囲み 5 援助効果の向上への取組
ミレニアム開発目標(MDGs)など開発に関する国際的な目標を達成するためには、援助の量を増やすだけでなく、援助の質を高める必要があるという考えが年々高まっています。2005年には、より効果的に援助を行うために必要な取組事項をまとめたパリ宣言が採択され、2008年9月には、このパリ宣言の進捗状況を評価し、目標達成に向けた課題などを議論するため、「第3回援助効果向上に関するハイレベル・フォーラム(アクラHLF)」がガーナのアクラで開催されました。開発途上国、援助国、国際機関および市民社会からの参加者が活発な議論を交わし、援助の効果向上に向けた作業を加速化させるため、「アクラ行動計画(AAA:Accra Agenda for Action)」が採択されました。
AAAには、開発途上国がオーナーシップ(自助努力)を持ち、援助国は援助国同士の協調をより進め、共に説明責任を高めるために取り組むべき内容が示されています。AAAの主なポイントとしては、<1>援助国が開発途上国に対し、3年から5年間の援助計画の情報を提供する「予測性」の向上、<2>援助実施の際に援助国の制度よりも開発途上国の制度を活用する「カントリーシステム」の活用、<3>開発途上国の主導による援助国の「分業」の促進、<4>開発途上国の開発戦略に基づくとともに、開発途上国と援助国が相互に合意した「コンディショナリティー」の活用、<5>調達制度の透明性の向上および現地・地域調達を図る援助の「アンタイド」化、<6>開発途上国間で行われている「南南協力」と、南南協力に対する援助国の支援も含めた「三角協力」を促進することが挙げられます。
日本は、アクラHLFの運営委員会のメンバーとしてAAAの策定にかかわり、貧困削減などの開発成果の重要性、開発途上国のオーナーシップやニーズに応じた支援、新興援助国も含めた枠組みの必要性などを主張しました。たとえば、アジア地域で準備会合を開催し、AAAの議論に反映させるために開発途上国の意見をとりまとめることにも貢献しました。また、開発援助委員会(DAC:Development Assistance Committee)に新興援助国との対話を促進する作業部会を立ち上げ、ロシアと共同議長を務めました。このほか、新興援助国との会合を韓国と共催し、各国の援助政策のさらなる連携を協議するなど、新たな援助枠組み構築のための取組を行っており、その成果はアクラHLFでの討議およびAAAに反映されました。
アクラHLF後、日本は、開発途上国における能力向上および開発効果の向上に向けた取組を支援しています。たとえば、2009年3月からアジア大洋州地域において、国連開発計画(UNDP)、アジア開発銀行(ADB)、世界銀行などと協力し開発途上国の行政官、議会、市民社会を対象とした能力向上プログラムを支援しており、開発途上国の主導による開発効果の向上に取り組んでいます。また、2011年には、2010年にDACに加盟する予定である韓国において第4回援助効果向上に関するハイレベル・フォーラムが開催される予定ですが、日本は、その準備作業に参加するとともに、開発途上国や他の援助国と協力して、開発効果を向上させるための取組を進めています。