スリ・ランカ(国別援助方針)


  1. 基本方針

    (1)我が国の援助対象国としての位置付け

    (イ)スリ・ランカは我が国と伝統的に友好関係にあること、
    (ロ)1948年の独立以来、選挙による民主的な政権運営を行っている民主主義国家であり、構造調整を実施し経済改革のための自助努力を行っていること、
    (ハ)都市部を中心に開発が進みつつあるが、インフラ整備、地域開発など経済発展に向けた援助需要が大きいこと、

    等を踏まえ、援助を実施する。
     なお、スリ・ランカは我が国の二国間援助実績(98年までの支出純額累計)で第9位の受け取り国であり、また、スリ・ランカにとり我が国は第一位(97年)の援助国である。

    (2)我が国の援助の重点分野

     我が国は、スリ・ランカにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び91年3月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等によるスリ・ランカ側との政策対話を踏まえ、以下の分野を重点分野としている。

    (イ)経済基盤の整備・改善

     スリ・ランカの産業振興には、立ち遅れている運輸、電力、通信等の基盤整備が不可欠であり、コロンボ周辺地域を中心としつつも全国的なネットワーク形成を考慮して協力を進める。南部地域の開発については長期的視点に立ち計画的に進める。上下水道施設等の社会インフラの充実にも配慮していく。

    (ロ)鉱工業開発

     スリ・ランカの国内市場規模等に鑑みた場合、輸出促進型の製造業の育成が経済発展の鍵であり、雇用拡大にも繋がる鉱工業開発・貿易促進を支援していく。特に、発展可能性のある産業の開発計画及び工業団地開発等に関する協力、生産性及び品質の向上を図るための技術協力を推進する。また、失業の減少、女性の就業機会の増大に資する中小企業向けの援助も行う。

    (ハ)農林水産業開発

     スリ・ランカは、基本食料生産の自給量の向上、農村部における雇用機会及び所得の増大等を農業開発の重点項目としており、既存灌漑施設のリハビリを含む農業生産基盤の整備、アグロ・インダストリーの振興、市場の整備、農業研究、沿岸漁業の振興等への協力を推進していく。

    (ニ)人的資源開発

     社会・経済開発を担う人材の育成として、高等教育機関の量的・質的改善及び行政機関の中間管理層の育成は特に重要であり、教育環境整備に加え、研修員受入れ、専門家派遣事業等の一層の効果的活用に努めていく。

    (ホ)保健・医療体制の改善

     地域保健・医療体制が未だ不十分である実状等を踏まえ、州病院、地域基幹病院の整備、検査技術、医療機器整備技術の改善を進めるとともに、検査技師、看護婦等の訓練に関する協力を進める。また、経口感染症対策のためにも上下水道整備への協力も検討していく。
     上記5分野以外では、近年環境分野を重視しており、廃棄物処理、居住環境分野等での援助を行っている。

    (3)留意点

     95年12月に政府軍がLTTE(タミル・イーラム解放の虎)の勢力拠点であるジャフナ市を含む北部ジャフナ半島西部を制圧した後も、依然として北・東部地域では戦闘が継続する一方、コロンボ市内及び周辺地域ではLTTEによる政府要人、軍・警察関係施設及び重要経済施設をターゲットとした爆破テロ事件が発生している。これらのテロ事件は外国人を狙ったものではないものの、我が国専門家、協力隊員の派遣等に際しては、係るテロ事件に巻き込まれることのないよう安全対策に十分配慮する必要がある。また、96年5月に政府軍がジャフナ半島全域を管理下に置いたことを受け、政府はジャフナ半島地域の復興につきドナーに支援を呼びかけており、右に対しては治安上の問題を考慮しつつ可能な支援につき検討していく。

    (4)ODA大綱の運用状況

     政府による人権状況改善の努力がなされているが、北・東部の紛争地域における人権状況については、引き続き関心を持って注視していく。

  2. スリ・ランカ経済の現状と課題

    (1)主要経済指標

    一人当たりGNP (97年)と同成長率
    (90-97年平均)
    実質GDP成長率
    800ドル、4.0%
    (世銀資料)
    92年4.3%、93年6.9%、94年5.6%、95年5.5%、96年3.8%、97年6.4%
    (スリランカ中銀資料)

    (2)現状

     民営化を含む構造調整が進められ、スリ・ランカ電話会社の民間資本参入(97年8月にNTTが株式の35%を購入し経営に参画)や、エア・ランカ航空の株式一部売却(98年4月)が行われている。国内紛争関連の軍事支出増大に伴う財政赤字への影響、対外経済面の悪影響が懸念されていたが、97年には国営企業の民営化収益もあり、財政赤字は96年の対GDP比7.8%から97年は4.5%に減小したが、98年は9.2%に悪化している。GDP成長率は96年の3.8%から97年は6.4%に回復し、インフレ率も97年9.6%(96年15.9%)に低下するなど総じて経済動向は堅調に推移してきたが、98年はアジア経済危機等の影響を受け減速している。

    (3)課題

    • 北・東部問題の平和的解決による国内治安の安定、軍事費の削減
    • 財政赤字削減、国営企業の民営化等構造調整努力の継続
    • 外国からの民間投資拡大のための社会・経済インフラの整備を含む投資環境整備

  3. 開発計画

    公共投資5ヶ年計画(1997年~2001年)

    (主要目標値)

    • GDP成長率 年平均7.0%
    • インフレ率 96年15.9%から2001年5.5%へ
    • 財政赤字の対GDP比 96年8.9%から2001年4.0%へ
    • 失業率 96年11%から2001年5.0%へ

  4. 援助実績

    (1)我が国の実績(支出純額、単位:百万ドル)

    有償無償技協合計供与先順位
    98年(暦年)12152241988位
    98年(暦年)までの累計1,5059783412,8239位

    (2)DAC諸国からの実績(支出純額、97年(暦年)、単位:百万ドル)

    二国間総額1位2位3位
    228日本 135英国 17ノールウェー 16

    (3)国際機関のODA実績(支出純額、97年(暦年)、単位:百万ドル)

    国際機関総額1位2位3位
    119ADB 79IDA 68UNDP 8

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