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巻 頭 言

 日本は、戦後復興の時代に海外から支援を受けつつ、今日の経済発展の基礎を自らの力で築きあげました。このような経験も踏まえ、日本は、飢餓や貧困など様々な困難にあえぎながらも、自力で立ち上がろうとしている国々に、半世紀以上の間、政府開発援助(ODA)を行ってきました。

 ODAは、開発途上国の経済・社会の発展を促すことにより、国際社会全体の安定にも寄与するものであり、国際貿易の恩恵を享受し、資源・エネルギー、食料などを海外に大きく依存する日本自身の利益とも深く結びついています。また、国境を越えて深刻な影響を及ぼす開発途上国における環境、HIV/エイズやSARSなどの感染症の拡大、紛争やテロなどの問題については、ODAも活用してその解決に努めることが、日本自身にとっても重要な意義があります。平和を希求する日本にとって、ODAを通じて開発途上国の発展に積極的に取り組み、その姿勢を内外に示していくことは、国際社会の共感と信頼を得られる最もふさわしい政策です。

 このような理念のもと、日本は、1990年から2004年までの累計額で、世界全体のODAの約5分の1を担う世界最大級のODA供与国として、開発途上国の経済社会開発に貢献してきました。

 しかし、現在でも、世界で約11億人以上の人々が貧困に苦しむなど、依然として課題は山積しています。こうした状況を踏まえ、国際社会では、開発途上国の開発問題について、2015年までに達成すべき具体的な数値目標を掲げたミレニアム開発目標(MDGs)の実現に向けて取組を強化しています。本年9月の国連首脳会合では、MDGsの達成に向けて全世界が更なる努力を行うことを確認しました。

 日本としても、MDGs達成に積極的に貢献していく考えです。この観点から、日本にふさわしい十分な水準のODAを確保するため、ODA事業量の戦略的拡充を図り、今後5年間のODA事業量について100億ドルの積み増しを目指します。また、MDGs達成に最も遠いと言われるアフリカに対するODAを今後3年間で倍増する方針です。同時に、ODAの質を高めていくことが不可欠であり、援助実施体制の強化や国民参加の拡大、評価の充実などを促進しながら、日本のODAがより良いものとなるよう一層尽力していく考えです。

 今年のODA白書ではMDGsを特集として取り上げ、目標達成に向けた日本の考え方や取組について記述しています。また、2004年度のODAについて、援助政策の新たな展開などを概括的に報告しています。本書を通じ、日本のODAに対する国民の皆様方のご理解が更に深まり、一層のご支持を賜ることができれば幸いです。

 2005年10月

外務大臣


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