ケニア(国別援助方針)


  1. 基本方針

    (1)我が国の援助対象国としての位置付け

    (イ)ケニアは、東アフリカでの地理的な重要性に加え、政治経済面での指導的役割を果たしていること、
    (ロ)独立以来自由経済体制をとり、特に93年以降構造調整等経済改革努力を積極的に行ってきていること、
    (ハ)92年末に複数政党制の下で自由かつ公正と評価し得る大統領・国会議員選挙を実施し、その後、紆余曲折はあるものの97年に第2回選挙を行う等民主化プロセスを進めていること、
    (ニ)我が国と緊密な友好関係があること、
    (ホ)一人当たりGNPが320ドルと低く、援助需要が大きいこと、
    (ヘ)グッドガバナンスや援助実施における透明性や責任の確保が重要な課題であること、

    等を踏まえ、援助を実施する。
     なお、ケニアは、我が国の二国間援助実績(97年までの支出純額累計)で第11位(アフリカ地域で第1位)の受け取り国であり、また、ケニアに対する援助国として日本は第1位(96年)である。

    (2)我が国の援助の重点分野

     我が国は、ケニアにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び94年1月に派遣した経済協力総合調査団等におけるケニア側との政策対話を踏まえ、以下の分野を援助の重点分野としている。

    (イ)人材の育成

     特に整備の遅れている基礎教育並びに経済成長を実現する観点から、輸出の振興・外貨獲得に資する農業・中小工業分野を中心とする生産力の向上のための職業訓練及び政策策定・実施に関する行政能力の向上への協力を実施する。

    (ロ)農業開発

     食糧自給及び輸出促進にとって重要な食糧生産の増大のため、農業生産基盤の改善、研究協力、農業技術の普及等の協力を実施する。

    (ハ)経済インフラ整備

     東アフリカ地域における交通網の拠点として、周辺諸国への波及効果も考えられるケニアの交通網に関し、リハビリテーションも含めた充実を支援する。産業活動に欠かせない電力供給の不足を近隣国からの輸入によりまかなっているところ、エネルギー資源の開発を支援するとともに、民間資本の誘致促進のため急務となっている通信網の重点的整備を支援する。

    (ニ)人口及びエイズ

     NGOとの連携に留意しつつ、ケニアにおいて持続的な経済開発の障害になっている高い人口増加率の抑制と密接な関係を有する保健医療サービス向上のため、特にサービスの低さが問題となっている地方レベルに焦点を当て協力する。また、深刻なエイズ問題に関する協力についても積極的に推進する。

    (ホ)環境保全

     持続的な開発のため、近年急激な減少が危惧されている野生生物の保護、人口の増加を背景として減少・劣化している森林の保護・造成、都市排水や産業廃水の増加に伴う湖沼や河川の汚染に対し水質保全等に資するため、上水道等に関する支援を行う。

    (3)留意点

    • 援助を効果的・効率的に活用していくとの観点から、援助の実施に当たり以下の3つの視点を重視している。

      (イ)我が国協力の裨益効果が一部の特権層にではなく、直接貧困層に届く援助
      (ロ)政治・経済改革を支援する援助
      (ハ)域内協力(南南協力)推進のための支援

    • 政治・経済改革の支援では、特に汚職問題、公共投資の非効率化等の経済ガバナンスの改善が経済発展に不可欠であるところ、他ドナーと協調しつつ、我が国としてケニア政府の行政能力の向上等同分野に対する援助を今後一層推進する。
    • 97年10月に発生した大雨とそれに伴う洪水被害に対する支援を検討する。

    (4)ODA大綱の運用状況

    • ケニアは、民主化や経済改革の遅れ及び汚職のため、91年11月以来、我が国を含む各ドナーからの国際収支支援型援助が停止されていたが、その後民主化の進展、経済改革努力等が見られたため、同援助が再開された(93年5月)。97年末に実施された大統領選挙及び総選挙の際にも若干の混乱は見られたものの、全体として平穏理に行われたことは評価しうるが、従来からの課題である汚職の根絶及び治安の確保を念頭におき、援助実施における透明性と責任の確保、良い統治等におけるケニア側の自助努力を引き続き注視しつつ、直接住民層に裨益する援助を実施する必要がある。

  2. ケニア経済の現状と課題

    (1)主要経済指標

    一人当たりGNP (96年)と同成長率
    (90-96年平均)
    実質GDP成長率
    320ドル、▲0.5%
    (世銀資料)
    91年1.4%、92年▲0.8%、93年0.4%、94年2.6%、95年4.4%、96年4.2%
    (IMF資料)

    (2)現状

     財政収支、貿易収支の赤字体質は改善されつつあるものの、持続的な成長のためには依然として過大な内外債務など克服すべき問題を抱えている。世銀・IMFの支援の下、農業、工業、金融等の分野の構造調整を実施していたが、97年後半、経済改革の遅れを理由に、一部を除いて右構造調整融資は停止され、さらには大雨とそれによる洪水、農業及び観光セクターの不振、経済改革の遅れによるドナーの財政支援型援助停止及び洪水対策等により、厳しい財政状況である。

    (3)課題

    • 輸出産業の育成等を通じた国際収支の改善、インフレ抑制、公共支出の効率化
    • 規制緩和等経済自由化の促進、公社公団の民営化促進、雇用の創出
    • 初等教育をはじめとする人材育成
    • 食糧の安定自給に向けた農業の生産性向上
    • 産業基盤となる経済インフラ整備
    • 貧困対策と高い人口増加率の抑制

  3. 開発計画

     第8次国家開発計画(1997~2001年)

    (目標)

    • ケニア国民の生活水準向上のための急速かつ持続的な工業化

    (課題)

    • 財政赤字の削減
    • 農業開発、地域開発
    • インフラ整備
    • 人材開発、社会福祉の改善
    • 研究開発の充実
    • 投資貿易の促進、中小企業の発展等工業化のためのフレームワーク作り

  4. 援助実績

    (1)我が国の実績(支出純額、単位:百万ドル)

    有償無償技協合計供与先順位
    97年(暦年)429366918位
    97年(暦年)までの累計8194704301,71911位

    (2)DAC諸国からの実績(支出純額、96年(暦年)、単位:百万ドル)

    二国間総額1位2位3位
    346日本 93ドイツ 54英国 44

    (3)国際機関のODA実績(支出純額、96年(暦年)、単位:百万ドル)

    国際機関総額1位2位3位
    263IDA 146AfDF 48CEC 41
CEC:Commission of the European Communities(EC委員会)

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