(2)イラク

イラクは1980年以降、3度にわたる戦争や、その後の経済制裁のために国内の経済社会インフラは破壊と老朽化の影響を受け、経済発展が遅れています。また、戦後の治安回復などの遅れが影響し、停電、断水が頻繁に起こるなど基礎的インフラが整っていません。国際社会は、イラクが平和と安定を回復し、その状態が続くように、国づくりの支援を進めています。イラクが平和で民主的な国家として再建されることは、イラク国民や中東地域だけでなく日本を含む国際社会の平和と安定にとって極めて重要です。イラクは、当面の復興ニーズに緊急に対応すべき局面から、現在は、中期的な視点から、自立発展に向けた復興・開発に戦略的に取り組むべき局面に移行しています。

< 日本の取組 >

日本は、2003年10月のマドリード復興支援国会合で総額約50億ドルの対イラク支援パッケージを表明しました。これはイラク国民の生活水準回復のための当面の支援として、15億ドルの無償資金協力、および中期的な復興支援に応えるための最大35億ドルの円借款から成ります。それ以降、日本はイラク政府の復興計画を支援するため、(1)経済成長の基盤強化(石油・ガス生産・輸出能力向上、農業生産性向上)、(2)民間セクターの活性化の基盤となる基礎インフラ・投資環境整備(電力復興、運輸・通信基盤整備)、(3)生活の質の向上のための生活基盤整備(上下水道の整備、医療・教育の質の向上)、(4)ガバナンスの強化(行政基盤の構築・人材育成)を重点分野として支援を行っています。

なお、2011年11月マーリキー首相訪日の際に行われた日・イラク首脳会議において、日本は、石油、通信および保健分野の新規4案件のために、約670億円(約8億2,700万ドル)の円借款の供与に必要な措置をとることを表明しました。これは2003年の約50億ドルの支援の公約を達成するとともに、新たな支援も伴うものです。日本は、現在実施中の協力事業が着実に進んでいくよう、きめ細かい支援を行っています。イラクの中期的な復興・開発戦略の中に日本の支援が効果的に組み込まれるよう、イラクおよび他の支援機関と一層密接な連携を図っていく考えです。


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