第2章 MDGs達成に向けた具体的取組

目標達成期限を5年後に控え、日本はMDGs達成に向けた具体的な取組を行っています。


2010年はMDGsの達成期限である2015年まで残すところ5年となった節目の年でした。9月20日から22日までニューヨークで開催されたMDGs国連首脳会合をはじめ、それに先立つG8ムスコカ・サミットやアジア太平洋地域MDGsレビュー特別閣僚会合などの様々な機会において、MDGs達成に向け国際社会が努力を一層強化することの重要性が確認されました。

2015年までのMDGs達成に向けた日本の支援は、「人間の安全保障」という考えを基本にしています。これは、人間一人ひとりに注目し、その豊かな可能性の実現を目指す考え方です。複雑に絡み合う様々な脅威から人々と地域社会を保護し、自ら選択して行動できるよう能力の強化を図ることを重視しています。

2010年9月の国連首脳会合において、日本は特に重視する保健分野および教育分野における新しい支援策を発表しました。新たに策定された「国際保健政策2011-2015」は保健分野の支援に関する包括的な政策です。母子保健では、国際機関などほかの開発パートナーとともに、産前から産後まで切れ目のないケアを施す支援を行い、妊産婦や乳幼児の命を救っていきます。また、三大感染症についても、「世界基金」への拠出と二国間支援を組み合わせながら、死亡者の大幅な削減を目指していきます。教育分野の「日本の教育協力政策2011-2015」では、すべての子どもたちに教育の機会を提供することを目指す「スクール・フォー・オール」の支援モデルに基づき、国際機関への拠出などを通じて基礎教育の整備への支援を行っていきます。

第1節 国際社会の動きと日本の取組

MDGsの達成に向け、2010年にはG8ムスコカ・サミット(6月)やMDGs国連首脳会合(9月)など世界のトップが集まり、支援について議論する会議が盛んに行われました。


1. G8ムスコカ・サミット

2010年6月25日から26日まで、カナダのムスコカにおいて「G8ムスコカ・サミット」が開催され、日本からは菅直人内閣総理大臣が出席しました。近年のG8において、開発は主要議題の1つとなっており、このサミットでもアフリカ・アウトリーチ首脳との会合(注2)において開発に関する議論が行われ、各国首脳はMDGs達成に向けた努力を強化すべきとの認識で一致しました。

このサミットでは、特に目標達成に向けた進ちょくが遅れているといわれる「母子保健」に焦点が当てられました。G8首脳は、母子保健に対する支援を強化する「ムスコカ・イニシアティブ」を打ち出し、同イニシアティブの下で、今後5年間で50億ドルの追加的な拠出を行うことを約束しました。また、G8の支援をきっかけに、より大きな国際的な取組へとつなげるべく、そのほかの政府や国際機関そして開発途上国自身にも協力を呼びかけました。

菅総理大臣は、母子保健の改善は日本が重視する「人間の安全保障」の観点からも重要であるとし、「ムスコカ・イニシアティブ」の下、母子保健分野で、2011年から5年間で最大500億円規模、約5億ドル相当の支援を追加的に行うことを表明しました。

主要国首脳会議(サミット)の主要8か国(G8)拡大会合での集合写真

主要国首脳会議(サミット)の主要8か国(G8)拡大会合での集合写真、後列右から2人目が菅直人内閣総理大臣(カナダ・ムスコカ) (写真提供 : AFP=時事)


注2 メンバーはG8(日本、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、ロシア、欧州連合(EU))およびアルジェリア、エジプト(欠席)、ナイジェリア、セネガル、南アフリカ共和国、エチオピア(NEPAD運営委員会議長国)、マラウイ(アフリカ連合(AU)議長国)。


<< 前頁   次頁 >>