(6)不発弾および対人地雷・小型武器等

かつて紛争中であった地域には、複数の小型の爆弾を内蔵し、それらをまき散らす爆弾であるクラスター弾などの不発弾や対人地雷が未だに残っており、非合法な小型武器が広く使われています。これらは子どもを含む一般市民にも無差別に被害を与え、復興と開発活動を妨げるだけでなく、新たな紛争の原因にもなります。不発弾・地雷の除去や非合法小型武器の回収・廃棄への支援、地雷被害者の能力強化など、国内を安定させ、治安を確保することに配慮した支援が重要です。

< 日本の取組 >

日本は、「クラスター弾に関する条約」および「対人地雷禁止条約」の締約国として、両条約の普遍化(なるべく多くの国が条約を締結するように働きかけること)を積極的に推進しています。また、両条約で規定されている、除去、被害者支援、リスク低減教育等にまたがる国際的な協力も着実に実行しています。

たとえば、アフガニスタンのパルワン県においては、安全な生活環境を確保して難民の帰還を促進し、経済基盤を確立して地域の経済発展に寄与することを目的として、(特活(注21))日本地雷処理を支援する会(JMAS(ジェイマス))が2006年度から7年間、日本NGO支援無償資金協力(現在の日本NGO連携無償資金協力)を通じて地雷・不発弾処理事業を行ってきました。7年間の事業の成果として、東京ドーム53個分の面積に相当する地雷原処理と、7,614発の対人地雷および3,240発の不発弾の処理が報告されています。

また、不発弾の被害が特に大きいラオスに対しては、2011年に不発弾対策に特化したプロジェクトが形成され、(1)不発弾専門家の派遣、(2)機材供与、(3)南南協力の3つの柱から成る協力が行われています。このうち、南南協力については、日本が1990年以来カンボジアに対して行ってきた地雷処理支援の経験を広める観点から、カンボジアとラオスとの間で、不発弾処理支援に関するワークショップが数回行われ、3年間にわたり技術・訓練・国家基準策定・犠牲者支援等に関する両国の知識・経験を互いに共有するための協力が行われています。

さらに2013年3月にはアフリカ主導国際マリ支援ミッション(AFISMA(アフィスマ))に対する支援として、AFISMA支援国連信託基金を通じ国連PKO局地雷対策サービス部(UNMAS(アンマス))の実施する人道的地雷除去活動に緊急無償資金協力を実施したほか、アフガニスタン、南スーダン、ソマリア、コンゴ民主共和国、リビアなどに対して、UNMASを通じた地雷・不発弾対策支援(除去・危険回避教育等)も行っています。

小型武器対策としては、開発支援を組み合わせた小型武器の回収、廃棄、適切な貯蔵管理などへの支援を行っています。また、武器の輸出入管理や取締り能力の強化、治安の向上などを目指して関連する法制度の整備や、税関や警察など法執行機関の能力を向上する支援、元兵士や元少年兵の武装・動員解除・社会復帰事業支援等も実施しています。

アンゴラ国家地雷除去院の職員との運営方針協議を行う専門家(大町佳代/JICAアンゴラフィールドオフィス)

アンゴラ国家地雷除去院の職員との運営方針協議を行う専門家(大町佳代/JICAアンゴラフィールドオフィス)


注21 : 特定非営利活動法人

●コロンビア

「地雷被災者を中心とした障害者総合リハビリテーション体制強化プロジェクト」
技術協力プロジェクト(2008年8月~2012年8月)

コロンビアは、40年以上前から武装勢力と政府軍との武力抗争が続く中で対人地雷が使用されてきた結果、地雷被害者数が世界で最も多い国の一つです(2005年・2006年には被害者数が世界第1位となり、年間1,000人以上が被害に遭いました)。また、コロンビアの2005年の国勢調査によると全人口の6.3%に当たる265万人が障害者であるとされています。

このような状況の下、地雷被害者を含む障害者のリハビリテーション体制の強化が差し迫った課題となっています。JICAは2008年から2012年の4年間にわたり、地雷被害者の多いアンティオキア県および、リハビリ拠点となり得る病院があるバジェ県を対象に、技術協力プロジェクトを実施しました。

日本人の専門家の派遣やコロンビア人の日本での研修などの結果、コロンビアの医療機関において、地雷被災による身体の切断障害および視覚障害に対するリハビリマニュアルが完成し、活用されるようになりました。また、医師、理学療法士、作業療法士等のリハビリの専門家がチームになって、障害者の個々のリハビリに取り組む体制が強化されました。

さらに、地域社会を対象として地雷被害に遭わないための啓発活動や、被災した際の応急手当てのための技術指導が行われ、地方の指導者や消防員などに浸透しました。あわせて、障害者自身が講師となって、障害者の社会復帰・社会参加に向けて障害者の権利についてセミナーを行い、障害のある当事者だけでなく地域社会全体の意識変革にもつながりました。

プロジェクトで作成した「障害者の権利と義務に関するガイド」を使って対象地域で研修を行う普及員(写真:JICA)

プロジェクトで作成した「障害者の権利と義務に関するガイド」を使って対象地域で研修を行う普及員(写真:JICA)


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