インドネシア(国別援助方針)


  1. 基本方針

    (1)我が国の援助対象国としての位置付け

    (イ)インドネシアは、貿易・投資等の面で我が国と密接な相互依存関係を有し、我が国にとって政治・経済面において重要な存在であること、
    (ロ)我が国の海上輸送にとって重要な位置付けにあり、石油、ガス等の天然資源供給国となっていること、
    (ハ)さらに、2億人にものぼる人口規模を有し、ASEAN諸国の中核国として東南アジア経済の発展と安定のため重要な役割を担ってきていること、
    (ニ)従来より貧困撲滅、地域格差是正等のため多大な援助需要があったところ、昨年来の通貨・金融危機やエル・ニーニョ現象の影響によって社会経済情勢が不安定化しており、経済改革の遂行及び新たな状況に対応した開発計画の実施を通じ政治経済危機からの脱却を図り、同時に厳しい構造調整の過程で生じる社会的弱者に対する影響を最小限に留めるための対策をとる必要があること、

    等を踏まえ、援助を実施する。
     なお、我が国は、98年2月20日の閣議決定「東南アジア経済安定化等のための緊急対策」に基づきインドネシアに対する97年度200億円及び98年度500億円程度の構造調整支援のための円借款供与、医薬品等の生活必需物資確保のための緊急無償援助の実施を発表しているほか、4月24日の経済対策閣僚会議決定「総合経済対策」のアジア支援策の中でインドネシアを含むアジア諸国に対する新たな支援策、特に新たな緊急食糧支援の仕組みを活用したインドネシアに対するコメ支援策を表明している。
     また、インドネシアは我が国の二国間援助実績(97年までの支出純額累計)で第1位の受け取り国である。

    (2)我が国の援助の重点分野

     我が国は、インドネシアにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び94年2月に派遣した経済協力総合調査団等におけるインドネシア側との政策対話を踏まえ、以下の分野を援助の重点分野としている。

    (イ)公平性の確保

     社会的・地域的公平性を確保しながら国全体の均衡ある発展を目指す。(a)貧困撲滅(貧困層の生活環境の改善)、(b)基礎生活分野に対する支援(居住環境の整備、保健医療)、(c)人口・家族計画及びエイズ対策、(d)東部インドネシアの開発(地域間格差是正)を重視する。

    (ロ)人造り・教育分野

     同国が今後とも競争力を維持し、付加価値の高い工業化を推し進めるためには、教育水準の向上をはじめ広範な分野での人造りが重要。(a)初等・中等教育の充実、(b)教員の質の向上(小・中学校の理数科教員を中心とする)、(c)技能・技術者教育の充実を重視する。

    (ハ)環境保全

     急速な開発に伴い生じてきた環境問題(森林等の自然資源の減少、公害の発生)の深刻化と大都市への人口集中による居住環境の悪化への対応。(a)森林等の自然資源・自然環境の保全(生物多様性の保全等)及び持続可能な利用、(b)都市居住環境及び公害面での協力、(c)環境問題全般における体制の整備(環境関連の政策実施能力の向上等)を重視する。

    (ニ)産業構造の再編成に対する支援

     健全なマクロ経済運営と裾野の広い産業振興、農業振興に対する支援を行う。特に、(a)マクロ経済運営に対する支援、(b)サポーティング・インダストリーの振興、(c)農業振興(農産物多様化、付加価値の高い農産物の生産)を重視する。

    (ホ)産業基盤整備(経済インフラストラクチャー)

