(9) 国際組織犯罪
< 現状 >

  グローバル化やハイテク機器の進歩、人の移動の拡大などが進むに伴い、国境を越えて大規模かつ組織的に行われる国際組織犯罪は、治安維持に深刻な影響を及ぼしています。薬物や銃器の不正取引、盗難品の密輸、詐欺・横領などの企業犯罪や経済犯罪、通貨、支払カードなどの偽造、汚職、脱税や資金洗浄(マネー・ロンダリング)などの金融犯罪、売春、不法移民、女性や児童の人身取引などが挙げられ、近年、国際組織犯罪の手口は以前よりも一層巧妙化しています。
  国際組織犯罪は国を越える犯罪であり、一国のみの努力では対策に限りがあります。このような国際組織犯罪に対処するためには、各国それぞれによる対策強化とともに、司法・法執行分野の国際協力による連携強化など、法の抜け穴をなくすための努力が必要です。

< 日本の取組 >

  日本は、国連やG8などの国際機関や枠組みを通じた国際組織犯罪対策分野でのルールづくりや、対策の検討・協力に積極的に貢献してきています。国際犯罪組織は、法律や規制の緩やかな国を犯罪活動の拠点とすることから、各国における法制度の強化が国際組織犯罪対策に寄与します。
  日本への密輸・密航には主に海上からのルートが使用されています。水際で犯罪を阻止するには一国のみの努力では限りがあるため、アジア各国の取締り能力や連携の強化を目的としたセミナーを実施しています。具体的には、フィリピンで海上法令励行セミナー、東京で薬物犯罪取締りセミナー、福岡で東アジア海上犯罪取締り研修等を行っており、アジア各国の海上保安機関と取締り能力や連携の強化を図り、また、薬物・銃器の密輸、密航等海上における国際組織犯罪に適切に対応するための技術協力を実施しています。
  人身取引問題も国際的な課題となっています。日本は、2004年4月に人身取引対策に関する関係省庁連絡会議を設置し、同年12月、包括的な人身取引対策行動計画を策定しました。現在、同行動計画に沿って様々な施策を実施中であり、2005年6月には人身取引議定書の締結に関する国会承認を得たほか、2004年9月以降、インドネシア、タイ、ラオス、カンボジア、フィリピン、コロンビア、ウクライナ、ロシア、ルーマニア等へ政府協議調査団を派遣し、先方の関係機関と協議を行ってきています。さらに、人間の安全保障基金等を通じ、人身取引撲滅に向けた様々なプロジェクトを支援しており、最近では2006年3月、国際労働機関(ILO (注164))がタイおよびフィリピンで実施している人身売買等の犠牲者の帰還後の生活を支援するプロジェクト(注165)に約200万ドルの支援を行いました。そして、2005年の第15回犯罪防止刑事司法委員会で日本が提出し採択された「人身取引決議」のフォローアップの一環として、2006年9月、人身取引に関する国連関連機関調整会合を外務省にて開催し、UNODC (注166)主催の下、関係国際機関(注167)が一堂に会しました。

アジアを中心にした協力

国際組織犯罪には偽変造旅券が行使されるケースが多いことから、1995年以降、「偽変造文書鑑識技術者セミナー」を開催しています。これは、東南アジア諸国等の出入国管理機関における偽変造文書鑑識技術者等と、各国・地域における文書鑑識技術等の情報交換を行うというものです。相互の協力関係の発展、技術の向上を図り、関係諸国・地域の出入国管理行政の的確・円滑化に資することを目的としており、2007年2月に実施された第12回同セミナーにおいても積極的な情報交換が行われました。
国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)では、2006年8月から10月にかけて国際組織犯罪に関する国際研修を実施しました。アジアを中心とする開発途上国11か国からの参加を得て、国際組織犯罪の捜査、訴追および公判における課題について、現状の分析、対策の検討等を行うことにより、同地域内諸国の有効な犯罪防止政策の展開および刑事司法の充実・発展に寄与しました。



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