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[4]独立行政法人 日本貿易振興機構(JETRO:Japan External Trade Organization)
1.事業の開始時期・経緯・目的
開始時期
独立行政法人日本貿易振興機構(以下、JETRO)は、日本貿易振興会(1958年設立)の業務を引き継ぎ、2003年10月独立行政法人日本貿易振興機構法に基づき新たに設立された。
経緯・目的
JETROは、日本の開発途上国における経済活動(貿易・投資・技術提携)を拡大するとの観点から、開発途上国の輸出産業育成・対日輸出促進等を支援するために、開発途上国貿易促進協力事業を展開してきた。一方、アジア経済研究所はアジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカ等の経済、政治、社会に関する諸問題について、基礎的かつ総合的な調査研究を行い、その成果を普及し、もってこれらの地域との貿易の拡大及び経済協力の促進に寄与することを目的として1960年に設立され、1998年にJETROと統合後は、貿易・投資振興並びに地域・開発・経済協力を推進するJETROの附置研究機関として位置づけられた。
その後、時代の要請に対応し、開発途上国への投資促進や裾野産業育成等の産業基盤強化、環境面での技術協力など、事業の充実化を図ってきている。
2.事業の仕組み
概 要
対日アクセスの円滑化や、我が国企業に対する海外の事業活動円滑化支援等を目的として、専門家派遣や研修員受入れ、展示会開催を行う。また、開発途上国・地域を対象とする調査研究、資料収集、情報提供、研究交流、人材育成を行う。
審査・決定プロセス
現地の貿易振興機関、商工会議所等のカウンターパートのニーズを海外事務所を通じて把握し、案件の内容、実現性、日本の産業界や進出日系企業群等のニーズとの関係や効果及び地域的バランス等を十分に検討、選定し、JETRO本部がこれを決定する。
アジア経済研究所においては、調査研究懇談会、研究所業績評価委員会及び定点観測ネットワーク(外部有識者へのアンケート調査)における意見等により最新の社会的ニーズを把握し、それらを踏まえた上で調査研究方針を決定する。それに基づき提出される各調査研究課題案を研究企画委員会において審査し、最終的に研究所が決定する。
決定後の案件実施の仕組み
案件の決定後、JETRO本部及び海外事務所とカウンターパートとの密接な連携のもと、国内外で事業を実施する。
アジア経済研究所においては、各調査研究課題をベースに研究会を組織し、大学等の専門家を交えた研究会活動、海外共同研究、現地調査、資料収集等を実施し、その研究成果を報告書等として刊行する。
3.最近の活動内容
概 要
(1)対日アクセスの円滑化
開発途上国等の産業構造の高度化を図り、日本企業・進出日系企業の取引相手先の選択肢を拡大するため、開発途上国等の輸出産業・裾野産業の技術レベルが実際に向上することを目指し産業育成への支援を行う。
(2)我が国企業に対する海外の事業活動円滑化支援
新たに形成されつつある東アジア経済圏において日系企業が円滑に事業展開することは、日本の産業全体としての発展に不可欠である。近年の日本の中堅・中小企業や進出日系企業のニーズを踏まえ、中国を中心に東アジア各国での事業展開を強化し、各地域において(ア)既に進出し、操業を開始している日系企業、(イ)既に進出を決定し具体的な準備作業に入っている日本企業に対し、円滑かつ迅速に業務を開始・維持・拡大するための支援を強化する。
経済連携に向けた世界的な動きが活発化する中、日本とアジア諸国が共に持続的な成長を遂げるためには、各国相互の利益となる経済システム・制度の整備を通じて、アジアの経済連携を推進していくことが必要となってきている。中でも基準認証の制度整備・共通化、物流の効率化、環境保護・省エネルギーの推進、知的財産権の保護等が重要な課題となっている。これを踏まえ、開発途上国等における各種制度の整備・運用の改善が実現することを目指して本活動を行う。協力対象の選定にあたっては、相手国政府の要望と当該国で活動する日本企業(日系企業を含む)への裨益度を勘案して決定する。
(3)開発途上国経済研究活動
[1]開発途上国に関する調査研究
アジア経済研究所の中核的活動。開発途上国・地域及び開発問題に関する基礎的かつ総合的研究、政治・経済動向分析、経済協力調査、統計解析等の調査研究を実施する。
