巻頭言

2007年から2008年前半にかけて、世界は気候変動やアフリカ開発、さらには食料およびエネルギーの価格高騰への対応など、先進国と開発途上国とを問わず、人々の暮らしに大きな影響を及ぼす課題に直面しました。日 本は、これら地球規模の諸問題を解決することが国際社会の平和と発展につながり、さらには日本の安全と繁栄 が確保されるとの理念の下に、これらの課題に積極的に取り組むため、第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)やG8北海道洞爺湖サミットを主催し、政府開発援助(ODA)の戦略的活用を打ち出してきました。

中でも、気候変動問題は、国境を越えて人々の生活に悪影響を及ぼし、特に、開発途上国では経済発展のための努力を阻害するなど、開発とは切り離せない問題となっています。このような認識の下、2008年、日本は 「クールアース推進構想」を発表し、その中で、今後排出削減と経済成長を両立させ、気候の安定化に貢献しよ うとする途上国への総額100億ドル規模の支援を打ち出しました。また、G8北海道洞爺湖サミットにおいては、世界全体の長期排出削減目標の採択を国連交渉で目指すことが合意されました。

また、アフリカ開発は、国際社会にとって引き続き大きな課題です。2008年5月に開かれたTICAD IVでは、日本は対アフリカ政府開発援助の倍増をはじめ種々の支援策を表明し、アフリカの開発の議論において力強いリーダーシップを発揮しています。G8北海道洞爺湖サミットでも、アフリカ諸国首脳との拡大会合を開催するとともに、G8諸国との間でTICAD IVの成果を共有しました。

本白書では、上記の二つの会議における主要な議題であった、気候変動とアフリカ開発への取組を特集として取り上げています。

2008年9月以降、世界は、同月の米国の金融危機に端を発した世界的な金融・経済危機に直面しています。この危機に緊急に対処すべきことは言を待ちませんが、そのような状況においても、上述した諸問題の解決が後 回しにされてはいけません。先進国は、国際協力に関する従来の公約を着実に実施していくことが重要です。ま た、途上国が成長力を強化し、内需拡大に向けた取組を進めることは、世界経済の再活性化にも貢献するものです。日本は、ODAの戦略的活用を通じて、とりわけアジア諸国の自律的成長を積極的に後押しすることにより、 現下の危機にも対応していきます。金融危機への対応など2008年後半以降については、次回以降の白書で取り上げたいと考えています。

また、国際協力の担い手は政府と援助機関のみではありません。日本のODAの効果を一層向上させるためには、NGOや民間経済界の方々など幅広い関係者との連携が重要です。本白書では、「日本の国際協力の担い手たち」の途上国の現場での活躍に焦点をあて、国際協力の事例を紹介しています。これらの現場の事例を通して、日本の開発援助の輪が大きく広がっていることを読み取っていただきたいと思います。

この白書を手にした皆様が国際協力への関心と理解を深め、ODAをさらに支援して下さるきっかけとなることを心より願っております。

2009年2月

外務大臣中曽根弘文