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column II-14 支援からパートナーシップへ:NGOと政府の新たな関係を求めて ~(特活)国際協力NGOセンター(JANIC) 高橋良輔さん~


 草の根レベルの国際協力を行うNGOは、開発途上国への援助において、政府とはまた異なる視点に基づく貴重なノウハウを有しています。特定非営利活動法人国際協力NGOセンター(JANIC)は、こうしたNGOが多数加盟する日本最大のネットワークNGOとして、NGOの活動情報の発信や専門性を高める研修の実施、さまざまな調査と関係機関への提言、そしてNGOと他機関との連携を通じて、市民による国際協力の促進と強化に努めています。
 このJANICがNGOの知見や経験をODAに反映し、またNGOと政府の継続的な意見交換の場として重視しているのが、1996年から始まったNGO・外務省定期協議会です。JANICは他のネットワークNGOとともにこの協議会事務局を担い、多様な分野や地域で活動するNGOの意見を幅広く汲み上げてきました。ここ数年間は、政府のNGO支援策である日本NGO支援無償資金協力やNGO活動環境整備支援事業について具体的な改善を提案し、NGOと外務省共同の勉強会も積み重ねて、建物や機材供与などのハード支援偏重からの転換、現地NGOとのパートナー型事業への支援、NGOのニーズに応じた研究会の拡充などをはかっています。
 こうしたなか、現在NGOと政府の関係は大きく変わりつつあります。両者にはさまざまな見方や立場の違いがあるものの、これまでの10年間の対話からも、NGOと外務省が共同で援助の質を検証するNGO・外務省共同評価やNGO・JICA協議会など、政府とNGOの協力の形が生み出されてきました。また、2006年の連携推進委員会では、NGOと外務省が協力して国際協力の重要性を市民に伝える広報連携や、NGOの事業に関する援助効果の共同検証、草の根・人間の安全保障無償資金協力の質的向上に日本のNGOが寄与する可能性、そして中長期の連携のあり方が検討されています。そこでは、NGOが政府から支援を受けるという従来の枠組みを超えて、両者が互いの強みを持ち寄る新たな協力関係の模索が始まっているのです。
 さらに世界に目を向けると、英国では、ミレニアム開発目標 (MDGs)達成に向けて政府とNGOが包括的なパートナーシップ・プログラム合意(PPA)を結び、ネットワークNGOが政府の援助政策へのコンサルティングも行っています。日本でも援助の実施レベルだけではなく、援助政策のアジェンダ設定や制度構築も含めた早い段階から、NGOと政府が緊密な意見交換を行ない、南の人々も含めた市民社会の声を援助の政策に反映していくことが求められています。
 現在進められているODA改革はもちろん、2008年に開催されるG8サミットや第4回アフリカ開発会議(TICADIV)、さらには2015年のMDGs達成に向けて、日本の援助政策に対する国内外の市民の関心は高まっていくことが予想されます。こうした世界的な潮流のなかで、支援からパートナーシップへの転換がいかなるかたちで実現されるのか、日本の市民社会と政府との関係はいま大きな曲がり角にさしかかっているのです。


2006年9月30日に日比谷公園で開催された「グローバルフェスタJAPAN」でのブース。期間中6万6,700人がフェスティバルを訪れた。(写真提供:JANIC)


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