[2]開発途上国に関する資料収集・情報提供
●研究所図書館
開発途上国・地域の経済、政治、社会に関する基礎的な資料・情報を収集・整理し、広く国内外の研究者などに提供する事業
●成果普及
研究所の研究成果を官庁、学界、国民各層に幅広く提供し、政策形成、開発途上国理解の促進に資するための事業
[3]開発途上国に関する研究交流・人材育成
●研究交流
各種の研究プロジェクトの実施、国際シンポジウムの開催、研究者の招へい、職員の海外派遣等を通じて国際的な研究ネットワークの構築・拡充を図る事業
●人材育成
開発途上国研究に関する蓄積と人的資源を活用し、開発途上国の経済・社会開発に寄与する高度な知識を有する開発専門家を育成する事業
地域別実績

主要な事業
(1)対日アクセスの円滑化
[1]進出日系企業部品調達支援分野
日本企業の海外進出に伴い、現地で操業する日系企業にとって、現地調達率の向上がコスト低減や納期短縮などの観点で重要性を増している。特に自動車部品については、アジアやメキシコ、南アフリカ共和国などで支援を実施し、日系企業の活動をサポートした。
●メキシコでの事例
メキシコ経済省、メキシコ日本商工会議所、JICAなどと協力し、専門家による生産管理、在庫管理、生産効率向上などを指導した。
●インドでの事例
過去3年間、専門家派遣を通じて現地金型プレス成形・金型/プラスチック成形・金型企業に対する指導をインド自動車工業会(ACMA)・日本自動車工業会(JAMA)などと連携して実施した。
[2]有望輸出産品発掘支援分野
開発途上国の伝統産品や食品など対日輸出に向けた商品選定やデザイン改良指導、マーケティング支援を行った。日本市場でのモニタリングや展示商談会の開催を通じてビジネスマッチングを行い、途上国企業の対日アクセスを支援した。
●シアバター:JlCAと連携してアフリカからの対日輸出を支援
ガーナ・ナイジェリアにおいてシアバターを対象に専門家を派遣し、ガーナではJICAとの連携を図りつつ、対日輸出に向けた改善を指導した。この結果、欧州から間接輸入していたシアバターをガーナから直接日本に輸入する企業が現れ、今後、日本市場でシアバター製品の販路拡大が期待される。
●メコン展を中心としたメコン地域とのビジネス活性化支援
メコン展は、15年12月に東京で開催された日本・ASEAN特別首脳会議において小泉首相がメコン地域開発のための日本の経済支援を表明し、「日本・ASEAN行動計画」が合意されたのを受け、ASEAN新規加盟国に対する協力支援の一環としで18年2月に開催したもの。案件発掘専門家を派遣し、有望企業・サンプルを発掘。カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、ミャンマーから51社(うち20社はサンプル品の出展のみ)が出展し、商談を行った。また、5か国代表によるメコン・ビジネス投資セミナー、「CLMV諸国の開発展望;期待高まる工業化への歩み」セミナーを併催した。
●「一村一品マーケット」を通じた日本マーケットヘのアクセス支援
「開発途上国一村一品キャンペーン」の一環として途上国産品の「一村一品マーケット」を以下のように展開した。
・国際空港に随時オープン(成田空港3/25、関西空港4/1、中部空港4/9、羽田空港5/20)。
・18年7月から9月まで仙台、北九州において展示。
・18年9月にはアフリカン・フェア(大アフリカ開発パートナーシップ展)を開催。
●日本デザインの遺伝子展を開催:デザイン分野における人材育成の支援に寄与
過去3年間にわたりタイの一村一品運動に協力してきた中で、デザイン振興の重要性が認識された結果、タイ政府は首相府直轄の機関となるデザインセンターを17年11月に設立した。ジェトロは、デザイン分野の人材育成を図りたいとするタイ政府の要請を受け、日本の産業デザインの背景、特性を紹介する展示会を同センターにおいて開催した。
(2)わが国企業に対する海外の事業活動円滑化支援
[1]わが国企業・進出日系企業の海外事業展開支援
●進出日系企業の相談対応、個別支援
中国に設置した「進出企業支援センター」(駆け込み寺)で進出日系企業の相談に応じるなど、日系企業の海外事業展開を支援した。
●海外ビジネスサポートセンター
現地政府とタイアップした現地進出のためのワンストップセンターを運営(バンコク、マニラ)。オフィス機能のハード面とアドバイザー企業のソフト面に加え、入居企業、日系企業間の交流の場を提供した。
