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6 カナダ

(1)援助政策等
 カナダ政府は、2005年4月、『対外政策に関する基本方針』(International Policy Statement)を発表した。この『基本方針』は総論に加えて外交、開発、国防及び通商の4分野から構成されるが、開発分野については、ここ数年来カナダ政府が進めてきた援助政策の全般的見直しの議論を総括する位置づけともなっており、援助対象国と対象分野を絞って限られた予算と資源を重点的に投入することにより、援助効果を最大限発揮するとの方針が初めて具体的に明示されたとの意義を有している。
 この『基本方針』においては、MDGsの達成を指針としつつ、重点対象分野として、「良い統治」、「保健(HIV/エイズに重点)」、「基礎教育」、「民間セクターの発展」及び「持続可能な環境」の5分野が示され、ジェンダーはその横断的テーマとされた。
 また、重点対象国(パートナー)として、アフリカ14か国を含む25か国が選定され、今後、二国間援助の3分の2を集中することとしている。これらの国々は、貧困の度合い、被援助国の吸収能力に加え、カナダのプレゼンスを維持できることを基準として選定されている。この基準に該当しない国については、イラク、ハイチ、アフガニスタン、スーダン等の「破綻国家・脆弱国家」や、外交的重要性を有する国ないし中東欧諸国等の移行国への支援は引き続き実施するが、それ以外の国への二国間援助は徐々に終了させ、国際機関やNGOを通じた支援に一本化するとされている。
 更に、この『基本方針』においては、平和構築のための新たな取り組みも反映されている。2004年、体制移行国等における「良い統治」分野における専門家派遣の実施母体として「カナダ・コー(Canada Corps)」を設立し、政府各部門及び民間の専門家を統一した高度な専門性を有するチームとして派遣することが可能となり、同年末のウクライナ大統領選挙支援等で実績を上げた。また、2005年度予算においては、外務省が所管する平和・安全保障基金が新設された。地雷処理やDDR(元兵士の動員解除・武装解除・社会復帰)プログラムにおいても実績を有する。
 2003年のカナダの援助実績は、20億3100万米ドル、対GNI比0.26%である(DAC統計ベース)。援助予算は、1993年以来の行政改革の一環として1990年度を通じて削減傾向が続き、ODAの対GNI比は、1990年代初頭の0.5%から2001年には0.22%まで落ち込んだ。しかしながら、2002年3月に開催された開発資金国際会議において、カナダの国際支援について毎年少なくとも8%増額し、2010年までに倍増するとの方針を表明するとともに、2005年度予算において、2008年までにアフリカ支援を倍増することが表明された。現マーティン政権は、GNI比0.7%目標への期限設定には反対しているものの、予算ベースではコミットメントに従ってここ数年着実に増加しており、2005年度の予算においては、36.4億カナダドル(前年比12.3%増)が確保されている。
 2003年度の国際開発庁(CIDA)の実績の内訳(出所:CIDA業績報告)によると、二国間援助が49.3%、国際機関を通じた援助が38.1%、NGO支援(パートナーシップ局)12.6%となっており、分野別では、[1]社会開発(43.8%)、[2]経済的福祉(32.9%)、[3]良い統治(15.4%)、[4]環境(7.9%)の順となっている。
 なお、援助形態別では、一部国際金融機関向けプロジェクトを除き全額無償(資金協力及び技術協力)である。有償資金協力は1986年以降実施していないが、債務救済問題に関しては、最貧困国の債務全額削減等において債権国の中でも積極的な姿勢をとっている。

(2)実施体制
 カナダの政府開発援助は、国際協力大臣の管轄下にあるCIDAが中心となって実施されており、ODA予算全体の約4分の3が計上されている。その他、財務省は世銀グループを管轄するとともに、債務救済政策を主導している。外務省は、平和・安全保障基金やローカルイニシアチブ基金(在外公館を通じた小規模援助)等を主管している。また、カナダ国際開発研究センター(IDRC:主に途上国における調査研究活動の支援)は特別法に基づき設置されている民間研究機関であるが、ODA予算の約3%が直接計上されている。ODA予算全体について議会に対する責任はCIDAが負っている。援助政策の立案や支援実施の決定は、国際開発庁が外務省をはじめ関係省庁と協議しつつ行っているが、復興支援や平和構築支援における重要な政策立案においては外務省がより強く関与している。なお、カナダの対外援助の実施においてはNGOの役割が大きいことが注目される。

(1)ODA上位10か国

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(2)地域別割合の推移(外務省分類)

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(3)分野別割合の推移

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