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8.欧州
 日本の欧州に対する2005年の二国間援助は、約3億2,061万ドルで、二国間ODA全体に占める割合は3.1%です。
 中・東欧諸国は、1989年の共産主義体制崩壊後、市場経済化・民主化に向けた取組を開始しました。これらの動きに対し、EUが主導するG24(対東欧諸国支援関係国会合)が発足、日本も国際社会の動きに同調し、それ以来長年にわたり中・東欧、バルト諸国に対する支援を実施してきています。
 現在、中・東欧諸国の中でも発展の度合いは地域によって大きく異なっており、バルト3国を含む8か国(ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、スロベニア、ラトビア、リトアニア、エストニア)は、各国からの支援を得つつ積極的な国内改革を推し進めた結果、2004年5月にEU加盟を果たしました。日本からも継続的かつ多岐にわたる支援を行うことによって、体制移行に伴う経済的・社会的困難を経験した市民の生活を改善し、安定的な体制転換に協力してきました。現在、既にこれらの新規EU加盟国が被援助国から援助国へと転換しつつあり、欧州地域に対する支援環境も変化してきています。こうした中、日本の支援の役割も変化し、よりニーズの高い地域や分野に援助をシフトしていく必要があり、欧州地域における援助重点国についても、ボスニア・ヘルツェゴビナやセルビア・モンテネグロなどの西バルカン地域やウクライナ、モルドバなどのさらに開発の遅れた国々に援助の重点を移しつつあります。
 上記新規EU加盟8か国及び2007年にEU加盟を予定しているブルガリア及びルーマニアといった国に対しては、それら各国の経済発展の段階に合わせ、より成果に結びつく効果的かつ効率的な支援を行う必要があり、さらには経済発展の進んでいる国に対してはODA卒業を視野に入れつつ二国間協力のあり方について模索していく必要があります。今まで行われてきたODAの成果を民間企業間また大学等研究機関間の協力に結びつけたり、被援助国から援助国へと転換しつつある国に対しては、日本の援助国としての経験を共有する等の協力をしていく考えです。
 その一方で、1990年代の紛争によって大きな被害を受けた西バルカン地域では、ようやく復旧・復興段階を脱して将来のEU加盟を目指しつつ、開発段階へと移行しています。2004年4月、日本は、EU議長国であるアイルランドと共同で、西バルカン各国閣僚、ドナー各国、国際機関の参加する「西バルカン平和定着・経済発展閣僚会合」を東京で開催しました。その中で、日本は、民族融和を通じた平和の定着や持続可能な経済発展の重要性を強調し、西バルカン地域が共通して抱える組織犯罪や高失業率などの課題に対し、地域が域内協力を進めながら取り組む必要性を訴え、日本としてもそのための努力を引き続き支援していくことを表明しています。
 西バルカン地域に対しては、紛争により破壊されたインフラの整備や、保健・医療分野に重点を置いた支援を従来から行ってきましたが、その発展の段階に合わせ、市場経済化に資する支援として投資促進のための専門家の派遣や中小企業振興や貿易促進のための研修などの協力も進めています。さらに、平和の定着の観点から、セルビア・モンテネグロ及びコソボに対しては治安強化対策として警察官を招へいした研修を行なったり、ボスニア・ヘルツェゴビナでは、地雷除去活動を行うNGOへの支援やIT教育を通じた民族融和のための支援等を行なったりしています。バルカン地域共通の課題である環境分野については、専門家の派遣や研修等の支援を行っているほか、マケドニア及びアルバニアにおいては、土壌汚染や下水汚染を改善するための開発調査による協力を行っています。
 旧ソ連欧州部にあるウクライナでは、2004年12月にユーシチェンコ政権が成立し、民主化が進展する中、2005年7月に同大統領が訪日し、さらに2006年7月には麻生外務大臣がウクライナを訪問するなど、日本との二国間関係が深まったものになっています。こうした動きを受けて、日本も国際社会と協調しつつ、ウクライナの一層の民主化、市場経済化に向けた努力を支援することとしています。2004年度には、「キエフ・ボリスポリ国際空港拡張計画」に対して円借款による協力を行い、2005年度には経済構造を改善するための無償資金協力を行いました。また、欧州地域で最も発展が遅れているモルドバに対しては、同国の主要産業である農業分野に対して、これまで貧困農民への支援として農業機械・機具の供与を行っており、同国の農業自給率に大きく貢献しています。今後も引き続き支援を行っていく考えです。

図表II―33 欧州における日本の援助実績

図表II―33 欧州における日本の援助実績


日本の無償資金協力によって建設された、ドボイ橋の完成式典に出席する松島外務大臣政務官(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
日本の無償資金協力によって建設された、ドボイ橋の完成式典に出席する松島外務大臣政務官(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
アルバニア共和国との技術協力協定に調印する岩屋副大臣

アルバニア共和国との技術協力協定に調印する岩屋副大臣
アルバニア共和国との技術協力協定に調印する岩屋副大臣


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