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[4]国連教育科学文化機関(UNESCO:United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization)
1.設立及び日本の協力開始の時期・経緯・目的
開始時期
1946年11月設立。日本の同機関への資金協力は1951年(日本のUNESCO加盟)以来行われている。
経緯・目的
UNESCOは、1945年11月、ロンドンにおいて採択されたユネスコ憲章(1946年11月発効)に基づき、教育、科学、文化における国際協力を通じて世界の平和と人類の福祉に貢献する国際機関として設立され、1946年12月、国際連合との間に協定を締結し、国際連合と連携関係を持つ国連専門機関となった。
UNESCOの目的は、ユネスコ憲章第1条1項により、「国際連合憲章が世界の諸人民に対して人種、性、言語または宗教の差別なく確認している正義、法の支配、人権及び基本的自由に対する普遍的な尊重を助長するために教育、科学及び文化を通じて諸国民の間の協力を促進することによって、平和及び安全に貢献すること」と定められている。
2.事業の仕組み
概 要
UNESCOは、教育の普及、科学の振興、文化遺産の保護と活用、情報流通の促進等のために、規範・ガイドラインの策定、共同研究、会議・セミナーの開催、出版物の刊行、開発途上国援助等の活動を行っている。
その活動資金は、各加盟国からの分担金、任意拠出金によって賄われており、2006―2007年(一会計年度は暦年2年間)の通常予算(加盟国の分担金)は6億1,000万ドル、2005年の通常外予算(加盟国からの任意拠出金等)は約3億7,259万ドルである。
審査・決定プロセス
年に2回開催される執行委員会(58か国で構成)で、次期総会(総会は2年に1度開催)に提出される事務局作成の事業計画案を審議、総会でかかる事業計画案を承認する。
決定後の案件実施の仕組み
4年の任期で選出される事務局長の監督の下、事務局及び各地域事務所がこれを実施する。また、UNESCO活動は多数のNGO、学術機関等国際的民間団体によっても支えられている。
3.最近の活動内容
概 要
2002年から2007年までの中期戦略において「共通善の擁護」「多様性の強化」「知識の共有促進」を3つの戦略支柱として設定し、各事業領域にまたがる重要テーマとして「貧困撲滅」「教育、科学、文化の発展及び知識社会建設への新情報通信技術の貢献」を設定。これら基本戦略を具体化するために策定された2006―2007年事業予算では、「万人のための基礎教育」、「水科学を通じた水保護」、「世界の文化遺産の保護」等が最優先事業となっている。
2006―2007年の通常予算のうち事業実施に割りあてられている額は3億7,839万ドルである。
地域別実績
UNESCOは1996―1997年事業計画から、女性、青年、LDC諸国、アフリカの4つの分野を重点分野としており、地域別ではアフリカ等に重点を置いている。
主要な事業
UNESCOの事業予算の分野別の内訳は、教育分野に28.5%、科学分野に22.9%、文化分野に13.4%、情報分野に8.7%が振り向けられている。
日本の協力の主な案件例は、各分野別に以下の通り(数字は2005年の予算額)。
(1)教育分野
(イ)初等教育・識字教育
万人のための教育(EFA)の目標達成のため、識字教育事業、初等教育のカリキュラム開発のための人材養成セミナー等を実施するための「万人のための教育信託基金」に1億100万円拠出。
(ロ)教育開発協力
アジア・太平洋地域諸国における教育制度・内容・方法の革新に協力するために、APEID(アジア・太平洋地域教育開発計画)協同センター(帯広畜産大学、宮城教育大学、筑波大学、東京学芸大学、広島大学、国立教育政策研究所等)においてセミナーを開催。
(ハ)国際理解教育
「ユネスコ協同学校」など、小中高等学校における国際理解教育の促進。
(ニ)エイズ教育
アジア・太平洋地域におけるエイズ予防教育事業への支援として、「エイズ教育特別信託基金」に650万円拠出。
(ホ)持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)
2005年より開始された国連「持続可能な開発のための教育の10年」の提案国としてその主導機関であるUNESCOに貢献するための「持続可能な開発のための教育信託基金」に2億円を拠出。
(2)科学分野
(イ)自然・社会科学事業
海洋学分野の研究・観測・訓練活動に貢献するため「西太平洋海域共同調査(WESTPAC)信託基金」に700万円、UNESCOの科学事業「国際水文学計画(IHP)」、「政府間海洋学委員会(IOC)」、「人間と生物圏(MAB)計画」等の事業支援を行うための「ユネスコ持続可能な開発のための科学振興事業信託基金」に1,800万円を拠出。
