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[6]国連児童基金(UNICEF:United Nations Children's Fund)
1.設立及び日本の協力開始の時期・経緯・目的
開始時期
1946年第1回国連総会決議(決議57(I))により設置。日本の同機関への資金協力は53年以来行われている。
経緯・目的
1946年第1回国連総会決議(決議57(I))により、戦争で被害を受けた児童の救済のための緊急措置として設置され、その後1953年第8回総会決議(決議802(III))により経済社会理事会の常設的下部機構となった。
設立の目的は、当初は第二次大戦によって荒廃した地域の児童に対する緊急援助を目的としたが、戦災国の復興に伴い1950年頃からは開発途上国の児童に対する長期的援助に重点が移っている。
2.事業の仕組み
概 要
保健分野を中心に栄養改善、飲料水供給、母子福祉、教育等児童に関する一般援助及び自然災害等の際の緊急援助を行っている。2005年の総収入は約27億4,700万ドルで総支出額は約21億9,700万ドル。このうち約19億6,600万ドルがプロジェクト支出に充てられている。また、地域別内訳は、サハラ以南のアフリカ地域45か国、アジア地域35か国、ラテン・アメリカとカリブ海地域35か国、中東・北アフリカ地域20か国及び中部・東部ヨーロッパ、独立国家共同体、バルト諸国22か国となっている。
審査・決定プロセス
UNICEFに対する各国からの拠出金は、[1]通常財源(行財政及び開発途上国に対する一般援助)及び[2]その他財源(特定プロジェクト及び自然災害の際の緊急援助)に振り分けられるが、前者への各国からの拠出金は、年に3回開催されるUNICEF執行理事会における執行理事国(36か国)間の審議を経て最終的に各国のプロジェクトへの割当が決定されるものであり、後者への拠出金は、基本的に拠出国のイヤーマークにより決定されるものである。
決定後の案件実施の仕組み
各被援助国にあるUNICEF現地事務所が、現地政府、他の国際機関、民間NGO等と協力しつつ、UNICEF執行理事会等で審議・決定されたプログラムに則って事業を実施する。
3.最近の活動内容
概 要
上記2.の概要を参照。
地域別実績
2005年のプログラム支出額を地域別にみると、プログラム本体の費用としてアフリカ地域7億2,800万ドル(37%)、アジア太平洋地域6億8,900万ドル(35%)、中近東・北アフリカ地域3億3,400万ドル(17%)、南北アメリカ・カリブ地域9,800万ドル(5%)、東欧・CIS・バルト諸国5,900万ドル(3%)となっている。
主要な事業
事業の分野別の内訳は、総合的な早期幼児ケア事業7億4,700万ドル(38%)、予防接種支援(ワクチン・機材供給、冷蔵輸送のためのコールドチェーンの提供等)及び栄養補助剤配布等の事業3億7,400万ドル(19%)、女児教育事業4億3,300万ドル(22%)、児童を紛争・搾取等から保護する事業1億9,700万ドル(10%)、HIV/AIDS分野における啓発活動、防止、ケア等事業1億5,700万ドル(8%)等となっている。
4.日本との関係
意思決定機構における日本の位置づけ
日本はUNICEFが果たす役割の重要性に鑑み、従来よりUNICEFの活動を積極的に支援してきており、UNICEFに対して可能な限りの資金協力を行うとともに、執行理事会のメンバーとして長年にわたりその政策決定に参画している。日本の2005年の政府拠出(通常財源への拠出)は世界第7位であり、日本の発言は右理事会の審議・決定等に大きく反映されている。
邦人職員
2006年9月現在、邦人職員数は53名である(幹部職員は5名)。2004年3月に丹羽敏之氏が事務局次長に就任。
日本の財政負担(暦年ベース)
日本のUNICEFの通常財源(コアファンド)への拠出は2005年は2,300万ドル、全コアファンドに占める2005年の日本の拠出の割合は5.0%である(米、北欧諸国等に次ぎ第7位)。

主な使途を明示した特定信託基金への拠出、活用状況
開発途上国の子どもの生存を確保し、その福祉向上を図ることは、開発途上国の長期的な社会開発を促進する上で重要であるとの考えの下、日本は、基礎的開発分野及び人道分野への協力を重視し、UNICEF活動の優先分野の1つである女児の教育分野における活動を支援するため、UNICEFのサプリメンタリー・ファンドに対して1995年度より2001年度まで、毎年100万ドルを拠出し、アジア及びアフリカの女子教育プログラムを実施した。
2002年からは、本拠出による協力分野を「児童の保護」分野にも拡大し、毎年90万ドルを拠出の上、2002年度は、人身取引の犠牲となった女児への支援活動(ミャンマー)及びFGM(女児性器切除)廃絶のための活動(スーダン)、2003年度はイラク人道・復興支援の一環として水供給活動、2004年度はインドネシアの出生登録活動、2005年度はタイ、フィリピンの児童の人身取引対策のための活動を支援した。
日本のODAとの協調実績
日本は1989年からUNICEFとのマルチ・バイ協力を実施してきている。この協力においては、主に開発途上国予防接種率拡大とポリオ根絶に対して、ワクチンやコールド・チェーン機材等の支援を行ってきた。この結果、2000年10月には西太平洋地域におけるポリオ根絶宣言がなされた。しかしながら、南西アジア、アフリカを中心に未だ多数の患者が発見されている。日本としては全世界からのポリオ撲滅まで、援助を続けていく所存であり、UNICEFとの間に1988年から東京(外務省)とニューヨーク(UNICEF)と交互に定期協議を開催し、供与対処国の選定等について意見交換を行っている。
2005年度におけるUNICEFとのマルチ・バイ協力の実績(実施計画額)は約8億4,750万円にのぼっている。
予防接種拡大計画:約3億1,880万円
ポリオ根絶:約2億3,680万円
母と子どもの健康対策:約2億9,190万円
ポリオについては、カンボジア、ネパール、タンザニア、ケニア、ブルキナファッソ、ニジェール、ウズベキスタンに対し援助を行っている。
また、感染症対策無償や子どもの福祉無償の中で、UNICEFを経由する形で、小児感染症予防計画等の無償資金協力を実施している。
ユニセフ経由感染症対策無償:68億2,500万円(2005年度)
ユニセフ経由子どもの福祉無償:6億2,800万円(2005年度)
さらに、日本はUNICEFを通じて、紛争や自然災害に起因する緊急支援を実施しており、2005年度は以下の拠出を行った。
ウガンダ人道支援(北部国内避難民児童支援) 927万ドル
シエラレオネ人道支援(復興プロセス支援) 473万ドル
ルワンダ人道支援(北部水衛生、保健分野支援) 135万ドル
インドネシア人道支援(ポリオ予防接種支援) 180万ドル
スーダン人道支援(南部初等教育支援) 860万ドル
パキスタン人道支援(パキスタン大地震災害対応) 250万ドル
5.より詳細な情報
書籍等
「ユニセフ年次報告」(日本語版)
UNICEFの事業実績を取りまとめている。日本UNICEF協会に電話(03-5789-2011(代))又はFAX(03-5789-2032)にて注文する。無料。
ホームページ
http://www.unicef.org(UNICEF本部)
http://www.unicef.or.jp((財)日本UNICEF協会)