[2]進出日系企業の事業改善のための提言活動
●在外・現地日本人商工会議所等と密接な連携を取りつつ、現地政府等に対する意見具申に関する意見集約、提言活動を実施した。
[3]開発途上国の各種制度整備・運用への協力
●日本の環境関連制度を東南アジアヘ普及
14年度にタイにて日本の「公害防止管理者制度」をモデルとした「産業環境管理者制度」の構築支援及び運用支援を実施。タイでの成功事例を他国に波及させるべく、17年度にはインドネシア西ジャワ州にて「公害防止管理者制度」を立ち上げた。日本の環境関連制度が東南アジアに普及し、日系企業のビジネス環境整備につながることが期待できる。
●貿易投資円滑化のための専門家派遣
わが国企業の活動の円滑化を図るため、アジアの開発途上国における貿易手続等の制度・ルール整備等の推進と産業育成支援を実施した。17年度には、[1]知的財産の保護、[2]基準認証の制度構築[3]物流の効率化、[4]環境・省エネ、[5]産業人材育成の5分野を重点分野に、延べ111名の専門家を派遣した。
●先導的貿易投資環境整備実証事業
アジアの開発途上国において、日本の経済諸制度・システムを先導的なモデルとして導入し有効性を検証する実証事業を実施し、スタンダード化を支援した。
(3)開発途上国経済研究活動
[1]開発途上国に関する調査研究
研究課題を重点研究、プロジェクト研究、機動研究、基礎研究に分類し、調査活動を実施した。
●重点研究
中期目標・計画において研究所が総力を挙げて重点的に取り組むべきものとして実施する研究。2005年度は以下の3本の柱に基づく調査研究を実施した。
・「東アジアの地域統合」研究
・アジア域内経済関係展望研究
・CLMV開発展望研究
●プロジェクト研究
研究所がこれまで長期にわたって継続的に実施してきた研究。2005年度は以下の5本の柱に基づく調査研究を実施した。
・アジア諸国の動向分析
・アジア工業圏経済予測
・アジア諸国の産業連関構造研究
・貿易統計の収集・整備・応用
・経済協力支援基礎調査事業
●機動研究
年度当初に設定する課題ではフォローできない国際情勢の変動に対し、国内外の関心の高い問題に随時対応するための研究。2004年度は7研究会を通じて、調査活動を実施した。
・「胡錦濤政権と第11次五か年計画の課題」研究会 等
●基礎研究
アジアから中東、アフリカ、中南米等の開発途上国・地域が直面する政治、経済、社会等多様なテーマについて深く掘り下げて、基礎的・総合的に実施する研究。2004年度は30研究会を通じて、調査活動を実施した。
・「ベトナムの工業化と地場企業」研究会 等
[2]開発途上国に関する資料収集、情報提供
●研究所図書館
2005年度は、適切な蔵書の構築と整備、遠隔地利用者及び非来館利用者の利便性向上のための新着アラートサービス登録件数の増加、図書館利用者に対するサービスの充実について重点的に取り組んだ。また、研究論文を全文データベース化し、インターネットを通じて提供するシステムの構築を開始した。
●成果普及
出版物は発行点数の増加を図るとともに外部商業出版を積極的に開拓し、販売ルートの拡充に務めた。また、定期刊行物ディスカッション・ペーパーのウェブ上での全文公開を推進する等、国内外に向けた情報発信の強化を図った。セミナーは海外講演会、会員向け講演会等開催形態を多様化し、質量ともに充実させた。
[3]開発途上国に関する研究交流・人材育成
●研究交流
2005年度はコロンビア大学のバグワティ教授等を招へいして、アジアにおける経済統合とインドを取り上げた国際シンポジウムを開催した。また、世界銀行の国際会議への参加や、学術交流協定を積極的に締結する等、大学・国際機関・研究機関等との協力、連携を強化し、開発途上国研究ネットワーク構築を推進した。
●人材育成
2005年度は日本人・外国人研修生の受入、授業、海外派遣等を行うとともに、これまでに研修を終え、自国で開発関連分野の業務に携っている行政官等に自国で直面している諸問題の解決に寄与するため、日本でフォローアップ研修を実施した。また、JICA主催の「国際協力を志す人のためのキャリアフェア」に参加し、模擬講義等を行った。日本人修了生を講師とする「開発問題セミナー」を実施した。
4.より詳細な情報
独立行政法人日本貿易振興機構のホームページ
http://www.jetro.go.jp/indexj.html
http://www.ide.go.jp/