前頁前頁  次頁次頁


囲み II-1 開発における女性支援-日本の支援の事例

パキスタン等大地震に対する国際緊急援助隊派遣
 2005年10月に発生したマグニチュード7.6の大地震により、大きな被害を受けたパキスタンに対して、日本は国際緊急援助隊を派遣しました。緊急援助隊が派遣されたパキスタンはイスラム教国であり、女性は男性医師の診断を受けたり、男性スタッフと応対することに心理的な抵抗を感じることが少なくありません。
 このような地域において、女性被災者が抵抗なく緊急医療サービスを受けることができるようにするため、今回の緊急援助隊編成にあたっての男女比率は3対2とし、出来るだけ同性のスタッフが対応することにしました。また、女性患者が診療を受けやすくするため、診療所の受付と待合室を男女別に区切るという工夫をしました。
 こうした取組の結果、男女別受診率は、男性54%、女性46%となり、多くの女性が受診することが出来ました。

女性医師による女性被災者の診療の様子(写真提供:JICA)
女性医師による女性被災者の診療の様子(写真提供:JICA)

円借款事業における取組み
 日本はODA事業において、男女の平等に配慮しており、これは政府開発援助(ODA)大綱の基本方針に明記されています。
 具体的には、事業計画・実施に関する住民との協議に男性とともに女性が参加できるような仕組みを強化しています。例えば、ベトナムのファンリー・ファンティエット灌漑計画では、事業に関する説明会において男女が発言する機会を確保しました。説明会では、用地取得に伴う補償のように男女双方に関係する話、生活用水の確保や家庭排水の処理の問題などで、女性の視点に立った意見が出されました。ここでの話し合いを踏まえ、本事業では、井戸や汚水漕の設置などを事業計画に取り入れました。

事業予定地の住民たち(ベトナム)(写真提供:JBIC)
事業予定地の住民たち(ベトナム)(写真提供:JBIC)

「ジェンダーとミレニアム開発目標(MDGs)」プロジェクト(UNDP・日本WID基金)
 MDGsの達成のためには男女平等の推進が不可欠です。日本はUNDPに設置した日本WID基金を通じて、ケニア、モロッコ、カンボジア、キルギス、ペルーの5か国を対象に、MDGs達成に向けて男性だけでなく女性の意見も政策に反映させるためのプロジェクトを支援しています。
 例えばケニアでは、アフリカ女性による「ミレニアム・イニシアティブ」の発足を支援し、ケニアの女性50人とアフリカ10か国からの参加者が、政府や国連関係者に自らの懸念や考えを訴える機会をつくりました。また、貧困地域に住む女性達の声が地方政府レベルの貧困削減政策に反映されるように活動した結果、地域レベルのジェンダー平等化計画の作成に結びつきました。
 このような女性に焦点を当てた活動の結果、ケニアの2005/2006年予算では、とうもろこし粉や食用油などの生活必需品への付加価値税を廃止するなど、女性の希望を入れた予算編成となり、女性の意見を政策に反映させることが出来ました。

MDGsと貧困についてインタビューを受ける村落女性(ケニア)(写真提供:UNDP)
MDGsと貧困についてインタビューを受ける村落女性(ケニア)(写真提供:UNDP)


前頁前頁  次頁次頁