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[8]国連人口基金(UNFPA:United Nations Population Fund)
1.設立及び日本の協力開始の時期・経緯・目的
開始時期
1967年6月国連事務総長の下に信託基金として発足。日本は、1971年以来UNFPAへの資金協力を行っている。
経 緯
UNFPAは、国連システム下で人口分野における諸活動を強化するための財源として国連事務総長の下に信託基金の形で発足し、1969年「国連人口活動基金」(UNFPA:United Nations Fund for Population Activities)と改称、1972年には第27回国連総会決議3019に基づき国連の下部組織となり、1988年に通称はUNFPAのまま「国連人口基金」に改称。
目 的
●人口家族計画分野における国家的、地域的、世界的ニーズに応えるような知識と能力を築き、計画立案における調整を図り、すべての関係方面と協力すること。
●人口問題対策の実施、家族計画の人権的側面についての関心を、開発途上国及び先進国双方において、各国の計画、優先度に応じて高めること。
●人口問題に取り組んでいる開発途上国に対し援助を拡大すること。
●人口問題分野の計画推進に際して国連組織の中で中心的役割を果たし、同基金によって援助される諸プロジェクトの調整を図ること。
2.事業の仕組み
概 要
UNFPAは、被援助国である開発途上国の要望に応じ、直接またはWHO、UNDP、UNICEF、UNESCO等の国連機関及びNGOを通じて援助を実施している。
その活動資金は、各国からの任意拠出によって賄われている。2005年のコア拠出金総額は、約3億5,123万ドルである。
審査・決定プロセス
各国からの拠出金見込み額を基に、事業の4か年計画を策定し国別援助額を定め、これを基に各国にあるUNFPA事務所が中心となって、主要プロジェクトの概要を示した国別プログラムを策定する。国別プログラムは最高意思決定機関である執行理事会で審議・決定され、その後、被援助国政府等との協議を踏まえて具体的なプロジェクトを確定している。なお、行政予算は2年ごとに策定され、要すれば執行理事会で改訂がなされる。
決定後の案件実施の仕組み
UNFPAが自ら実施する事業の他に、国連の各専門機関やNGO等に委託して事業を実施している。近年開発途上国の自助努力を促すとの観点から、これら専門機関に代わって開発途上国政府自らがUNFPAの指導を得て事業を実施する傾向にある。
3.最近の活動内容
概 要
1994年のカイロでの国際人口開発会議(ICPD)で採択された行動計画及びMDGsに基づき、妊娠や出産、母子保健、家族計画、さらには性感染症・HIV/エイズの予防など、幅広い課題を含むリプロダクティブ・ヘルス(人間の生殖システム、その機能と活動過程のすべての側面において、単に疾病、障害がないというばかりでなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であること。すなわち、人々が安全で満ちたりた性生活を営み、生殖能力をもち、子供を産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを決める自由をもつことを意味する)を推進していくことを重要目標に掲げ、人口と開発、政策提言(アドボカシー)に重点を置いて援助を行っている。
地域別実績
UNFPAは、家族計画の推進に重点を置いているため、主に人口増加率の高いアフリカ及びアジア・太平洋地域への援助に向けられている。

主要な事業
●リプロダクティブ・ヘルス(特に青少年に重点)の改善(避妊具の供与、啓蒙活動等)
●妊産婦死亡率の改善事業(産婦人科関連機材の供与、医療関係者の訓練、保健・衛生キャンペーン等)
●緊急援助事業(UNHCR、WHO等との協調により、武力紛争、自然災害による人道的危機下における医療薬品・避妊具等の供与、緊急産科ケア保健・衛生教育等)
●HIV感染防止事業(コンドームの供与、HIV防止啓蒙活動等)
●国勢調査などの人口関連のデータ収集・分析・調査
●ジェンダー均衡の促進(情報収集・啓蒙活動等)
4.日本との関係
意思決定機構における日本の位置づけ
日本は、人口問題の重要性に鑑み、UNFPAに対して積極的な資金協力を行っており、1986年から99年まで第1位の、2000年以降は第2位、2005年は第4位の拠出国。また、最高意思決定機関である執行理事会の理事国も務めている。
邦人職員
UNFPAの専門職以上の邦人職員は、13名(専門職職員総数234名、2005年末現在)。事務局次長として和気邦夫氏が活躍しており、また、2002年9月に開設されたUNFPA東京事務所の初代所長に池上清子氏が就任した。
日本の財政負担
日本からのUNFPAのコア・ファンドへの拠出は、2004年は3,952万ドル、2005年は3,779万ドルであり、全コア・ファンドに占める拠出率は、それぞれ11.9%(第2位)及び10.7%(第3位)となっている。
主要拠出国一覧(コア拠出)

主な使途を明示した信託基金への拠出
2000年に日本はUNFPAに「インター・カントリーなNGO支援信託基金」を設け、2004年及び2005年には、それぞれ100万ドル拠出。
日本のODAとの協調実績
日本は、1994年にUNFPAとの間でマルチ・バイ協力を結び、1995年以来同協力を実施している。具体的には、日本が二国間技術協力の一環として、UNFPAと協力しつつ、開発途上国の家族計画の向上と妊産婦・新生児の死亡率・疾病率の改善を目的として、家族計画・母子保健活動に不可欠な避妊具・避妊薬、基礎的医薬品(抗生剤等)、母子保健キット(体重計、体温計、聴診器等)、分娩用関連機材等の人口・家族計画特別機材の供与とそれら機材の有効活用のための指導・助言・評価を行うものである。これまでにアジア(インド、パキスタン、インドネシア、フィリピン、スリランカ、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー、バングラデシュ)、アフリカ(モロッコ、セネガル、タンザニア、エチオピア、ガーナ、ザンビア)、中東(エジプト、トルコ)、中南米(ペルー、メキシコ、ボリビア)の21か国(2005年度まで、総額約17億713万円相当)において協力を実施してきている。
5.より詳細な情報
書籍等
●「世界人口白書」(国連人口基金編、日本語版 ジョイセフ発行)
世界の人口関連の指標、人口分野の問題の動向等を取りまとめている。例年秋に発行。
(財)家族計画国際協力財団(ジョイセフ)にて入手可能(1,050円)。
●「Annual Report」(国連人口基金編・発行)
国連人口基金の年間活動内容、財政状況等を取りまとめている。入手方法は下記ホームページを参照。
ホームページ
http://www.unfpa.org
http://www.unfpa.or.jp