開発協力トピックス 01
新薬開発に力を結集-GHITファンドと『グローバルヘルス』
■ GHITファンドの設立
途上国に蔓延(まんえん)する感染症の新薬やワクチン等の新しい医薬品の研究開発および製品化を促進するため、日本政府と民間企業、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、国連等の国際機関が共同で、日本初の官民パートナーシップ、一般社団法人グローバルヘルス技術振興基金(略称GHIT(ジーヒット)ファンド)を設立しました。
日本政府はGHITファンドを通じて、日本が有する新薬開発技術、イノベーションを活用し、グローバルヘルス(国際保健)に対する日本の国際貢献を強化することを目指しています。基金の目的に沿った有望な研究に対して助成金を交付することで、新薬の開発を促進しています。
従来のように途上国に対する資金や技術供与などを通じた直接的な支援ではなく、日本の製薬企業や研究機関、大学が持つ高い新薬開発技術を活用し、途上国の保健医療問題の解決に貢献するという、今までにない全く新しい取組です。日本は世界でもトップクラスの新薬開発能力を持っていながら、今までその力を途上国の問題解決のために十分に活用してきませんでした。そこで、日本政府は、日本のそうした能力を最大限に活かすために、多様な組織と連携してGHITファンドを設立しました。このGHITファンドを通じて、途上国に対する更なる国際貢献を行うとともに、世界の中での日本の存在感を今まで以上に高めていきたいと考えています。
バングラデシュでの赤ちゃんと女性のための予防接種活動(写真:鈴木革/JICA)
■ 世界各国が取り組むグローバルヘルス
世界のグローバル化が進むにつれて、保健医療問題についても国境の概念を越え、地球規模で対応することが今まで以上に求められています。途上国で生活をする多くの人々は医療機関へのアクセスが難しいことや、予防接種制度、衛生環境が十分に整備されていないため、今もなお基礎的な医療を受けることができない状況に置かれています。「グローバルヘルス」とは一つの国だけでなく世界中の国々に広く影響を及ぼしている様々な保健医療問題のことを指します。世界各国が共に解決に向けて取り組んでいる問題です。中でも、途上国における感染症対策は最も大きな注目を集めている課題の一つです。
世界保健機関(WHO)によると世界では、10億人を超える貧困層の人々がHIV/エイズ、マラリア、結核、顧みられない熱帯病(用語解説参照)といった感染症に感染していると推測されています。しかしながら、これだけ多くの人々が感染症で苦しみながら、これらの感染症が蔓延(まんえん)する地域は途上国が多く、先進国における医薬品の需要が少ないなどの理由から治療薬の開発は十分に行われてきませんでした。たとえば、1995-2004年に世界で開発された新薬は1,556種ありましたが、途上国の感染症のために開発された新薬は、わずか21種類(1.3%)に過ぎません。このような現状を受けて、国際社会では途上国において人々が必要不可欠な医薬品を安く入手できるようにするための取組を始めています。日本は、GHITファンドを通じてこうした感染症の新薬開発を推進するだけでなく、途上国の患者でも手ごろな価格で医薬品を手に入れることができるように、日本や世界の製薬企業、大学、研究機関等にも協力を求めていきたいと考えています。
こうしたグローバルヘルスと呼ばれる保健医療問題は、一つの国、一つの企業、一つの組織だけでは問題を解決することができません。そのため、日本だけではなく、海外の様々な組織とも積極的に連携しながら共に問題解決を行い、国際社会における日本の責任を果たしていくことが必要です。日本政府はGHITファンドの取組を今後も支援しながら、グローバルヘルスにおける国際貢献をしっかりと果たしていきます。
第5回アフリカ開発会議(TICAD V)GHITファンド設立記者発表会で固く握手を交わす設立パートナーの面々(写真:GHITファンド)