日本がコロンボ・プランに加盟し、政府開発援助(ODA)を開始してから今年で60年の節目を迎えます。日本はこれまで行ってきたODAにより、世界から大きな信頼を得てきました。その一方で、ODAを取り巻く国際環境は大きく変化しており、それに伴いODAに求められる役割も変わりつつあります。
国際環境の変化としてまず挙げられるのは政治・安全保障環境の変化です。平和で豊かな国際社会を実現するため、ODAをより戦略的に展開し、自由や民主主義、人権、法の支配などの普遍的価値や戦略的利益を共有する国を支援する必要があります。
経済面でもグローバル化が進むにつれ、多くの途上国が新たな投資先・市場として注目を浴び、ODAを上回る民間資金が流入するようになりました。こうした状況を背景として、途上国の持続的発展のためには、民間資金を呼び込むための触媒としてのODAの役割がますます重要となっています。ODAがインフラ整備や産業人材の育成を支えることで、途上国の持続的な成長を実現し、それが世界経済へ好影響を及ぼすサイクルをつくることができます。
その一方で、紛争や内戦などにより開発が立ち後れている国や厳しい格差の中で開発の恩恵を受けられない人たちも、世界には依然として数多く存在します。また、すべての人に基本的保健医療サービスを届けることや、女性が輝く社会を実現することは、一人ひとりの生活を改善し、より豊かな世界をつくることにつながります。このような支援は、まさに日本が重視している「人間の安全保障」の理念を具体化するものです。
2013年版ODA白書では、途上国への開発協力を「未来への投資」ととらえ、途上国の安定と発展はもちろんのこと、日本や国際社会全体のためにも役立つODAのあり方を取り上げました。たとえば、中小企業をはじめとする日本の民間企業の海外への展開をODAにより支援しています。「未来への投資」としての開発協力という考え方は、既に日本のODAの基本となってきています。たとえば、東南アジアに対し、日本がODAを通じインフラ整備や人材育成を進めてきたことが、この地域の経済発展と政治的安定に大きく貢献し、東南アジアは今や世界経済を牽引する存在となりました。また、今世紀に入り目覚ましい成長を遂げているアフリカも、ビジネスパートナーとしての性格を備えてきており、成長重視の協力への期待も強まっています。
こうした協力を通じ、均衡のとれた持続可能な世界経済の成長を目指すことは、世界の安定と繁栄につながり、途上国だけでなく先進国を含む国際社会全体にとり大きな利益になるのです。日本はODAを通じた「未来への投資」に力強く取り組むことで、これからも世界の信頼を得ていく決意です。
2014年2月