世界食糧計画(WFP:World Food Programme)の概要と実績


  1. 設立及び我が国の協力開始の時期・経緯・目的

    (1) 開始時期
     1963年発足。我が国は、WFP創設以来資金拠出を行ってきている。

    (2) 経緯及び目的
     WFPは、1961年の第16回国連総会決議1714(16)及び第11回FAO総会決議1/61により、多数国間食糧援助に関する国連及びFAOの共同計画として63年から65年の3カ年間を実験期間としてスタートし、国連及びFAO加盟国が自発的にこれに拠出することとした。
     実験期間のWFPは大きな成果をあげたと認められたので、65年末の国連総会及びFAO総会は右計画の延長を決定し、多数国間食糧援助が可能かつ望ましいと認められる限り誓約会議において定期的に計画を検討し、必要あらば計画の各終期において計画を拡大、縮小または終了するとの了解の下に右計画を不定期間延長する決議を採択した。
     WFPの目的は、食糧を開発途上国の経済社会開発及び緊急食糧援助に役立てるとであり、開発分野においては、労働の対価として食糧を配給するFood-for-Workを利用した農業インフラ整備や学校給食を通じた人的資源開発等を行っており、緊急援助分野においては、旱魃・洪水等の災害や紛争・内戦等による難民・被災民等に対して、緊急食糧援助を実施している。

  2. 事業の仕組み

    (1) 概要
     WFPは、(イ)農業・農村開発、(ロ)人的資源開発、(ハ)長期滞留民援助、(ニ)緊急援助の分野において食糧現物(穀物、乳製品、植物油等)を計画的に配布することにより援助を実施している。
     その活動資金は、各国からの任意拠出によって賄われており、97年の拠出総合計は1,312百万ドルとなっている。

    (2) 審査・決定プロセス
     WFPでは、(1)の(イ)~(ハ)の分野に関しては、事務局で作成した援助計画案を執行理事会通常会合において審査・承認を行なう。また、(1)の(ニ)の分野に関しては、迅速な対応を要するため、事務局長の承認(一定額以上の場合はFAOの事務局長の承認も要する)により援助計画が確定される。

    (3) 決定後の案件実施の仕組み
     WFPは、各援助計画に基づき、食糧の調達(ドナーから食糧の現物拠出を受ける場合もある)、海上輸送、陸上輸送を行い、現地政府・地方自治体、NGO等の協力を得て食糧の配布を行う。

  3. 最近の活動内容

    (1) 活動の概要
     97年のWFPの活動規模は約12億ドル(行財政経費を含む)であり、約270万トンの食糧を5,290万人の裨益者に援助している。
     発足以来、WFPの活動の中心は開発援助であったが、近年、難民・被災民等への緊急食糧援助(長期滞留民援助を含む)が増加し、90年以前にはWFP活動の中で平均3割強にすぎなかった緊急食糧援助活動が97年には全体の約7割に至っている。

    (2) 地域別実績

    地域1996年1997年
    サブサハラ・アフリカ 553 502
    東アジア・南アジア 157 302
    ラテンアメリカ・カリブ諸国 61 53
    北アフリカ・中東 130 134
    ヨーロッパ・CIS 16 77
    1,066 1,068

    (単位:百万ドル)

    (3) 分野別実績

    分野1996年1997年
    農業・農村開発 134 185
    人的資源開発 145 147
    長期滞留民援助 249 234
    緊急援助 489 469
    その他 49 33
    1,066 1,068

    (単位:百万ドル)

  4. 我が国との関係

    (1) 意志決定機構における我が国の位置づけ
     WFPの運営は、国連経済社会理事会及びFAOより選出された36カ国よりなる「執行理事会」の下で、援助計画案の審査・承認、WFP運営上の必要な措置の決定、事務局予算の承認が行われ、我が国はWFP発足以来理事国として参加している。

    (2) 邦人職員(邦人職員の全体にしめる割合及び幹部職員)
     WFPの専門職以上の邦人職員は、10名(全体の1.59%、98年1月末現在)であり、忍足賢朗人事部次長(D1ポスト)を筆頭に本部及び地域事務所において活躍している。また、JPOは2名(98年1月末現在)。

    (3) 財政負担(各国比較等、過去2年間暦年ベース)
     我が国は、WFPの活動を高く評価し拠出を行っており、その額は96年度が124百万ドル(全体の8.6%)、97年度が99百万ドル(全体の7.5%)となっており、米国、EUに次いで第三位のドナーとなっている。

    (4) 主な使途を明示した特定信託基金への拠出、活用状況
     WFPは、92年より緊急事態発生時の食糧援助の迅速な対応を行うために国際緊急食糧リザーブの中に緊急対応口座(IRA=Immediate Response Account)を設置した。IRAは、緊急食糧援助においてドナーからの拠出が集まるまでの間の時間的空白を埋めるためのものであり、年間30百万ドルの事業規模にて実施されている。
     我が国は、本口座に対し10年度には70万ドルを拠出した。

    (5) 我が国ODAとの協調実績
     現在、世界中には8億人以上の飢餓・栄養不良人口が存在しており、飢餓と食糧安全保障は地球的規模の問題となっている。とりわけ1996年の世界食糧サミットにおいては、2015年までに栄養不良人口を半減することが具体的目標として採択されたところである。
     こうした飢餓軽減のために、WFPは、開発途上国への食糧援助を一手に担う国際機関として、途上国の自立を目指した開発援助及び緊急の食糧援助活動を展開し、世界の飢餓軽減に大きく貢献している。
     WFPへの拠出については、その殆どが援助対象国や供与品目等を指定することもできるため、マルチの人道援助分野への援助でありながら我が国二国間外交政策の一環としても利用できるという性格を有する。


BACK / FORWARD / 目次