(3)不正、腐敗の防止

日本のODAは、国民の税金を原資としていることから、援助によって供与された資金の不正使用は絶対に許されません。そのため、政府およびJICAは調達などの手続について透明化を図っています。

ODA案件の調達段階においては、ガイドラインに従って開発途上国側が入札を行い、その結果をJICAが確認し、受注企業名のみならず契約金額も公表することで透明性を高める措置をとっています。調達をはじめ、ODA事業実施の過程で不正が行われた場合は、不正を行った業者を一定期間、事業の入札・契約から排除する仕組みが整えられています。

監査に関しては、外部監査の拡充や抜打ち監査の実施、監査結果に基づく改善措置の取組を行っています。外部監査の拡充については、JICAにおいて会計監査人による外部監査を実施しています。無償資金協力では、300万円以上の草の根・人間の安全保障無償資金協力案件について外部監査を原則義務付け、順次実施しています。

抜打ち監査の実施に関して、有償資金協力については、政府間で合意がなされた案件を対象に必要に応じて監査を行い得る仕組みを導入しています。技術協力では、JICAにおいてサンプリングによる内部監査を実施しています。無償資金協力についても、JICAにおいて技術的監査を実施しています。

また、OECD外国公務員贈賄防止条約(注94)を批准している日本としては、税金を主な財源としているODA事業への信頼性の確保のため、外国政府関係者などとの不正な取引に対しても、不正競争防止法などの適用を含めた厳正な対処を行っています。

ベトナムにおける円借款事業において不正が行われ、2008年に日本の企業関係者が訴追され有罪判決を受けた事件を受け、円借款事業やODA事業に対する信頼性が損なわれることのないよう厳正に対処しました。政府およびJBIC(当時)は、当該企業に対し、24か月間円借款事業および無償資金協力事業の受注から失格とする措置をとりました。また、JICAは、この時点で既に当該企業を登録コンサルタント名簿から削除しています。

この事件を受けて、日本とベトナム両政府は、同種の事件の再発防止やベトナムに対するODA事業への信頼回復を目指し、「日越ODA腐敗防止合同委員会」を立ち上げ、2009年2月、実効性のある再発防止策をまとめた「日越ODA腐敗防止合同委員会報告書」を発表しました。同報告書をもとに、日本側では、円借款事業のコンサルタント選定に関して、技術・価格評価の導入や随意契約の厳格化、不正腐敗に関する情報を一元的に把握するための窓口設置などの対応を進めました。また、ベトナム側では、調達手続の透明性向上や、官民を問わず、ODA事業の入札にかかわるすべての者が遵守すべき倫理規定の策定などの対応を進めています。また、ODA事業全体の透明性向上のため、これらの成果のなかで他国にも適用可能なものは他の被援助国に広めていく方針です。

また、上記事件を踏まえ、同様の不正腐敗事件の再発防止に向けた検討を行うため、外務大臣の下に外部有識者からなる検討会を設置し、2009年9月に報告書がとりまとめられました。具体的には、企業に対する措置規定の強化や不正情報受付窓口の活用などが盛り込まれています。外務省としては、今後、この報告書に盛り込まれた措置を速やかに実施することとしています。


注94 : 正式名:「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」(Convention on Combating Bribery of Foreign Public Officials in International Business Transactions)


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