草の根無償の概要と実績
- 事業の開始の時期・経緯・目的
(1) 開始時期
平成元年度、「小規模無償資金協力」として創設。平成7年度より「草の根無償資金協力」と改称。(2) 経緯・目的
開発途上国の多様なニーズに的確かつ迅速に対応する必要性、主要援助国が小規模な無償援助の実施により大きな外交成果を挙げていること、ODA行政監察において小規模無償制度の導入につき勧告されたこと、等から創設された。
- 事業の仕組み
(1) 概要
草の根無償資金協力は、開発途上国の地方公共団体、医療機関及び途上国において活動しているNGO(非政府団体)等が実施する比較的小規模なプロジェクトに対し、当該国の諸事情に精通している我が国の在外公館が中心となって資金協力を行うもの。一件当たりの援助の規模は通常1千万円程度までと規模に制限はあるが、草の根レベルに直接裨益するきめ細かい援助として、各方面から高い評価を得ている。
草の根無償資金協力の主な重点分野は、(イ)保健・医療、(ロ)基礎教育、(ハ)民生・環境改善、(ニ)貧困救済・所得向上等である。具体的な資金協力の対象品目としては、施設建設、資機材購入の他、会議・セミナー開催経費、機材供与に伴う専門家雇用費等のソフト面における協力も積極的に実施しているが、被供与団体自身の運営・管理費(事務所経費、人件費等)については支援の対象とはならない。(2) 審査・決定プロセス
我が国の在外公館に対し援助の要請が行われた後、在外公館が要請団体の適格性、要請プロジェクトの内容、規模、援助効果、実施した場合の外交的な効果などについて検討を行い、実施候補案件を選定する。その後、原則として本省にて案件実施を承認する。(3) 決定後の案件実施の仕組み
案件の実施が決まると、我が国在外公館と当該案件の要請団体との間で、資金供与に関する契約が締結される。この契約においては、プロジェクトの名称・目的・内容、要請団体の名称、供与限度額、使途、及び供与された資金が適正に使用されるべきことを定めた適正使用条項等が定められる。
契約の締結を終えた団体(被供与団体)は、業者と物資・役務の調達に必要な契約を結ぶ。在外公館は契約(または見積書)の内容をチェックし、在外公館と被供与団体との間の契約にある供与限度額の範囲内で資金を供与する。
プロジェクト実施後は、在外公館は、被供与団体より当該プロジェクトの実施状況に関する報告を受け、またプロジェクト・サイトの現地確認などを行う。
- 最近の活動内容
(1) 概要
平成10年度の実績は実施国数93ヶ国・1地域、実施件数1,064件、供与限度額総額57億円であった。被供与団体の内訳は、NGO(特に現地NGO)に対する供与が最も多く、それに続いて地方公共団体、教育・研究機関に対する供与が大きな割合を占めている。(2) 地域別実績
平成9年度と同様、平成10年度は、アジアにおける協力が、件数、金額ともに最も多く、それに続いてアフリカ、中南米が続いている。なお、平成10年度には、新たにアフガニスタン、ナイジェリア、セント・ヴィンセント、トリニダット・トバゴ、ブラジル、パラオ、新ユーゴー、ルーマニアの8ヶ国が草の根無償資金協力対象国に加わった。
(地域別実績)
(単位:億円)
平成9年度 平成10年度 件数 金額 件数 金額 アジア・中央アジア 322 17.8 396 24.4 アフリカ 238 11.7 252 12.2 中近東 86 4.3 86 4.2 中南米 213 11.1 223 11.1 太洋州 85 3.9 79 3.8 東欧 20 1.1 28 1.3 計 964 50.0 1,064 57.0 (3) 主要な具体的事業・案件及び内容
小学校建設など初等教育を中心とした「教育・研究」分野の案件が、平成9年度に引き続いて最も大きくなっている。また、「保健・医療」分野についても、人口・エイズ案件等を重視していることもあり、「教育・研究」分野に次いで大きな割合を占めている。その他飲料水供給などの「民生・環境」分野の案件も多く、基礎生活分野(BHN)案件が大部分を占めている。
教育・研究分野の案件の例としては、フィリピンにおける「ダラグラグ小学校拡充計画」(約320万円、被供与団体:ダラグダグ小学校)がある。この案件では、各種施設が老朽化した右小学校に対し、教育施設拡充の為の講堂の建設と、トイレの建設及び給水用井戸の敷設を援助した。
保健・医療分野の案件の例としては、「母子保健・家族計画IEC活動強化(対フィリピン」(約170万円、被供与団体:コミュニティ健康増進協会)がある。この案件では、右NGOがミンダナオ島ジェネラル・サントス市において実施する家族計画の啓蒙普及活動、エイズ予防を含む母子保健活動及び家族計画保健情報センターの拡充を支援するためのIEC関連機材を供与した。
民生・環境分野の案件の例としては、「甘粛省蘭州市緑化事業支援計画(対中国)」(約960万円、被供与団体:蘭州市城関区農林局)がある。本案件は乾燥地域である当地近郊において緑化及び土壌流出防止のための緑化モデル都市の建設を支援するものである。
(分野別実績)
(単位:億円)
平成9年度 平成10年度 件数 金額 件数 金額 教育・研究 417 21.0 425 22.3 保健・医療 238 13.0 261 15.8 民生・環境 202 10.0 272 13.8 農林・水産 74 3.8 78 3.2 通信・運輸 23 1.5 22 1.4 その他 10 0.6 6 0.5 計 964 50.0 1,064 57.0
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