(ロ)科学技術の倫理的側面に関する考察
生命倫理に関しては、各国の立法措置や政策立案の際の基本的・普遍的な枠組みを提供することを目的とする規範設定活動に協力している。2005年12月には、東京で日本政府、UNESCO等の主催のもと、第12回UNESCO国際生命倫理委員会(IBC)をアジアで初めて開催し、第33回UNESCO総会(2005年(平成17年)10月)で採択された「生命倫理と人権に関する世界宣言」の実施に向けた課題や、アジアの観点から生命倫理の今日的問題と国際性について議論が行われた。
(3)文化分野(文化遺産保存事業)
世界の文化遺産や各国の無形文化財の保存のため、「文化遺産保存信託基金」に1億6,050万円(2005年度)、「無形文化財保存振興信託基金」に約8,560万円(2005年度)を拠出している。
(4)コミュニケーション
デジタルディバイドの解消とそのための情報へのグローバルアクセスを確立するため「情報コミュニケーション事業(IFA)信託基金」に291万円を拠出。
(5)その他(人材育成)
UNESCOが行う開発途上国の人材育成事業への協力、最近では、万人のための教育(EFA)目標の達成、「教育」や「水」分野のミレニアム開発目標(MDGs)の実現を目的とした活動等を支援するために、「ユネスコ人的資源開発日本信託基金」に約4億4,700万円(2005年度)を拠出している。
4.日本との関係
意思決定機構における日本の位置づけ
日本は、UNESCO加盟翌年の1952年以来連続して執行委員国をつとめており、UNESCOの予算、事業内容の策定過程及び管理運営に直接関与している。
邦人職員
2006年1月現在72名であり、1999年11月に松浦晃一郎氏が第8代事務局長に就任し、2005年10月に再選された。
日本の財政負担
2006年においては、日本は第2位の分担金負担国。分担率は19.572%であり、2005年度は分担金として約67億円を負担。分担金拠出額第1位は米国、第3位はドイツである。
主要分担国一覧

主な使途を明示した特定信託基金への拠出、活用状況
(1)1989年、日本は人類共通の文化遺産である世界各地の文化遺産の保存・修復等に協力するために「ユネスコ文化遺産保存日本信託基金」を設立し、2005年度末まで累計4,866万ドルを拠出している。中でもアジアにおける世界的な文化遺産として日本でも広く知られるカンボジアのアンコール遺跡、アフガニスタンのバーミヤン遺跡の保存修復事業等を積極的に推進している。
(2)1993年には、人類共通の財産である無形文化財(音楽・舞踊等の伝統芸能、漆芸・陶芸等の伝統工芸及び口承文芸等)を保存・振興し、後世に残すため、「ユネスコ無形文化財保存振興日本信託基金」を設立し、2005年度末まで累計約1,164万ドルを拠出している。
(3)2003年には、世界の学生・教員等を対象に相互交流を推進し、国際理解を深めることを目的として、「ユネスコ青年交流信託基金」に3億円を拠出。また、UNESCOが行う開発途上国の人材育成事業に協力するため、2000年に「ユネスコ人的資源開発日本信託基金」を新設し、2005年度末までに累計約4,000万ドルを拠出した。
日本のODAとの協調実績
日本は、従来UNESCO総会、同執行委員会等の議論への積極的な参画を通じて、教育、科学、文化、コミュニケーションの各分野での国際協力の実現等に尽力してきているが、特に、重点分野であるEFA目標の実現、水問題への取組み、文化遺産の保護の促進等については、UNESCOに設置した各種日本信託基金及び二国間援助を通じて、独自の支援を行っている。
また、限られた援助資金を効果的かつ効率的に執行するとの観点から、UNESCOに拠出している日本信託基金と日本の二国間援助とをうまく組み合わせることにより、相互の補完性を高め、日本の顔がよく見えるような形で援助が行われるよう努めている。例えば、文化遺産の保護の分野では、アンコール遺跡(カンボジア)、バム遺跡(イラン)等に関し日本信託基金を通じた保存修復事業と二国間援助による機材供与が相乗効果をあげている。
5.より詳細な情報
書籍等
●UNESCO Courier(年2回刊行を目途)
●Copyright Bulletin(季刊)
●Prospects(季刊)
●Museum International(季刊)
●World Heritage Review(季刊)
ホームページ
UNESCO URL http://portal.unesco.org
(英・仏・西・露・中国・アラビア語)
(社)日本ユネスコ協会連盟
URL http://www.unesco.jp
(日本語、英語)
(財)ユネスコ・アジア文化センター
URL http://www.accu.or.jp
(日本語、英語)