囲み 7 文化無償資金協力
開発途上国では、その国の文化の振興に対する関心が高まっており、多くの国では、文化の側面を含めた国づくりの努力がなされています。しかし、多くの開発途上国においては、既存の文化遺産の保全・修理や、文化振興になかなか予算を割くことができないのが現状です。
文化無償は、こうした各国に対する文化面での支援を通じて、日本とこれら諸国の相互理解を深める、またこれら諸国の文化および高等教育の振興を目的として創設された無償資金協力です。2006年度には、一般文化無償では21件、17.36億円、草の根文化無償では47件、約3.03億円を実施しました(注1)。これまでに130か国・地域に対して、合計1,520件、総額582億4,000万円(注2)の文化無償資金協力を実施しています。「文化」を対象とした協力は、世界でもあまり例がなく、日本の文化無償資金協力は世界各国で高い評価を得ています。
具体的には、日本語を学んでいる大学に語学研修用機材購入のための資金供与をしたり、空手や柔道等を振興している団体に武道関連の機材購入のための資金供与をしたりしています。また、開発途上国にある文化遺産を保護する活動を支援するための資金供与を実施しています。
2002年度に、草の根文化無償により供与された空手マットで練習に励む子どもたち(ラオス)。2007年8月には、一般文化無償により、日本・ラオス武道館を建設する計画が、交換公文により締結された
(写真提供 : 株式会社 梓設計)
注1 : 執行承認ベース
注2 : 執行承認ベース
世界遺産・プランバナン遺跡の修復に対する支援(インドネシア)
2006年5月27日に発生したインドネシアのジャワ島中部地震では、約6,000人の犠牲者が出ました。日本の阪神・淡路大震災とほぼ同様の犠牲者数です。この地震でユネスコの世界遺産に登録されているプランバナン遺跡群も被害を受けました。今にも崩壊しそうなプランバナン遺跡のガルーダの塔は地震の激しさをうかがわせます。
地震発生の約2か月後、インドネシア政府からの要請を受けて日本から文化遺産の被害状況についての調査団が、プランバナン遺跡に派遣されました。地震国である日本には、地震被害を受けた建造物を修復するための様々なノウハウがあります。赤道直下のインドネシアの「暑い」というよりは「痛い」日差しの下、日本の建築や耐震構造の専門家が、最新機器を用いて被害状況を調査しました。インドネシア側もプランバナン遺跡のこれまでの修理状況についての歴史的資料を積極的に調査団に提供し、建造物の構造等について専門的な議論がなされました。その後も第二次調査団が2007年2月に派遣されるなど、世界遺産・プランバナン遺跡の地震被害対策への日本の協力は、他国と比しても突出しています。
2007年3月、日本は草の根文化無償資金協力にてプランバナン遺跡修復専門機関のジョクジャカルタ特別州考古学局に対して、文化財修復機材を購入するための資金約1,000万円を供与しました。日本は地震国としての経験をいかし、インドネシア人の誇りである世界遺産の復旧に積極的に関与していることから、遺跡関係者のみならずインドネシア国内で非常に高い評価を受けています。
日本が文化財修復機材を供与し、現在修復が進むプランバナン遺跡
プランバナン遺跡全景
2006年度の草の根文化無償による日本語学習機材の贈呈式に出席した中山泰秀外務大臣政務官(写真右、中国・南京大学)