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(6)ODA以外の公的資金(OOF)及び民間部門との連携

 世界全体の開発途上国への資金の流れを見ると、2003年にはODAが全資金流入量の25.4%(DAC統計:暫定値)を占めているのに対し、OOFや民間資金といったODA以外の資金は全体の4分の3を占めています。このような資金の流れからもわかるように、開発のためには、ODAとともにODA以外の公的資金、民間資金との連携が重要です。特に、世界銀行により今後5年間で1兆ドルを超える資金需要を見込まれている東アジア地域をはじめとするインフラ整備・維持管理に必要な膨大な資金需要に対しては、開発途上国政府の財政資金や援助国からの公的資金だけでは十分対応できず、民間資金など適切な役割分担のもとで官民協力によるインフラ整備を促進していくことが一層求められています。実際に、経済社会インフラの整備に関しては、最近では開発途上国でも民間部門の資金・技術やイニシアティブを活用したインフラ整備の取組もなされてきています。
 しかしながら、民間企業の開発途上国における事業展開には外貨交換や送金に対する規制があったり、法制度変更、戦争・内乱・政治不安定などといったリスクが伴ったりします。そのため、開発途上国で事業展開するにあたっては民間金融機関による融資を受けにくく、積極的な事業展開を図りにくい面があります。このような困難を取り除くために、JBICNEXIADBのような公的機関は、保険を引き受けたり、民間金融機関と協調しつつ巨額の協調融資を行い、日本企業の開発途上国への事業展開を支援しています。
 また、OOFの活用は、日本企業の海外事業展開を支援するとともに、融資の受入国では経済成長のためのインフラの整備が行われるという利点もあります。特にBOT(Build, Operate and Transfer-scheme)方式(注1)で実施されるプロジェクトは、プロジェクトの成果物が最終的に受入国のものとなるため、受入国のその後の経済発展につながるインフラ整備の一端を担い、民間資金の流入を促す役割を果たします。
 1991年に旧ソ連から独立したアゼルバイジャンにおけるアゼリ・チラグ・グナシリ油田開発が日本企業の参画のもと、同油田で生産される原油輸送に必要なパイプラインの建設も含めてBOT方式による融資により開発が進められています。さらに、日本は円借款により、油田開発にともない産出される天然ガスを利用して環境負荷の少ない発電が可能となる最新のガス火力発電施設の建設を支援しています。
 また、インドネシアにおいては、経済発展に伴う将来の電力需給逼迫に対応するため、公的資金を活用した電力インフラ開発に加え、民間資金の導入による電源開発を促進し、包括的な電力セクター改革に乗り出しています。日本は同国に対して、電力セクター改革支援と各種金融ツールを活用した電源開発支援といったソフトとハードの両面にわたる包括的な支援を行っています。具体的には、世界銀行、ADBと連携し、電力セクター改革に対する包括的な提言を行うとともに、他国の公的輸出信用機関などと協調して、民間部門による発電プロジェクトの形成において主導的な役割を果たしています。また、日本は「アジア電力タスクフォース」において、民間資金によるインフラ整備の推進、公的資金との連携について、インドネシアの電力セクターを中心としてより具体的な検討を行いました。

アゼリ・チラグ・グナシリ油田開発において日本が支援しているゼヴェルナヤ・ガス火力複合発電所(写真提供:JBIC)
アゼリ・チラグ・グナシリ油田開発において日本が支援しているゼヴェルナヤ・ガス火力複合発電所(写真提供:JBIC)

 開発途上国の経済成長を支援する観点から、開発ニーズに応じ多様な資金調達が確保されることは極めて重要です。ODAとOOF、貿易保険などの公的資金供与、及び国際開発金融機関との連携・相互補完による資金供与はこのような観点から今後とも進められる必要があり、日本としても取組を進めていきます。
 また、ODAにおける民間部門との連携を強化する動きも進められています。JICAでは、開発途上国で実施している技術協力プロジェクトに対し、民間の活力、創意、ノウハウをより一層生かせるように「提案型技術協力プロジェクト」(注2)を実施しています。2004年度は、インドネシアの「小地域統計情報システム開発プロジェクト」、バングラデシュの「持続的砒素汚染対策プロジェクト」などを民間部門と契約し、現在プロジェクトの実施に向け調整中です。この他、民間団体に事業を委託する「業務実施契約に基づく技術協力プロジェクト」においては、新規に22件を契約して、民間の活力を積極的に活用しています。
 JBICは、円借款事業への国民参加を促進するとともに、開発途上国で多様化する支援ニーズをきめ細かく捉えるため、2001年度より提案型、発掘型案件形成調査を導入しています。提案型は、日本国内の団体などからの提案に基づき、円借款事業に役立つ知見や情報の蓄積を図るものです。これに対し発掘型は、同じく提案に基づき、将来の具体的な案件を発掘・形成することが目的です。2004年度には、提案型についてはスリランカの「適正技術を用いたプランテーション労働者の生活環境改善計画」などで6件、発掘型についてはモロッコの「カサブランカ廃棄物管理改善事業」などで9件実施しました。


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