ノン・プロジェクト無償(経済構造改善努力支援無償)の概要と実績
- 事業の開始の時期・経緯・目的
(1) 開始時期
昭和62年度、「経済構造改善努力支援無償資金協力」として創設。施設建設や災害救援活動等の事業(プロジェクト)実施のための資金の供与ではなく、物資を輸入するための外貨支援(下記(2)参照)を内容とすることから、「ノン・プロジェクト無償資金協力」と通称される。(2) 経緯・目的
世銀またはIMFの指導の下に経済構造調整計画を実施する開発途上国に対し、右計画の実施のために必要となる物資の輸入代金を支援するために(外貨支援)創設された。
ア. 第一次経済構造改善努力支援無償援助(87年ヴェネチア・サミットで表明)
アフリカ諸国等の深刻な経済困難の緩和のためには、個々の開発プロジェクトに対する支援のみならず、開発途上国の経済体制ないしその運営政策そのものの欠陥や非効率性の改善を支援していくことが必要との強い議論があり、世銀・IMFは途上国の経済構造改善努力を支援するための融資を活発化。我が国は87年5月の緊急経済対策(同年6月のヴェネチア・サミットで表明)において、「アフリカ諸国等後発開発途上国に対しては、特別の配慮が必要となってきていることを踏まえ、3カ年で5億ドル程度のノン・プロジェクト無償援助の実施」を決定し、87年度から89年度にかけて実施。イ. 第二次経済構造改善努力支援無償援助(89年アルシュ・サミットで表明)
アフリカ諸国を中心とする低開発国は、依然として開発資金不足や累積債務問題等の深刻な経済困難に直面しており、これら諸国の経済構造改善の努力を引き続き支援するため、3年間で新たに6億ドル程度の本件援助を継続・拡充することとし、90年度から92年度にかけて実施した。ウ. 第三次経済構造改善努力支援無償援助(91年ミュンヘン・サミットで表明)
第一次、第二次の成果、被援助国及び主要援助国などからの高い評価、ニーズの存在を踏まえ、93年度から3年間で、6.5~7億ドル程度の同趣旨の援助を実施した。エ. 96年度以降は、3年ごとの表明を行わず、各年度においてノンプロ無償を予算化している。
- 事業の仕組み
(1) 概要
世銀またはIMFの指導の下に経済構造調整計画を実施する開発途上国より我が国の在外公館に要請が行われ、この要請に基づいてノン・プロジェクト無償資金協力を実施すべきか否か検討した上で、閣議を経て決定される。閣議決定後、速やかに両国が交換公文(E/N)を取り交わし、援助資金により購入する物資を選定の後(下記(3)参照)同資金が被援助国に支払われる。(2) 審査・決定プロセス
各途上国より我が国に対し行われる援助要請を踏まえ、要請国が世銀またはIMFの経済構造調整を実施しているかどうか、当該国の経済状況、政治状況、実施した場合の外交上の効果などについて検討を行い、実施対象国を選定、閣議で決定される。(3) 決定後の案件実施の仕組み
閣議決定後速やかに、我が国と被援助国(通常は我が国大使と被援助国外務大臣)の間で、資金供与に関する交換公文(E/N)の署名が行われる。このE/Nには、援助の目的、供与金額、使途等が定められている。
E/N署名後、被援助国は我が国の指定する中立の第三者機関(「実施監理機関」と呼ばれる)と協議し、経済構造調整推進の上で必要となる調達物資を決定する。この決定を受けて、我が国より被援助国政府に対し援助資金が支払われる。
調達完了後、上記の実施監理機関は我が国に物資の調達が予定通り適正に行われたことを報告する。
なお、E/N上、被援助国政府は我が国が援助資金(外貨)を供与することにより生じる内貨の余剰分を内貨建て銀行口座に積み立てることとしている(見返り資金)。被援助国政府は、在外公館を通じて我が国と使途につき協議の上、見返り資金を経済・社会開発に資する事業や物資の調達等に使用することができる。
- 最近の活動内容
(1) 活動概要
平成10年度の実績は実施国数22カ国・5地域、実施件数22件、供与額総額282億円であった。(2) 地域別実績
平成9年度にはアフリカが件数金額ともに第1位であったが、平成10年度は、アジア経済危機の影響に苦しむアジア諸国(タイ、インドネシア、ヴィエトナム、ラオス)に対し特に重点的に供与した結果、アジアにおける協力が、金額においてアフリカを抜いて第1位となった。これに続いてアフリカ、中南米が続いている。
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