制の確立を目指し、市場経済化、対外開放政策を推進中である。92年頃から経済成長が過熱化し、引き締め政策が取られたが、98年から内外の経済状況に応じて積極財政・金融政策等による景気下支えに転じた。総体的には、94年半ば頃から安定的な成長を継続しているものの、消費者物価上昇率が98、99年と連続してマイナスとなるなど、デフレ傾向が顕在化した。

    (3)課題

    • 金融改革、大規模不良債権の処理、国有企業改革の促進、失業者・余剰人員対策及び社会保障制度の整備
    • 経済発展の基盤となる経済インフラや農業基盤の整備
    • 大気汚染をはじめとする公害対策や自然環境保全
    • 都市と農村、地域間格差の是正
    • 初等教育、技術者・管理者等の人的資源開発
    • 市場経済に対応した法制度の整備と運用面での統一性・透明性の確保

  3. 開発計画

     国民経済・社会発展のための第9次五か年計画(96年~2000年)及び2010年までの長期計画

    (目標)

    • 社会主義市場経済体制の確立
    • 2000年には一人当たりGNPを1980年の4倍、2010年にはGNPを2000年の2倍にする

    (主要事項)

    • 量より質へ」経済成長方式を転換
    • マクロコントロールの強化と中央政府主導により「産業政策」を貫徹
    • 農業問題が重要な課題
    • 国有企業改革
    • 人口・就業が大きな圧カ
    • 地域格差の是正
    • 対外経済での輸出入と国際収支のバランスを強調
     なお、現在第10次五か年計画(2001~05年)の策定が進められている。同計画では、沿岸部と内陸部の格差是正を図るための「西部大開発」戦略が盛り込まれ、当面、経済インフラの整備、生態系の保護、産業構造の調整、科学技術と教育の発展等が重点となるものとみられる。

  4. 援助実績

    (1)我が国の実績(支出純額、単位:百万ドル)

    有償無償技協合計供与先順位
    99年(暦年)812663491,2262位
    99年(暦年)までの累計10,7128222,94514,4792位

    (2)DAC諸国からの実績(支出純額、98年(暦年)、単位:百万ドル)

    二国間総額1位2位3位
    1,732日本 1,158ドイツ 321英国 55

    (3)国際機関のODA実績(支出純額、98年(暦年)、単位:百万ドル)

    国際機関総額1位2位3位
    640IDA 554EC 22UNICEF 18


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