     同国の持続的経済発展のためには外国直接投資の継続的な導入が必要であり、このための投資環境整備を行う。(a)電力、(b)水資源開発、(c)運輸、(d)通信が重要。

    (3)留意点

    • 98年5月21日スハルト大統領が辞任したが、インドネシアにとって経済の回復と民生の安定が緊急の課題となっており、同課題が実現するよう我が国は引き続き社会的弱者対策に重点を置きつつインドネシアの改革努力を支援していく。
    • 我が国は、各援助形態の有機的連携を図ってきており、その一環として「農民の生活水準の向上」を最上位目標とした第3次アンブレラ協力を農業分野に対し現在実施中である。
    • 97年12月ASEAN首脳会議で橋本総理が提唱した「日・ASEAN総合人材育成プログラム」の推進により、経済の持続可能な発展のために必要な人材の育成を支援する。

  2. インドネシア経済の現状と課題

    (1)主要経済指標

    一人当たりGNP (96年)と同成長率
    (90-96年平均)
    実質GDP成長率
    1,080ドル、5.9%
    (世銀資料)
    92年6.4%、93年6.5%、94年7.5%、95年8.2%、96年7.8%、97年4.7%
    (インドネシア中央統計局資料)

    (2)現状

     税制改革、金融改革などの各分野における経済構造改革努力により、民間主導型の経済成長への転換を図りつつあったが、97年に発生した東南アジア通貨・金融危機はインドネシア経済に大きな打撃をもたらした。ルピア暴落及び民間債務問題に起因する輸入力の低下が食糧・医薬品などの物価高騰を招き、また、時を同じくして発生したエル・ニーニョ現象による少雨のため、干魃による深刻な食料不足や森林火災等の自然災害が発生している。さらに、為替の下落や高いインフレ率・所得水準の低下が当該国経済を悪化させ、政府は厳しい緊縮財政により対応しているが、こうした状況下で社会的弱者の生活への悪影響(失業問題、健康等)が顕在化しつつあり、経済情勢はなお厳しい状況にある。こうした中で公共料金の値上げ等をきっかけとして、学生を中心とした抗議行動が顕著となり、更には、スハルト政権の支持基盤が揺らいできたことから、98年5月21日、スハルト大統領は辞任するに至った。現在、ハビビ新大統領のもとで引き続き、国民生活への影響に配慮しつつ経済回復を図るための各種改革を進めることが表明されており、各ドナーはその実施姿勢を注視している。

    (3)課題

    • インフレの抑制、経常収支の改善、民間対外累積債務の適正管理をはじめとする慎重なマクロ経済政策の継続、貿易金融の適切な運用
    • 社会的弱者の保護、保健・医療サービスの確保(維持・向上)、貧困対策・所得格差の是正、地域間格差の是正
    • 森林火災、渇水、地震、洪水等の自然災害への対応
    • 雇用対策、産業や経済の高度化に対応するために必要な教育や技術者育成
    • 都市における生活環境改善、公害対策や自然環境保全
    • 経済発展の基盤となる農業生産基盤や経済インフラの整備

  3. 開発計画

    第6次5か年開発計画(1994~98年度)

    (目標)

    • 第2次25か年開発計画で経済上の離陸をめざしており、第6次5か年開発計画ではそのための基礎固めを行う。

    (目標値)

    年平均経済成長率7.1%(95年8月に当初目標の6.2%を修正)
    人口増加率1.5%(終了時)←第5次5か年計画達成値1.66%(見込み)
    国民一人当りGNP1,280ドル以上(終了時、95年8月に当初目標を修正)←980ドル(95年)
    絶対的貧困層1,200万人以下(終了時)←(1990年:2,700万人)

  4. 援助実績

    (1)我が国の実績(支出純額、単位:百万ドル)

    有償無償技協合計供与先順位
    97年(暦年)282671484972位
    97年(暦年)までの累計11,0291,0201,91013,9591位

    (2)DAC諸国からの実績(支出純額、96年(暦年)、単位:百万ドル)

    二国間総額1位2位3位
    1,062日本 966オーストラリア 85 オーストリア 65

    (3)国際機関のODA実績(支出純額、96年(暦年)、単位:百万ドル)

    国際機関総額1位2位3位
    72CEC 23ADB 23UNICEF
CEC:Commission of the European Communities(EC委員会)

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