8. 欧州地域
バルト三国および中・東欧諸国は、かつての社会主義体制を脱し、おおむね市場経済化・民主化を達成していますが、発展の度合いは国によって大きく異なっています。EUへの加盟を果たした中・東欧10か国(ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、スロベニア、ラトビア、リトアニア、エストニア、ルーマニア、ブルガリア)は、DACの援助受取国リストに掲載されなくなったことや一人当たりのGNI(注74)の向上に伴い、援助される側から援助する側へ移行しつつあります。
クロアチアやマケドニアなど西バルカン諸国は、国により進展のレベルは異なりますが、各国ともEUへの早期加盟を目指し改革の努力を続けています。ウクライナやモルドバなど旧ソ連諸国では、市場経済の下での持続的経済発展が課題となっています。また、新独立国として国づくりに取り組むコソボなど、同地域における発展状況は多様化しています。
注74 : GNI:Gross National Income
< 日本の取組 >
バルト三国や中・東欧諸国の経済成長に伴い、同地域における日本の支援の役割も変化しています。EU加盟国のうちルーマニアとブルガリアを除く8か国は、日本のODA対象国から外れており、援助国としての国際的役割を担いはじめています。日本は、ODAの供与国としての経験を共有するための取組を行っています。
経済発展の途上にある西バルカン諸国や旧ソ連諸国については、各国の発展水準やニーズに応じて引き続き支援していく必要があります。セルビアでは、電力、給水、交通などのインフラの整備および保健医療分野の支援に重点を置くとともに、投資促進、中小企業振興、貿易促進のための専門家派遣や研修も進めています。ボスニア・ヘルツェゴビナでは、文化面の支援、民族融和のための支援、帰還民支援、地雷被災者支援などを行っています。ウクライナやモルドバでは、一層の民主化、市場経済化に向けた努力を支援しつつ、医療や農業関連の機材の整備などを通じて市民の生活水準の向上に取り組んでいます。
(写真提供 : DPA/PANA)
ティラナ首都圏下水道整備計画(アルバニア)
アルバニアは1992年の民主政権成立以降、欧米諸国や国際機関からの多くの支援などにより、徐々に経済成長を遂げてきました。しかし、地域の発展により人口が増加し、生活・産業排水が増加している一方、下水道の整備が遅れているため、汚水が市の中心を流れるラナ川や周辺の土地に流入し、その結果、河川のゴミ堆積や悪臭のため、住民の衛生、居住環境が悪化しています。そこで日本は、約111億円の円借款を通じて下水処理場など下水道施設の整備を行い、地下水および河川の水質改善、周辺地域住民の生活環境改善を支援しています。